Cクラスのセダンにはこれまで何度も乗ってきましたが、あまりいい印象はなかったです。
率直に言ってDセグライバルのBMW3シリーズやアウディA4に比べ設計年度の違いもあって少し落ちるなと思っていました。
それは2011年のビッグマイナー後も同様です。
まあ現行のCクラス(W204)のデビューは2007年のジュネーブですからそろそろ次期モデルの噂も出る頃ですし・・。
そんな事もあって今回はあまり多くを期待せずにこれまで何故か縁がなかったクーペに乗ってみました。
クーペはC63のAMGには乗ったことがありましたが、普通のモデルには乗った事がなかったのです。
そろそろ熟成も進んでいる頃だし、欧州車の常で最終モデルはもしや美味しいのでは?なんて感じで試乗に出かけたわけです。
スタイル★★★★
全長×全幅×全高=4640×1780×1390mm/ホイールベース=2760mmというサイズは日本で使う小型スポーツクーペとして絶妙ですね。
セダン比で全高だけが40mmレスされているだけですが、流石にカッコ良くまとまっています。
直線基調のウェッジシェイプを基本とするスタイルは以降Eクラスなどメルセデスの本流になっていますね。
特にサイドはボンネットから伸びる1直線のキャラクターラインが力強さと明快さを与えています。
クーペフォルムの正に王道です。
また全体のフォルムとしてはルーフラインなど適度に曲線も交えてあるのはエレガントな演出も必要なクーペとしてはいい塩梅だと思います。
デビュー6年を経ていますが、今でもさほど古さを感じさせません。
いい感じにクラシックになってゆきそうな気配もあります。マイナーで前後のライトもLED化されていますね。
内装★★★★
内装もデビュー時と比べると見違えるように良くなっています。
光り物が増えたダッシュボードはかなり高級感が出ました。
また、08年の時に気になって、「プラスチックのように硬い」と書いた記憶のあるステアリングの革は、柔らかく質感の高いナッパレザーに改良されています。
欲を言えばEクラス以上に装備されるあの四角の時計があればさらに高級感が増すと思います。
シートのカラーこの250では黒レザー1色ですがステアリングやシートには赤いステッチが施されシートベルトは赤!でかなりスポーティーに演出されています。
着座位置もセダンに比べて低くスポーティーなポジションになっています。
リアシートはクーペなりの閉所感はありますが、ヘッドクリアランスなどはしっかりと確保されており身長177センチの私が座っても物理的にはどこも触れるところはありません。
プラス2とした事で左右を中心に寄せ確保したのでしょう。贅沢でパーソナルな空間になっています。
エンジン・ミッション★★★★
Cクラスのエンジンラインナップは大きく分けて3つです。
まず1.8リッター直4はターボのチューン違いで2種類、「C180 ブルーエフィシェンシー クーペ」(156ps、25.5kgm)と「C250 ブルーエフィシェンシー クーペ」(204ps、31.6kgm)。
それとご存知6.2リッターV8(457ps、61.2kgm)を搭載する「C63 AMG クーペ」ですね。
ちなみにC63AMGには507馬力を誇るエディション507(507ps、62.2kgm)もあります。
それにしても1800ccで250とか?ややこしいですね。
さらに言えばこのCの250は直噴ですがE250の成層燃焼エンジンとも違います。
あちらは2リッターで211馬力です。
メルセデスのこのクラスのエンジンはちょうど過渡期で新旧入り混じっていますね。
トランスミッションはお馴染みトルコンの7段の「7G-TRONIC PLUSです。
ツインクラッチではないですがそのダイレクトなフィールとシフトスピードの早さはなかなかのものです。
トルコンとしてはBMWの使う神トルコン!ZFの8速には敵いませんが、かなり近い位置にはあります。
1.8リッター直4直噴ターボエンジン自体は非常にパワフルです。
1.8という排気量が信じられないぐらいにトルクフルに走ります。
特にスポーツモードで回せば効率のいいATの助けもあってぐんぐんスピードをのせます。
その勢いは一昔前のこのクラスのスポーツエンジンの常識を超えます。
ただメルセデスらしいというかそのフィールに官能性はありません。
音もフィールも回す喜びはありません。
この辺りはもう少し演出があってもいいと思います。
足回り★★★★
ココはちょっと驚きました。
セダンとの差が大きいです。
つまりかなりイイです。
乗り心地は重厚でサイズを忘れさせてくれる安心感に満ちています。
まあメルセデスですからこの辺りまでは想定内なのですが、飛ばした時の締まり具合と言うかハンドリングにはかなり驚きました。
セダンに比べて重心が低い事もあって外乱による乱れが最小です。
剛性の高いボディと締まったサスのコンビはコーナリング中のギャップにも全く不安感を覚えません。
スピードを上げれば上げるほどに一体感の高まるフィールはセダンには無いものです。
さらにいいのはステアリングフィールです。
ココはFRの価値があるというかCLAとの違いです。
W202時代のボール&ナット式ステアリングを思い起こさせるしっとりとした滑らかなフィールは電動では久しぶりに味わいました。
もうこのステアリングだけで100万ぐらいの価値があると思います。
その圧倒的な剛性感に支えられたスムーズな操舵感は深く深く染み渡るものです。
ただこの昔ながらの良さを持ったステアリングには同時に昔ながらのメルセデスの悪しき伝統も併せ持ちます。
つまり低速での大舵角、交差点を曲がる時などのセルフアライニングトルクの弱さが残っています。
つまりステアリングを戻してやらないと手を離しただけではストレート状態に戻らないのです。
これは面倒ですね。
何でこの特性とのバーターなのか分かりませんが・・、逆にこれの無いメルセデスのステアリングは前述の良さも消えてしまうのです。不思議です。
総評★★★★
それにしてもCのクーペは予想外に楽しかったです。
スタイルはやはりセダンとは比べ物にならないぐらいカッコイイしパーソナル感に溢れています。
クラスレスな贅沢さもあります。
この楽しいシャーシがあれば高価なAMGはいらないかもって思います。
残念なのはエンジンのフィールだけですね。
せめてポルシェのスポーツエグゾーストのようなオプションがあれば面白いのにと思いました。
ライバルのBMW325iクーペとはいい勝負です。
レクサスのIS250にはステアリングだけで圧勝!身内ではA250のシュポルトよりも大人っぽく乗り心地もいいです。
まだ乗っていないのでなんとも言えませんが価格も安いCLAが気になります。
ただAクラスベースでFFのCLAにこのステアリングフィールは期待できないので、高級感ではやはりCに分があると思います。
まあこのC250クーペは大人がさらりと乗ってかっこいいスポーツクーペの最右翼ではないでしょうか?
【スペック】全長×全幅×全高=4640×1780×1390mm/ホイールベース=2760mm/車重=1580kg/駆動方式=FR/1.8リッター直4DOHC16バルブターボ(204ps/5500rpm、31.6kgm/2000-4300rpm)/価格=598万円