完璧すぎる!
↑目元クッキリ!918スパイダー並みのカッコよさ!
オープンカーの季節到来という事で新型ボクスターに乗ってみました。
Vol.65で取り上げた911S(991型)があまりに素晴らしかったので、ある程度予想はしていたのですが、結論から言ってやはり素晴らしい出来でした。
難くせつけるのが得意技の私もスタイルなど好みの部分はさておき、ことハードの出来に関してはまったく隙がありません。
ボディはオープンにしてもミシリとも言いませんし、エンジンは激しく力強く回ります。
乗り心地は無駄な動きのない上質なもので、ハンドリングは正に理想的。全盛期のシューマッハのブロックのようです。
それでは、以下細かく見ていくことにしましょう。
スタイル★★★★☆
ここも随分格好良くなりましたね!これまでボクスターはポルシェらしい丸みのあるスタイルでしたがそれがちょっとスムーズすぎて力強さや質感に欠ける印象がありました。
新型は全長で3cm、ホイールベースは6cm延びています。
縦長のライト周りのエッジがはっきりとし、エアインテークが大型化されたことなどで随分アクレッシブで現代的な印象になりました。
ちょっとカレラGTや918スパイダーとの近似性も感じさせるなど、最新のポルシェのテイストをうまく取り入れています。
一方ボクスターの伝統を守ったのは、そのプロポーションとリアセクションです。
ホイールの存在感を引き立たせ、リアサイドエアインテークとともにミッドシップレイアウト主張するのが、ボリュームのあるショルダーラインです。
これは往年の軽量ミッドシップスポーツカー、718 RS 60スパイダーをイメージさせます。
また技術的には大きくなったボディにもかかわらず、35kgも軽くなったことも付け加えなくてはなりません。
ボディーシェルの46%をアルミにするなど、高性能にもつながる省燃費と軽量化はニューボクスターの大きなテーマの一つです。
ちなみにルーフは手動のロックもなくなりフルオート僅か9秒で開閉します。
内装★★★★
パナメーラから始まった一直線のセンターコンソールは、内装に於ける最新ポルシェのアイコンですね。
質感も911並みとは言いませんが、従来型よりもさらに高くなっていてポルシェの名に恥じないものになりました。
初代のプラスチックだらけの内装と比べると随分良くなったものです。
ミッドシップのボクスターはラゲッジが意外に使える事もこれまで通りです。
リアのラゲッジルーム容量は130リッター。
フロントにも150リッターの荷室が確保されていて特にフロントは深さもあり使いやすいものです。
星がひとつ足りないのはダッシュが平面的で包まれ感がなく、開放的なのですが、いわゆる“ポルシェを着る”というフィット感に乏しいことが要因です。
飛ばすと両サイドがもっと手のうちに欲しい感覚になります。
まあ、オプションのスポーツシートで改善できますし、オープンでのんびり走る時にはこの開放感もありがたいのですが。
エンジン★★★★☆
排気量が2.9リッターから2.7リッターにダウンしたにもかかわらず、直噴化によりパワーは10psアップしています(トルクは0.9kgmダウン)。
ちなみに試乗はしていませんがボクスターSの方は3.4リッター直噴のままで、5ps増しの340psになりました。
ミッションは7速のPDKと6速のMTです。911にある7速のMTは重量増を嫌ってあえて採用しなかったとのこと。
エンジンの印象は雑音が消え随分静かでスムーズになりました。
初代などはバルブとカムの叩く音がバリバリ、ガシャガシャと賑やかで、回すと気持ちのいい吸気音を掻き消す勢いで騒ぎ立てたものですが、今回は十分に快適で演出されたものとなっています。
望めばオプションのスポーツエグゾーストで音量も気分次第で変えることが出来ます。
回転感は完璧バランスのフラット6ですからまさにモーターの如きスムーズさなのですが、ポルシェの事ですからちゃんとそこにドラマがあります。
低速で“バラバラ”と言ってみせたかと思うと中速のパーシャルでは“フォーン”と美事な美声で咆哮を歌い、高回転では“シャーン”とマウントからボディから一体感を伴いソリッドでシャープな加速を見せます。
ミッションも相変わらず完璧ですね。パドルも使いやすいものに改められています。
星が半分足りないのは比べるのも酷ですが911の質感を知ってしまったからです。
足回り★★★★★
ここも悔しいぐらいに完璧です。
どうにか弱点を見つけようと幌を開け荒れた路面をハイスピードで走ってみたりしたのですが、ボディも内装もビクともしません。
とにかく乗り心地は従来型から2ステップぐらい飛び越えて良くなっています。
これは911もなのですが、アルミを多用したボディでこれほどいなしの効いた乗り心地はちょっと経験がありません。
アルミを使うどどうしても入力がきつくなってしまったりするものなのですが、ポルシェはバランスがうまくそれをフラット感やソリッドさの演出に使っている感があります。
無駄な動きが一切なく、硬いけどなんとも爽やかな乗り味なのです。
この乗り心地はちょっと経験がありません。
また新採用の電動式パワー・ステアリングの完成度の高さも驚愕ものです。
直進状態出し方やそこから切り始める時の滑らかさ、アシスト量の漸進的な変化が、完璧でその存在を感じさせません。正確で剛性もたっぷり
ですから、路面とクルマの状態をすべて手の平に感じることができます。
このシュアなステアリングだけでスポーツカーを運転する喜びが感じられるというものです。
そしてハンドリングはボクスターの独壇場ですね。
911も今や限界が高すぎてリアエンジンの弊害を感じさせませんが、ボクスターに乗ると交差点ひとつ回るだけでも最適な重量配分がどれほど気持ちのいいハンドリングを生むかということがよくわかります。
次のモードに移る(つまりターンイン)速さへの期待からか直進でさえ楽しく走れます。
この乗り心地とハンドリングのバランスの高みがスポーツカーの醍醐味ですね。
どんなによくできたセダンでもボクスターと同じスピードで走るには何らかの犠牲を伴います。
↑こちらは3.4LのSなのでマフラーがデュアルになっています。
総評★★★★☆
実は私は97年デビューの初代に少し乗っていた事があります。
初代の2.5Lエンジンは低速トルクが弱く、しかもクラッチのセッティングが悪く(フリクションがなく)一気に繋がってしまう事から、よくエンストしたものです。
レスポンス重視でフライホイールも軽かったので人に乗せるとほぼ100%エンストしたほどです。
ボディもオープンですから911ほどしっかりとしている訳でもなく内装も安っぽかったので、路面の荒れた所ではミシミシと色々な所から安っぽい音を立てたものです。
それに比べてこの3代目は流石と言うかほぼ欠点の無いクルマに仕上がっていました。
失ったものは何も無いとはっきり言えます。
星が半分足りないのは911と比べてしまう事ですね。
一見安い価格は欲しいオプションを加えていくと素の911に近くなってしまいます(特に3.4L)。
まあ、同じ価格で今の日本車がこれを作れるかといえば作れないのですけどね(ハードもブランドも)。
私が欲しいのはスポーツエグゾーストやPSM(ポルシェ・スタビリティー・マネジメント)、PASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネジメント)などです。
でもそうすると素でより上質な911に近くなってしまうのです。
なので、やっぱりオープンだし軽量を楽しむためにも割り切って2.7をMTでが正解か?というところに戻りついてしまいます。
うーん難しい・・。最大の敵はやはり身内にあります。
【スペック】ボクスター:全長×全幅×全高=4374×1801×1282mm/ホイールベース=2475mm/車重=1340kg/駆動方式=MR/2.7リッター水平対向6DOHC24バルブ(265ps/6700rpm、28.6kgm/4500-6500rpm)584万円
(※この記事は2012年9月に書いたものです。有料版の記事の一部を加筆訂正し約1年遅れで配信しています。)