M3のミッションが、SMGから「M DCTドライブロジック」になったので乗ってみました。
ある程度予想はしていましたが、それは恐るべきトランスミッションでした。
●概要
3がE46からE90となったのが2005年4月、そしてこのE92 M3クーペが日本に来たのが2007年9月。
エンジンが直6からV8となったことがもっとも大きな変更点でした。
セダンは2008年3月、M DCTドライブロジックが追加されたのは、2008年6月です。
ちなみに本国にあるM3カブリオレは日本にはまだ正式輸入されていません。
スタイル★★★
セダンの場合、サイドから見ると大径のタイヤ&ホイール以外はノーマルと変わらず、リア周りのボリュームに欠けることが残念です。
ハイパフォーマンスカーに期待するリアの圧倒的なボリュームと安定感に欠けると思います。
その点、カーボンルーフをもつクーペは、流石にカッコ良くまとまっています。
ピラーレスなのも乗り降りがしやすく、剛性も十分なので買うならクーペを選びます。
内装★★★
ショールームにあった赤のボディにタンの内装は、ちょっとオヤジくさいコンビですね。ダッシュのウッドも興ざめです。
最低でもブラック系のカラーに、オプションのアルミニウム・シャドー・トリム(6万7000円)は欲しいところです。
デザインの自体もはや面白みもありませんが、ノーマルとのディテールの違いから質感は少し高く感じます。
流石にドライバーズシートのフィット感は絶妙です。
エンジン★★★★★
8300回転で420psを発するV8、4リッターエンジンは流石にパワフルで、ハイチューンエンジン特有のレーシーなサウンドとともにドライバーを楽しませます。
高回転エンジンでありながら下からのトルクも十分で、フラットトルクな性格は、清水和夫氏いわく、「盛り上がりに欠ける駄目エンジン」らしいですが、オヤジにはまったくもって十分です。
M3のエンジンは、もう一人の清水さん(草一氏)いわく、「馴らしが終わるとガラリと良くなる」らしいですから、オヤジが乗った個体はすでにアタリが付いていたのかもしれません。
とにかくどこからでも地響きのような迫力ある低音のサウンド(ランボ系)とともに、瞬時に炸裂する推進力は力感漲る活火山を抱えているようです。
そして、その完璧にソリッドなシャーシとドライブトレインはダイレクトにパワーを路面に伝えます。
トピックのDCTは、VWやアウディ、GT-R、ランエボなどと同様ツインクラッチなので、まったくタイムラグがありません。トルコンではなくマニュアルが基本であることはこれまでのMSGと変わりませんが、1・3・5・7速を受けもつクラッチと、2・4・6速用のふたつのクラッチをもち、互いにスタンバイし瞬時に切り替えるのでSMGのようにパワーをカットする瞬間がありません。シフトダウンでは中ぶかしを入れますが、フル加速時は確実にマニュアルよりもスムーズで早いシフトアップが可能です。
DCTは後出しだけにその洗練性がずば抜けているのです。
ATモードにしておけば良く出来たトルコンそのもののスムーズな変速に終始し、特に初期のGT-Rのように音を立てたりギクシャクすることもありません。シフトのレスポンスを調整することも出来ますが、短い試乗ではその必要を感じませんでした。
足回り★★★★★
これまた最高です。
数日前に135に乗っていましたが、このM3の方が遥かに快適です。
飛ばせば飛ばすほどフラットさが増し、その差は広がります。1シリーズは終始上下に揺すられますが、M3は全てのショックが瞬時に収束し、高級なダンパーと強靭なシャーシが織り成す高級な乗り心地を体感できます。
M5の重厚さとも違う、この軽やかな中に強靭さを感じる乗り心地は、R8などアルミボディの一部高級スポーツのみが表現できるほどのレベルです。
そしてハンドリングと安定性も文句なしです。
ロールは十分にチェックされ、ブレーキも最高です。
とにかく並のチューニングカーではなく、良く出来たレーシングカーに、ロードカーとしても最高のマナーを与えたかのようなクルマです。
総合評価★★★★★
やっぱりこういうクルマに乗ると、クルマの最大の楽しみはスポーツドライブにあると再認識させられます。
クルマは「見ても・乗っても・語っても」楽しいものだと思いますが、高級でソリッドなシャーシに身を包み、高度に調律されたV8エンジンの咆哮を聞いていると、全てのロジックは吹き飛び、ただただ快感に身を委ねることになります。
なんてインプだとフェラーリみたいですが、このM3はフェラーリよりも遥かに安心してしかも日常の多くの領域で楽しめてしまいます。
エコだの不況だの、何かとこうした高性能車に乗るにはエクスキューズが必要な世の中ですが、ある経済学者は「不況は一人一人の中にある」といいます。
つまり一人一人の負のマインドが不況を招くと。ならばこんな弾けたクルマにに乗って、元気と勇気を貰うというのもアリではないでしょうか!