トヨタ マークX 250G
佐藤浩市がふられて泣いている娘とドライブするCMのやつですね。
つまり40代後半から50代位がターゲットということでしょう。
12年8月27日に約3年ぶりのマイナーを受けました。
顔とボディ剛性や足回りの見直し、静粛性の強化などが主なポイントですね。
このマークXはデビュー当時も乗りましたが、果たして今回のマイナーチェンジでどう変わったのでしょうか?
スタイル★★★☆
今回は“目力”がデザインコンセプトですね。
「LEDを点でなく蛍光灯のように連続して見えるように工夫した」という新しいヘッドライトはなかなか個性的です。
従来の3フロントマスクにはちょっと“ワル”入っていていましたが、今回からはシトロエンのDSシリーズとまではいきませんが、ちょいアバンギャルド風のマスクではあります。
プロポーションも基本的にワイドトレッド&ウェッジでスポーツセダンの定石通りです。
惜しいのはAピラーの付け根あたりのラインが煩雑でフェンダアーチやらキャラクターラインが交錯していることです。
ちょっとゴチャゴチャした感じで装飾過多に感じます。
ただ個性的なマスクのおかげで“マイナーしました”の印象は強いものがあります。
マイナー以前のX(ペケポン)の顔はちょっと否定的な意見が多かったのでフレッシュ感もあり良かったのではないでしょうか。
内装★★
一方、内装は変わり映えしません。
ダッシュの垂直の2本の柱はレンジローバーのパクリっぽいし、垂直のインパネは圧迫感があります。救いはインパネ上段の左右に走る凹面ですね。
ここで少しボリュームを削いだのは正解でしょう。
多少はすっきりとします。
まあ、ダッシュは先代の無駄なものを削ぎ落としたモードなタイプがユーザーに受け入れられなかった経験からか、従来のトラッド方向に戻っちゃった感じですね。
質感はこのクラスとしてはぎりぎり及第点といったところでしょうか。
例えばドアハンドルのステッチはダミーでプラスチックの成型だったり、ステアリングの革の質がドライバーズカーとしてはがっかりするほど滑りやすいものだったりするなど、もう少し頑張って欲しいなーと思うところがすぐに見つかります。
後席のヘッドクリアランスがぎりぎりなのもこのクラスのセダンとしては気になるところです。
エンジン★★
エンジンは2.5Lと3.5Lの2種ですが、今回試乗したのは売れ筋の2.5リッターV6、DOHC24バルブ(203ps/6400rpm、24.8kgm/4800rpm)です。
このエンジンは以前に試乗した時もそうでしたが、軽快に回りパワーもそこそこなのですが、V6としてはフィールがいまいちがさついているのが残念です。
今回のマイナーで静粛性を強化したとのことで確かにパーシャルでは静かなのですが、回すと「ザー」と安っぽい音が遠慮なく侵入してきます。
フィールは3.5Lの方がずっといいですね。こちらは318psと十分なパワーがあるだけでなく、回転の粒が詰まっていて、3500rpmからは控え目ながら「クォーン」という澄んだ音さえ発生してくれます。
まあ、90万も高くなるのですからそのぐらいのことはやってもらわないと困るのですが。
また今回は6ATのミッションがトヨタらしからぬショックを発生していたのが気になりました。
スタートが難しく少しラフに踏み込むとドンと出るような癖がありました。
スムーズさを信条とするトヨタ車としては解せない感じです。
マイナー以前にはなかった挙動なのでもしかするとラフに扱われた試乗車ゆえの個体差かもしれません。
足回り★★
エンジンの件と同様、解せないのが乗り心地です。
今回の仕様はシリーズで一番ソフトな筈ですが、トヨタ車とは思えないほど、細かなショックを伝えていました。
サス自体は柔らかいのに路面の継ぎ目でコツコツと鋭角的なショックが伝わります。
トヨタお得意の「カドまる」さえ出来ていないのです??これもマイナー前には感じられなかったことです。
Sパッケージだとモノチューブ式の電子制御ダンパー、専用スプリング、スタビライザー、ブッシュ等を組み合わせたAVS仕様となったり、PREMIUM系だと大小入力を効果的に吸収する新構造のFADショックアブソーバーが採用されたりするので、そちらを選べばまた違った印象になるのかもしれません。
しかし、マイナー前に乗った個体も素の250Gでこんな特性(コツコツ感)は感じられなかったので、もしかすると今回のマイナーでボディ剛性の強化のために35箇所増やしたというスポット増しがマッチング的に悪い方向に働いたのかもしれません。
一方ハンドリングのバランスはいいです。
3.5Lよりもノーズが軽く軽快に感じます。
コーナリング中の前後バランスもよくFRの楽しさを感じられる素直なハンドリングとなっています。
ただ問題はまたまたステアフィールです。
これだけで眠くなってしまいます。
この曖昧な感じはどうしてもトヨタのメインストリーマーとしては残さなくてはいけないのでしょうか。
サスの固くなるSパッケージか350Sに装備されるVGRS(可変ギアステアリング)ならばもう少しマシになるのかもしれませんが、この250GではせっかくのFRを活かせていません。
FRならではのトルクステアのない自然なステアフィールを味わいたいものです。
総評★★☆
“やり残したことをすべてやりきる”が今回のマイナーのテーマだったと聞きますが、その割には??という感じですね。
アイドリングストップ機構の採用もなくエコカー減税の対象者になるわけでもなく、欧州勢のように8ATやダウンサイジングターボなどの提案があるわけでもなく、顔以外に目新しさはありません。
静粛性やボディ剛性、空力(アンダーカウル等の採用で)の改良などによって煮詰めたという走りも、こと250Gに関してはほとんど効果が感じられません。
次期マークXはFF化されるという話も聞こえています。
最後のミドルクラスFRとして有終の美を飾って欲しかったものですが、どうにもスッキリとしない乗り味が残念な感じです。
【スペック】250G:全長×全幅×全高=4750×1795×1435mm/ホイールベース=2850mm/車重=1510kg/駆動方式=FR/2.5リッターV6DOHC24バルブ(203ps/6400rpm、24.8kgm/4800rpm)/価格=270万円
(※この記事は2012年9月に書いたものです。有料版の記事の一部を加筆訂正し約1年遅れで配信しています。)