日本でラインナップされるのは2種類です。
4気筒の2リッターターボ(245ps、35.7kgm)搭載の428iクーペと、同じくターボ過給の3リッター直列6気筒(306ps、40.8kgm)を積む435iクーペです。
今回試乗したのはベーシックモデルたる428iクーペです。
それでも排気音からして3とは違う演出がされています。
4気筒ゆえに快音はありませんが力強さはあります。
音質は近年のBMW4気筒に共通するというかバリバリと少し直噴を感じさせる硬質なものですが、そのスムーズさと常に十分なトルク感によってなかなかスポーティーに感じます。
BMW自慢の8ATは今回も見事な仕事をします。
ノーマルモードではエレガントでシームレスな加速を見せるかと思えば、スポーツモードではシフトスピードは一段と速くなり、常に獲物を待ち受けるかのようなスタンバイ体制に入ります。
少しでもアクセルを開けるととても2リッターとは思えないような分厚いトルクであっという間に望むスピードへ加速してゆきます。
官能性と高速時の余裕を求めなければこちらでも十分に楽しめます。
街中でも時に使い切る楽しさもあってかなり楽しめました。
セダンの3とは明らかに味付けの違うスポーティーなエンジンに仕立ててあります。
足回り★★★★☆
セダン比25mm幅広く、65mm低いというワイド&ローのコンストラクションは4のハンドリングと乗り心地に間違いなく高い妥協点を与えます。
ここがこのクルマのハイライトですね。
コンフォートモードの乗り心地は十分にソフトでもっと締まってもいいと思うほどです。
最初はちょっとゆるいかなと感じましたが、それでもトレッドが広く重心も低いおかげで無駄な揺れはありません。
スポーツモードにすると俄然本領を発揮します。
エンジン回転がヴォンと上がり、レスポンスが鋭くなるとともに乗り心地もビシッと締まります。
ステアリングも重くなフィールを増します。このステアリングの剛性感も3との違いですね。
こうなるともう何があっても怖くありません。
どんなコーナーでも自信をもってクリアできます。
BMWの伝統通り重量バランスも完璧ですからタイトなコーナーでも無粋なアンダーとは無縁です。
一方高速コーナーでは綺麗なラインを描きステアリングとアクセルコントロールでリアのスリップアングルも自在です。
総評★★★★
思えば日本でのクーペ市場が絶えてから久しいです。
プレリュードやソアラ、シルビアといったクルマはミニバンや軽、ハイブリッドにすべて食い尽くされました。
難解でそれを発揮する場所の無い日本では、残念ですが数字で分かりやすい燃費や広さにしか目がいかなくなってしまったのです。
4シリーズはそんなシロモノの対極にあるクルマです。
カタログではセダン比、狭くて30万ほど高いだけのクルマです。
4の価値はその走りです。
低い重心による気持ちのいいハンドリングと揺れの少ない快適な乗り心地。
同じコーナーをミニバンの3割増しのスピードで抜けてもドライバーはもちろん乗員の疲労も少ないはずです。
残念ながら今の日本ではそのことに価値を見出す人はほんの一握りになってしまいました。
BMWの4シリーズはそんな走りの質にこだわる人のクルマであり目に見えない中身で語られるべきクルマです。
走りの質にこだわる贅沢な大人のクーペです。
【スペック】ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4640×1825×1375mm/ホイールベース:2810mm/車重:1570kg/駆動方式:FR/エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ/トランスミッション:8段AT/最高出力:245ps(180kW)/5000rpm/最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1250-4800rpm/タイヤ:(前)225/40R19 89Y/(後)255/35R1992Y(ブリヂストン・ポテンザS001 RFT<ランフラットタイヤ>)/燃費:15.2km/リッター(JC08モード)/価格:644万円