カイエンは初代が2002年のデビュー、06年にマイナー、この2代目は2010年のデビューですね。
2代目は180kgの軽量化が図られたことがトピックですが、このハイブリッドではその軽量過分を丸々食ってしまっています。
スタイル★★★★
初代はパンダ顔でデビューしたカイエンですが、マイナーで一転怒ったようなワル顔になりましたね。
今回はまたまたちょっと癒し系に戻りました。というかパナメーラ顔になっただけですが。
いいのはボンネットフードがヘッドライトよりも低いとなりポルシェらしさを増した事です。
また側面へと回り込んだリアコンビネーションランプやキャビン後部の強い絞りなどによって随分シェイプした印象になりました。
ちょっと贅肉を絞ったアスリートのようなフォルムと言うか、サバンナ辺りの俊敏な動物系になりました。
ポルシェらしさもちゃんと残した上手いデザインだと思います。
内装★★
ここははっきりとトゥアレグに劣る部分です。
特にダッシュボードの質感はかなりプラスチックぽいので、よりソフトなトゥアレグの方が高いクルマに見えます。
まあオプションで革を張ることもできますが、それもポルシェ価格なのであまり現実味がありません。
また試乗車は明るいアイボリーでしたが、天気のいい日は映り込みが酷く視界を妨げるのも気になりました。
ちょっといいなと思ったのは「パナメーラ」似の幅広なセンターコンソールぐらいです。
ここはメカニカルなクロノグラフのようで機械好きの男心をくすぐります。
またリアシートですが、スペース自体は十分ですが、シートの形状があまりにフラットなのが解せません。
このクルマのキャラクターからするともっとサポートのいいものでないと、高い位置なだけに元気なドライバーに飛ばされたらたまりません。
エンジン・ミッション★★
ノーマルの3.6ならぬ3リッターV6をスーパーチャージャーで過給し、333ps/5500~6500rpmの最高出力と、44.9kgm/3000~5250rpmの最大トルクを発生します。
電気モーターのアウトプットは47psでシステム出力380psとの事ですがその実感はありません。
車重が2350kgと初代と比較して軽量化されたニューカイエンのなかにあって、ターボモデルの2230kgをも上まわってしまっているからです。
確かにアウディ製のV6はアウディらしく低速からトルクリッチで回せばツーンと粒の揃った綺麗な回転フィールをみせます。
でもこの巨体ではそこからは成す術もありません。
47psのサポートではドラマはありません。
ミッションもトゥアレグと同様、従来の6段ATに代えて、新たに8段ATが採用されました。
デュアルクラッチのPDKではなく、ティプトロニックSと呼ばれるトルコンATです。
これはけん引や悪路走行などの高負荷を考慮してのものですね。
しかし、トルコンなのにどうもギクシャクするのはハイブリッドのクラッチの制御が上手くないからでしょう。
ここらも同じパワートレインを持つ筈のトゥアレグHVの方がスムーズです。
足回り★★★
まず性能の絶対値はともかくポルシェに乗る楽しみの一つである圧倒的なブレーキの剛性感、ペダルタッチ、そしてそれに伴う制動力がありません。
街中では回生ブレーキの悪癖もしっかり感じられてしまいます。
またステアリングフィールも中立付近の手応えが曖昧です。
正確さと剛性でポルシェの期待値に届きません。
私がポルシェに期待するのは911のような“ガシッ”っとした岩のような落ち着きと(重いという意味ではありません)丈夫なギアが直結しているかのような鬼のような正確さです。
システムはフル電動ではなく電動油圧方式ですが、これも他のモデルの純油圧式とはアシストシステムが異なるためのハイブリッド特有の悪癖でしょう。
乗り心地もモードをスポーツにしても少しブカブカした感じが残ります。
これもGTSやターボではみられないものです。