X5に乗るのも2年ぶりぐらいです。
ようやくディーゼルモデルが出てきたので乗ってみることにしました。
X5はもともとヨーロッパではその販売の9割以上がディーゼルモデルということでその仕上がり具合が気になります。
スタイル★★★☆
スタイルは早くも古さを感じてしまいますね。
丸みを帯びたフロントはまだしも、特にリアの単調な造形は先代から印象が変わらないこともあって随分古臭く感じます。
もちろんどこから見てもビーエムであることには変わらないのですが、5・3・6とこのところ立て続けに新しくなったセダン軍のソフトなフォルムとは一時代違います。
新しいBMWはキャラクターラインこそストレート基調でウェッジを強調していますが、前後はかなり絞り込まれています。
X5のフォルムは特にリアが角張っています。
内装★★★
内装も外観以上に見飽きた印象です。
BMWの内装は外観以上に共通で、それは基本的にセダンでもSUVでも変わりません。
せめてインパネのデザインぐらいはセダンと変えてもいいのではないかと思います。
横に広がる感じを出そうとしたストレート基調のダッシュは、確かにセダンでは開放感の演出につながりますが、道なき道を行く(こともある)SUVにとっては適度な囲まれ感が安心感につながるのだと思います。
夜中に見知らぬ荒野を突き進む時、このダッシュに頼りがいが感じられるかというと疑問に思います。
一方、長所はポジションです。
高いシート高による視界も十分ですし、ステアリングの位置関係やペダルレイアウトも自然です。
ローバーのようなコマンドポジションとまではいきませんが、サイドウインドウの高さも肘掛の位置もいいところにあります。
このあたりは流石のドライバーズカーです。
エンジン・ミッション★★★★
注目はココですね。
輸入車としてはメルセデスベンツに次いで2番目の新ポスト長期規制をクリアしたディーゼルモデルです。
日本市場でのBMW初となるクリーンディーゼルモデルX5 xDrive35d ブルーパフォーマンスのエンジンはメルセデス同様、尿素水溶液「アドブルー」を用いたSCR(選択触媒還元)システムとDPF(粒子状物質除去フィルター)を備えたある意味オーソドックスなものです。
パワーは245ps/4000rpm、55.1kgm/1750-3000rpmと十分です。
注目は広い回転域で50kgmを超える強力なトルクです。
これはガソリンならV8、4.4リッターターボと変わらぬ力強さです。
実際街中では以前に試乗した3リッターガソリンモデルよりもスタートから遥かに力強く中間加速のアクセル開度も半分ぐらいの感じです。
特にキックダウンを必要としない中間加速の気持ち良さは病みつきになります。
また高速では回転数が低いこともあって静かにハミングしている感じになります。
本国にあるX5 M50dとまではいきませんが、2.2トンのX5のボディを引っ張るに十分なパフォーマンスです。
またレイアウトもBMWお得意のストレート6ですから、それに起因するスムーズなフィールとトルク特性も見ものです。
適度な重みとツキを伴ったトルク感とカムシャフトの精度の良さを感じさせるかのような一直線のスムーズさはディーゼルとはいえ変わりません。
BMWの直6に乗る楽しみです。
音も気にならないばかりか最近の直噴のバリバリという威勢のいい音質に慣れた身にはちょっとスポーティーで力強さとさえ感じさせます。
星がひとつ足らないのは個体差かもしれませんが、低速でミッションが少しギクシャクするところがあったからです。
不特定多数の乗る試乗車ではシフトの学習機能が悪さをすることがありますからそう思いたいところです。
そして燃費はガソリンモデルよりも1万キロあたり約7万円安いそうです。
本国で9割を超えるシェアも分かります。
というか日本の特殊な規制(Noxに厳しくPMに甘い)によってこれまでディーゼル禁止令をしかれていた日本のユーザーはまったく不幸としかいいようがありません。
足回り★★
ここは残念な部分です。
試乗車に付けられていたオプションのスポーツサスが全てを台無しにします。
これほどのストロークがありながら何故ここまで締め上げないといけないのか?突き上げがキツくちょっとした路面の不整でも早い周期で揺すられます。
ランフラットも最新モデルほど履きこなしていませんから、常にコツコツときます。
前回はノーマルサスでしたが、それでも酷評しています。
当時も乗り心地がイマイチなんて書いていますね。
同時に乗ったX6があまりに良かったこともありますが、この手のSUVはゆったりした気分で乗りたいですよね。
ストロークがある分、期待してしまいます。
ただ一瞬スポーツサス片鱗を見せたのは超フラットな路面でのスムーズさでした。
コースティングモードに入ったかのようなフラットな姿勢は背の高いスポーツカーのような俊敏なハンドリングを見せます。
もちろんそんな路面は長くは続きません。
X5のスポーツサスには新東名スペシャルの称号を献上することにします。
総評★★☆
このフレキシブルなエンジンのキャラと固めたスポーツサスのマッチングはもちろん最悪です。
本当に路面のいい高速道路以外にこのクルマが真価を発揮する場所が思い当たりません。
オフロードの苦手なSUVなんて洒落にもなりません。
カイエンのGTSのようにオンに特化するなら分かりますが・・。
とにかくエンジン以外は古さばかりが気になった試乗でした。
ノーマルサスであってもX6の方がいいのでこのエンジンをX6で乗ってみたいところです。
スペック:全長×全幅×全高=4860×1935×1775mm/ホイールベース=2935mm/車重=2220kg/駆動方式=4WD/3リッター直6DOHC24バルブ ディーゼルターボ(245ps/4000rpm、55.1kgm/1750-3000rpm)/価格=839万円
(※この記事は2012年7月に書いたものです。有料版の記事の一部を加筆訂正し約1年遅れで配信しています。)