乗り心地の魔術師
今年の「欧州カー・オブ・ザ・イヤー」の受賞車ですね。
本国では2013年9月のフランクフルトモーターショーでデビューしていますが日本へは最近入ってきたばかりのニューカマーです。
ブランニューのフルモデルチェンジなのですが、308で固定されていますね。
これまでモデルチェンジの度に数字をひとつずつ増やしてきたプジョーですが、309は昔あったので、今後は末尾の数字“8”に固定
するそうです。
つまりコレは「308パート2?」ということです。
スタイル★★★☆
顔はゴルフ・コンプレックスとも言われていますが、208や508とも通じる鼻べちゃ顔は新しいプジョーの顔でもあります。
従来異様に長いフロントのオーバーハングが特徴でしたが、おかげで今回は全長で60mmほど短くなりました。
同時に全幅も15mmほどスリム化されています。
208もですが、どんどん肥大化するドイツ勢に対する提案としては素晴らしいです。
しかも重量も先代モデル比でマイナス140kgも軽量化されています。
これはエンジンの3気筒化をはじめ、ボディではボンネットやフロントフェンダーにアルミ材を使い、リアのテールゲートには合成材料を使用する事などにより達成されています。
クロムメッキで縁取られたグリルや片側あたり、計31個ものLEDヘッドランプを使った顔はなかなかの質感です。
これでだいぶ端正な顔立ちに見えます。
プジョーは自ら「猫のようなデザイン」と称していますが、まああまり愛嬌のある猫では無いですね。
ちなみにワゴンモデルの「308SW」はハッチバックに比べ、全長で332mm、ホイールベースは110mm長くなっています。
内装★★★☆
グレードは下からプレミアム、アリュール、シエロの3種、いつもながら何でロアーグレードがプレムアムなのかは戸惑うところですが、今回試乗したのは最上級モデルのシエロです。
ダッシュは208で始めた「ヘッドアップインパネ」です。
視認性はともかくこの小径のステアリング(だ円形で、351×329mm)は少しドライビングに影響します。
どうしても過敏になりますのでその辺りは足回りの稿で書きますが、慣れるまでは違和感があります。
メーターは小径でユニークなのはタコメーターの指針がアストンのように反時計方向に回ることです。
特に機能的な裏付けはなくこれもギミックの域を出ないと思います。
メーターの照明はスポーツモードにすると白から赤に変化します。
これは分かりやすくて面白いですね。
パーキングブレーキは電動式で自動リリース機能が付いています。
少し残念なのはシートです。
標準からすると確かにいいですが、プジョーに期待するプラスアルファは感じられませんでした。
シエロの表皮は、本革とのコンビタイプですが、ソフトな感触はあまりなくドイツ車ばりにシッカリとサポートするタイプです。このあたりもプジョーが国際的になった証でしょう。
一方いいいのはシエロに標準のパノラミックガラスルーフです。
これは車内を明るくします。
フランス車らしい装備ですね。電動開閉式のブラインドが備わります。
エンジン★★★★☆
エンジンはターボ付きの1.2リッター直3エンジンです。
同等の自然吸気4気筒に比べ、燃費は15~20%有利で、重量は12kg軽くなるといいます。
このエンジンはいいですね!ノーマルでは静かでスムーズです。
特に3気筒のデメリットを感じません。
またスポーツモードにすると先のメーターは赤く変わり、車内にはサウンドジェネレーターによって作られた音ではありますが、なかなか楽しいサウンドが広がります。こうした演出もあってかなり活発に感じます。
1.2リッターという事が信じられないぐらいにパワフルです。
回転感も3気筒らしいビートを伴って活発に回ります。
ATはトルコン6速です。スムーズで良く出来た感触のいいパドルも全車に標準で付きます。
そしてキックダウンの制御が上手く、1.2リッターの割にはほとんどの場面で無駄にシフトダウンする事なく、つまりショックな
く加速します。
これは低速トルクの豊かなエンジン特性にもよりますが、非常に快適でもっと大きなキャパのエンジンを積んでいるかのような走りです。
足回り★★★★
足もいいですね。
208でも感じましたが508以降のプジョーは確かに質感がワンランク上がっています。
下の2グレードと違ってタイヤはワンサイズアップの18インチになりますがそれでも乗り心地に不満はありません。
全ての当たりは角が丸められ、コーナーでは腰があります。
プジョーライドは健在です。
テスト車は、かなりスポーティーな「ミシュラン・パイロットスポーツ3」でしたが硬さは感じませんでした。
ボディ剛性も軽量化によるデメリットは感じませんでした。
確かにゴルフのようにがっしりという感じではありませんが、バランスが取れていて欠点の見当たらないものです。
件のステアリングですが、足とギア比でバランスを取っていて走り出すとさほどナーバスな印象はありません。
ただ物理的には入力に対して大きく反応しますので、特に高速道路ではリラックスという意味では、大径の方が好みではあります。
最新のクルマらしいのは、レーダーを使ったクルーズコントロールや、自動ブレーキによる衝突被害軽減システムなどが標準であることです。
このあたりもすっかり国際化しています。
総評★★★★
確かに欧州カーオフザイヤーの称号に恥じぬ乗り味でした。
特に軽量ボディとエンジンはいいですね。
足は正直508、208を知るものには主に乗り心地において少し物足りないと感じました。
17インチモデルならまた違った印象だったかもしれません。
しかしこれも少し熟成させばいい味になるかもしれません。
1年後にもう一度乗ってみたいクルマです。
【スペック】ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4253×1804×1457mm/ホイールベース:2620mm/車重:1090kg/駆動方式:F/エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ/トランスミッション:6段MT/最高出力:130ps(96kW)/5500rpm/最大トルク:23.5kgm(230Nm)/1750rpm/タイヤ:(前)225/45R17/(後)225/45R17(ミシュラン・パイロットスポーツ3)/燃費:4.8リッター/100km(約20.8km/リッター、欧州複合モード)/価格:339万円