燃費は良くなったけど
5月14日に発表されたばかりの「Eクラス」です。この4代目W212がデビューしたのは2009年のデトロイトです。
スケジュール通りのマイナーですが、Eはベンツの中でも主力車種ですからかなり力が入っています。
新しい内外装デザインはもちろん、エンジンも高効率のパワートレインに変更されています。
また安全装備なども次期Sクラスに先駆けて最新の装備をすべて投入してきました。
その変更点は約2000カ以上という力の入ったものです。
スタイル★★★
ここは賛否両論ですね。
デビュー時もそのごちゃごちゃしたフロントライトの処理に異論はありましたが、こうして後からすっきりされるとこれも違和感があります。
つまり、もともとの直線基調のフォルムに、この丸くなったフロントまわりがうまく溶け込んでいないのです。
かなり小さく見えるので正面からだとCクラスかと思うほどです。
ライトは全モデルでフルLEDを採用したヘッドランプユニットを採用するとともに、「Cクラス」と同様に、ボンネット先端のスリーポインテッドスターを廃止しフロントグリル中央に大きなエンブレムを配置するデザインとなりました。
リアもシンプルになりました。特徴だった“ポントン”フェンダーも消えシェイプされた印象でこちらも小さく見えるようになりました。
つまりゴージャスな路線からスポーティーな路線への変更ということでしょう。
内装★★★★
こちらは正常進化というかはっきりと質感は高くなっています。
この進化を見ると先代はまだしもW211の人は本当に可愛そうです。
センターに四角いアナログ時計が付けられたのがポイントです。
試乗車はスリーポインテッドスター・マークでしたが、AMGなど上級グレードになるとIWCの時計になります。
またステアリングもニューデザインです。
基本3本スポークのスポーティーなものが標準となっています。
このあたりも外観同様にスポーツ路線ということでしょう。
ただ、試乗車がアバンギャルドだった事もありますがウッドは相変わらずブラックのちょっとやんちゃな感じのものです。
これをGLとかの艶消しのタイプにするだけでも随分上品な印象になるのではないでしょうか?
まあアバンギャルドというグレードのネーミングもどうかと思いますが・・。
なんだか安物のキャバクラかクラブのように感じるのは私だけでしょうか?
リアシートのスペースはかなり広いですね。シートの角度や前方視界も文句ありません。
トランクの容量もセダンでも十分です。
エンジン★★★★
ココはちょっと種類が多いので簡単に整理します。
下から新しい2リッター直4ターボエンジンを積む「E250」、チューニングの異なる2種類の3.5リッターV6エンジンを積む「E300」と「E350」、今回試乗したのがこの「E350」です。
その上が4.7リッターV8エンジンを積む「E550」(4.7なのにターボ付きなので550となります)ややこしいですね。
それに3リッターV6ターボディーゼルエンジンを積む「E350ブルーテック」。
また、セダンに限って、E350のエンジンに電気モーターとリチウムイオンバッテリーを組み合わせた「E400ハイブリッド」もあります。
あとはAMG(V8、5.5リッターDOHC32バルブターボ(585ps/5500rpm、81.6kgm/1750-5000rpm「S」)なんかもありますね。
この中で注目すべきはE250でしょう。
従来の1.8リッターに代えて2リッターのターボを採用し、最適な燃焼制御を行う成層燃焼リーンバーンとターボチャージャー、EGR(排ガス再循環装置)などを組み合わせ、最高出力211ps、最大トルク35.7kgmを誇り、
燃費も約23%向上させています(JC08モード15.5km/リッター)。
このエンジンは市販ユニットとしては世界で初めて成層燃焼リーンバーン+高圧EGRの組み合わせに成功し、熱効率に関してはディーゼルのそれに遜色ないほどです。
複雑な制御を必要とするこの組み合わせの狙いはCO2排出量の低減です。
実際このエンジンは135g/kmという驚異的な数値を実現しています。
このエンジンを可能とした技術的な背景は200気圧のガソリンコモンレールとスプレーガイデッドピエゾインジェクターです。
これらはディーゼルから派生した技術ですね。
リーンバーンを上手く燃やす為にコモンレールで高圧の直噴とし1サイクルあたり3回の噴射をする超絶制御のピエゾインジェクターが最小の燃料を吹き込みます。
また成層燃焼とは簡単に言えばピストン下死点付近ではガソリンの無い領域を作り、上死点の濃い混合気の所へ点火する方式ですが、これもこれまでは難しかったのですね。
このエンジンはマツダのスカイアクティブを超えるエンジンだと思います。
このエンジンをAクラスなど軽く空気抵抗のいいボディに積めば高速燃費でプリウスを上回ると思います。
ディーゼルのE350ブルーテックも触れなくてはいけません。
こちらは従来比41ps、8.1kgmパワーアップを果たしたほか、唯一、未装備だったアイドリングストップ機能も付きました。
またEクラスとして初のハイブリッドモデルとなるE400ハイブリッドもあります。
これは出力27ps、トルク25.5kgmのモーターがNAの3.5リッターV6エンジンをアシストします。
今回試乗したガソリンのE350以上のパワーを誇りながら、JC08モード燃費15.2km/リッターを実現しています。
やっと試乗車のE350に辿り着きました。
流石にEクラスは主力車種だけに多くのエンジンをラインナップしますね。
しかも、そのほとんどを入れてくるとはインポーターの気合もかなりのものです。
評論家の清水和夫さんなどは「Eクラスはエンジンの総合デパート」なんて書いているほどです。
E350のスペックは3リッターV6(306ps/6500rpm、37.7kgm/3500-5250rpm)です。
同じ3リッターでもチューンの違いでE300(252ps/6500rpm、34.7gm/4500rpm)とE350に分かれます。
ミッションはお馴染みの7Gトロニックです。
まあ、このパワートレインほぼ文句が無いのですね。
高回転まで綺麗に回りますしフラットなトルク特性やトルクの付き、そしてミッションのマナーも文句無しです。
アイドルストップの振動も少なくなりましたし、直噴特有の硬質なノイズもマイナー前と比べると随分静かになりました。
問題は価格ですね。技術的に面白く燃費のいいE250が655万、E300でも720万円と聞くとこの872万は高く感じますね。
確かにE250はレスポンスや高回転伸びや音など少しディーゼル的な感じもありますが、このE350が特別スポーティーなフィールを持っているわけでもありません。
ちょっと中途半端な感じですね。
足回り★★★
ココもちょっと技術的なスペックのご紹介から始めなければなりません。
なぜなら次期Sクラスに予定されている安全運転支援システムがほぼ全て前倒しでこのEクラスに採用されているからです。
「レーダーセーフティパッケージ」は、従来の短距離/中長距離ミリ波レーダーに、ステレオカメラと後方用ミリ波レーダーが追加されています。
渋滞時を含む全車速追従の車間維持機能「ディストロニック・プラス」に、カメラを使った車線維持機能も加わりました。
カメラが白線などを認識している間は、ステアリングホイールから手を離しても10秒間、車線を維持します。また「ブレーキ・アシスト・プラス」に飛び出し検知機能「PRE-SAFEブレーキ」が付き、前方を横切るクルマや歩行者の飛び出しにも対応。
クルマや歩行者に接近すると音とディスプレイで警告するほか、段階的に自動ブレーキを作動させます。
このほか、停止中に後方から車両の接近を検知すると、自車のリアコンビランプを点滅させるとともにブレーキ圧を高め、最終的には自動的にブレーキがかかって車両をロックすることで、二次被害を軽減する機能「PRE-SAFEプラス」も付きました。
レーダー型衝突警告システムの「CPA」は全車に標準装備。
前方衝突の危険を察知するとドライバーに警告を与え、ブレーキアシストを起動させて速やかな減速を助ける。
とにかくEクラスの安全システムは現在世界一です。
乗り心地はマイナー以前とそれほど進化しているとは感じませんでした。
むしろ変わったのがステアリングですね。油圧から燃費用件もあって電動になったのですが、これがイマイチフィールを伝えません。
しかもメルセデス特有の直進性というかどっしり感が出ていません。
確かにいざとなったらキープレーンアシストが働きますが、それとこれとは別です。この部分は熟成を待たなければならない部分です。
総評★★★☆
今回はし乗車の都合でグレードの選択が中途半端だったことが残念です。
出来ればE250かE350のブルーテック(ディーゼル)で試したかったですね。
そうすればEクラスの本質である最上の実用車という部分がもっと明確に見えてきたのだと思います。
メルセデスはライナップの豊富なブランドです。
スポーティーに乗るならEでなくてもCLSやEでも後に追加されるであろうクーペの方が足とのバランスもいいと思います。
特にE250については近々試乗してレポートしたいと思います。
【スペック】E350アバンギャルド:全長×全幅×全高=4879×1854×1474mm/ホイールベース=2874mm/車重=1800kg/駆動方式=FR/3リッターV6(306ps/6500rpm、37.7kgm/3500-5250rpm)/燃費=JC08モード12.4km/リッター/価格872万円
(※この記事は2013年6月に書いたものです。有料版の記事の一部を加筆訂正し約1年遅れで配信しています。)