フィットHVのSUV版ですね
前回のエクストレイルも走行距離18kmの新車でしたが、今回のヴェゼルも私が初の試乗ということで、またまた走行18km の個体。ウーン新車の出荷チェックのテストコースはどのメーカーもこのぐらいの距離なのでしょうか?
まあ新しいのはいいのですが、注意しないといけないのはエンジンや足に当りが付いていないのでその辺りをどう差し引いて(足して)評価するかということですね。
ただ最近の製品は非常に良く出来ているので昔みたいにあからさまにフリクションが残っているなんて事は無くなりました。前回のエクストレイルもですが、今回のヴェゼルも特に気になるところはありませんでした。
最近では前々回のタントの乗り心地ぐらいですね。“フェイスブック”に「タントの乗り心地が固い」と書いたらダイハツ車のオーナーさんから「少し乗ると見違えるように良くなりました」とのコメントを頂いたので再度チェックしてみようと思っています。
閑話休題、ヴェゼルですが売れているようですね。やはり今はセダンよりミニバンかSUVしか売れないようですね。ではでは、実力チェックと行きましょう。
スタイル★★★
顔はフィット由来というか新しいホンダの顔そのものですね。
イメージカラーの“ミスティグリーンパール”というカメムシのような色では見事に昆虫に見えます。
まあこんなこと書くとまた白黒系の面白みのない色しか出てこなくなってもなんなのですが、まあ見えるものは仕方ない。
というか悪いのは色ではなくてちょっとグロい顔つきの方なのですが。
後半のフォルムはちょっとフランス車入っていますね。
リアドアから大きくえぐられて切れ上がるキャラクターラインに続くCピラーの処理やなだらかに垂れ下がるルーフラインは確かにトレンドに沿ったものです。
でもそれがホンダらしいかと聞かれたらそんな感じもなく、どこにでもあるこのクラスのSUVデザインと結論付けられても文句は言えないでしょう。
リアのコンビネーションランプもよくあるデザインですから、おそらく夜にこのクルマの後ろについても車種を判断する材料はエンブレムに限られると思います。
確かにフォルム自体はまとまってはいます。でも特に魅力は感じません。
常々ホンダデザインのブレークスルーはいつ来るのか楽しみに待っているのですが、その夜明けはまだ近くはないようです。
内装★★★
内装は流石に少しだけ洒落っ気を出したようです。
まあ冒険という幻想を売るSUVですから少しぐらいは夢を見させてくれなくては困るわけです。
洒落っ気の部分は主にインパネですね。シンプルなシングルメーターにハイブリッドを意識させるAMGのような形状のシフトレバーのコンビです。
これはこれまでのホンダにもありましたが、仕上げは格段に良くなっています。
ピアノブラックの演出も安っぽいウッド調よりもずっと質感があります。
またオプションですがジャズブラウンというカラーを選べば、ダッシュの一部やセンターコンソール、ドア
ハンドルなどにアクセントを付けることも可能です。
残念なのは平凡なシートのデザインですね。ここだけは大衆車かタクシーのような古いデザインです。
あとリアシートのポジションも少し低いですね。
前回のエクストレイルのリアシートがあまりに快適だったのでちょっと比較してしまうのですが、こちらはスペースこそ十分ですがやはりそのデザインが災いして(リアのヘッドクリアランスを確保するため)ポジションを下げざるを得ないようです。
良好な視界やワクワク感はありません。
またフロントシートも同様に低めです。
ステアリングが寝ているのもちょっとポジション的に気になります。
ホンダではセダン比+100ミリを謳っています。
女性には乗り降りはしやすいでしょう。
ただSUVを買った特別感は薄いです。
この手のクルマの醍醐味は高い視点からの視界にもあると思います。
エンジン★★★☆
まずスペックは直噴1.5L i-VTECエンジン132ps/6600rpm&15.9kg・m/4600rpmです。
これに7速のデュアルクラッチを付けるというのはフィットハイブリッドと同じですね。
ただこちらは重量がかさむ分パワーがプラスされています。
ちなみにフィットは(110ps/6000rpm最大トルク:13.7kgm/5000rpm)です。
確かにパワーは十分ですが、このエンジンにもホンダらしい楽しさはないですね。
回してもサウンドではなくノイズが増えるだけですし、回転のフィールにも楽しさはなくもちろんパワーの盛り上がりなど期待してはいけません。
それならいっそ静かにモーターで新鮮さを楽しもうと思うのですが、やはり少し踏むとエンジンの力を借りないわけにはいきません。つなぎは自然で違和感がないのは救いです。
燃費さえ意識しなければストレスはありません。
ただ一番残念なのはせっかくのデュアルクラッチのセットアップです。
フィットでも書いたのですが、あまりにマイルドでCVTといわれても全く疑いません。
何故のデュアルクラッチなのか?燃費だけ?だったら今までのCVTが燃費にいいというのは何だったの?
とにかくもっとタイトにしてくれないと走りの楽しさに全く寄与していません。
おそらくユーザーのシフトショックに対するクレームを恐れたのでしょう。
ホンダスピリットはどこへ行った?もう宝の持ち腐れです。
足回り★★★
ここも第一印象はいいです。
この車高にしてはセンターレイアウトのガソリンタンクや電池の重さが利いてか、重心が低く安定感があります。
透視図を見るとバッテリーはもっと低い位置にセットできないものかとは思いますが。
それでもステアリングフィールもフィットに比べてどっしり感があります。
リアルタイムAWD(インテリジェント・コントロール)と呼ばれる4WDシステムはオンロードの機敏性を重視しているようで例えばコーナーのターンインではFF寄りになり出口ではリアにも駆動力をかけるという制御になっています。
ロールも少なく確かに飛ばせるSUVではあります。
また乗り心地もいいですね。
フィットに比べストロークも豊かで流石に荒れた路面でも余裕をもってクリアできますしショックも気になりません。あらゆる路面で快適に過ごせるタイプです。
ではでは、何故3つ★止まりなのか?そう、この後前回ご紹介したエクストレイルに乗ってしまったのですね。するとその乗り味の差に価格とクラスを超えたものを感じてしまいました。
エクストレイルには自然な自動車としての楽しさと安定感がありました。
確かにヴェゼルはハイブリッド特有のシロモノ感は免れないのでその辺りを差し引いてとも考えたのですが・・。
エクストレイルは主にステアリングの座りというか自然さというかセンターの出し方に久々に日産の良さを感じましたね。ホンダのそれは明らかに電動の癖が入っています。
制御過多ですね。これがシロモノっぽさというか安っぽさを感じさせる犯人かと?
総評★★★
冒頭にも書きましたがこの手のクルマは売れるのですね。
第一印象も非常にいいのでちょっと試乗したぐらいでは「いいなあー」となります。私も危うく騙されるところでした。
まあそこまで書くほど悪いクルマではないですが、まあ一般向けの良く出来た製品です。
趣味的なものを求めてはいけません。
ホンダ好きの人やクルマ好きの人はつまりそこが残念なのですね。
足として買うならいいクルマですと言っておきましょう。
【スペック】ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4295×1770×1605mm/ホイールベース2610mm/車重:1370kg/駆動方式:FF/エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブトランスミッション:7段AT/最高出力:132ps(97kw)/6600rpm/最大トルク:15.9kg・m(156N・m)/4600rpmタイヤ:215/60R16/燃費08モード:23.2km/L/価格:256万円