日産スカイライン200GT-t Type SP
バランスはいいけど!
新型スカイラインはデビュー時にVol.150「日産スカイライン350GT Type SP」
を取り上げましたが、今回は追加された2リッター4気筒のターボモデルです。
メルセデスエンジンという事と、非ハイブリッド&非ステアリング・バイ・ワイヤ(DAS)の走りがどれだけナチュラルなのかが気になるところです。
グレードは下から「200GT-t」「200GT-t Type P」「200GT-t Type SP」の3種類。いずれもFRで、4WDの設定はありません。
それでは乗ってみましょう!
スタイル★★★☆
今やサーフライン(死語?)はもちろん、丸形テールランプさえもないスカイラインですが、そのプロポーションは僅かに名残を残します。
真横から見ると一連のBMWにも似たプロポーションであることが分かります。
Cピラーの付けなども先代のアイコンを引き継いでいますね。
長いボンネットに、後ろ寄りのキャビンはストレート6を搭載していた時代のオマージュでしょうか。
先代よりも幅広く低くなったボディはスポーティーです。
サイドの抑揚もエモーショナルです。
デザインテイスト自体はレクサスのような新鮮さはありませんがそれなりにまとまっています。
顔もエンブレムを除けばライトの鮫っぽい釣り上がりなど、正に男性的でスカイラインを感じさせる部分です。
慣れれば、誰もがスカイラインと認めてくれるのではないでしょうか?
内装★★★
何ともオヤジ臭いデザインですね。
今回は基本インフィニティブランドですから流石に質感はかなり高まっています。
まあ高いのですから当然ですね。
しかしデザイン自体は古臭く平凡でがっかりです。
特にシートなどはどこにでも転がっているようなデザインでがっかりです。
これだけの内容を誇るスポーツセダンなのだからもっとサポートのいいバケットタイプのものを与えても良かったと思います。
あまりにセダンぽくて気分が萎えてしまいます。
しかし、いいのはポジションですね。
低くスポーティーです。
ステアリングの角度やペダルレイアウトもスポーツドライブを基本に作っている感じです。囲まれ感の強いタイトなダッシュボードも気分を盛り上げます。
そうした部分はしっかりとスポーツセダンになっているだけにデザインが残念です。
エンジン・ミッション★★★★
久々の4気筒ターボですね。
私、昔NAですが、4気筒のRSに乗っていたので懐かしいです。
まあRSは実にラフなユニットでこれほどのパワーもスムーズさもありませんでしたが。
スペックは基本的には「メルセデスベンツEクラス」や「Cクラス」に搭載されているものと共通で、211psの最高出力と35.7kgmの最大トルクを発生するタイプです。
ミッションもメルセデスの7段ATと組み合わされます。
アイドリング時の音の大きさやアイドリングストップからエンジンが再始動する際の“揺れ“がやや大きいことはやはり国産との違いですね。
直噴ポンプの圧力の高さに起因するそうです。
その代わりというかパワーは十分です。
ドライバビリティにも優れます。
回すとかなり低音のスポーティーな音を伴って加速するのはEクラスでは感じなかったのでアレンジでしょう。
アクセルレスポンスもスカイライン独自のアレンジが施されています。
メルセデス流の溜は無くレスポンス重視です。
スムーズでマナーのいいユニットです。インフィニティブランドの名に恥じません。
ただそれだけに、面白さに欠ける部分はあります。システム出力364psを誇るハイブリッドのような圧倒的なパワーやモーターの疾走感などの楽しみが無いのはハイブリッドを知る者には寂しいかもしれません。
足回り★★★★
ハイブリッド車に標準装備されるステアリング・バイ・ワイヤ機構はこちらには採用されていません。
ナチュラルという人もいますが、私には少しレシオがスローに感じました。
足の出来が恐ろしくイイだけに、そのポテンシャルが生かし切れていないというか、ダブルレーンチェンジなどでは切り遅れてしまうのではないかと思いました。
またせっかくの4気筒のノーズの軽さが感覚的に伝わってこないのも残念です。
むしろハイブリッドモデルの方がスイスイ走れるというのはどうしたものでしょう?
乗り心地はいいですね。
重厚でセダンならではのボディの剛性感もビシバシと感じます。
これは高級な乗り味になっています。
芯のある走りは大したものです。
しかしハイブリッドと比べると、エンジンもですが、ここでも(DAS)という飛び道具を失い、正直物足りなさを覚えます。
ナチュラルに昇華出来切れていないもどかしさを感じます。
総評★★★★
「GT-t」というどこかなつかしいモデル名で復活した4気筒モデルのスカイラインですが、それだけにもっと軽快なステアフィールを与えて欲しかったです。
サイズ感からしてちょっと重厚に過ぎるというか、これだったらメルセデスの方がいいなあとなってしまいます。
ハイブリッドと差別化するためにもっとシュアなステアリングとソリッドなシャーシセットで楽しませて欲しかったというのが本音ですが、下手にインフィニティブランドを背負ってしまい、昔の「GT-t」の軽快感が出せなかったのでしょう。
高級との狭間でバランスポイントを見つけ出そうとしている感じが、もどかしさの正体かもしれません。
【スペック】ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4800×1820×1450mm/ホイールベース:2850mm/車重:1680kg/駆動方式:FR/エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ/トランスミッション:7AT
/エンジン最高出力:211ps(155kW)/5500rpmエンジン最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1250-3500rpm/タイヤ:(前)245/40RF19 94W/(後)245/40RF19 94W(ダンロップSPスポーツマックス050 DSST CTT)燃費:13.0km/リッター(JC08モード)/価格:456万8400円