先代から退化したママチャリ?
↑どうせならプジョー1007みたいに運転席側も電動にすればもっと便利で差別化出来たのに
フランス語で“扉”を意味する「ポルテ」の新型ですね。
左側のドアをピラーレスのスライドとする事で街乗りの買い物用として徹底的に実用性にこだわったクルマです。
初代は04年ですから、6年ぶりのフルチェンジです。
スタイル★★
ここは初代の方が良かったですね。
初代なら5つ星です。
初代は今見ても先進的で日本には輸入されていませんが、顔もキャラもシトロエンのC3ピカソ辺りとかぶるような楽しさがありました。
例えば初代はフェンダーからバンパーのラインが一色線でそれが丸っこいスタイルを微ミョーに引き締めていて色によっては男性でも乗れそうな感じもありました。
ところが今回はいつものというかトヨタお得意の可愛い子ちゃん系で丸いフェンダーアーチに丸を意識したフォグ&エアインテークともう私のようなようなオヤジには全く似合わないスタイルになっていまいました。
サイドのウィンドウグラフィックも初代はしっかりとデザインされていましたが、新型は誰もが書けそうなラインでなんとも退屈な印象です。
リアのコンビネーションランプも初代は小さく上方に配されるなど洒落っ気のあるものでしたが、今回はフロント同様、ただ配置したという位置にあります。
デザインははっきりと退歩ですね。
せっかくコストをかけて非対称のドアにしてあるのですから、キューブとまでは言わないですが、少しでもアンシンメトリーな箇所があればそれだけで個性になったのに・・。
フィアット・リトモみたいにフロントグリルだけでも非対称にするとか・・。
それと残念なのは、どうせならプジョー1007みたいに運転席側も電動にすればもっと便利で差別化出来たのにということです。
昔、代車で1007を借りてからその便利さにすっかりはまってしまった事を思い出します。
両手に荷物を抱えていても手にリモコンさえ握りしめていればOKの電動スライドドアの便利さは今や多くのワンボックユーザーを虜にしていますが、それがこのサイズで、しかもリアではなくそのまま運転席に乗り込めるとなるとさらなる中毒者を生む可能性はあったと思うのですが?
内装★★
内装も先代に比べたらどぎつくなったなあーという印象です。
質感もプラスチッキーで退化しています。
先代はデザインもシンプルでセンターメーターを中心としたデザインやコラムシフトを採用してスッキリまとめるなど、独特の美意識が感じられましたしカラーも常識的に落ち着いていました。
それが新型ではコンソールは大きなセレクターが陣取り、センターメーターも丸と角の2段構えというゴチャゴチャしたものになっています。
極めつけはオレンジのアクセントラインです。
なんともどぎつい色でとてもメーカーの作品とは思えないほどです。
悲しいかな微ミョーに色のセンスが悪いのです。
これ、おそらく同じことをフィアットやルノーあたりがやるとポップでいいねー!となります。
センスの差はかくも大きいです。
いいのは低いフロア(地上から30cm)による乗降性です。まあこれも先代からの美点ですがフロアも完全にフラットで、ベビーカーをそのまま積み込めるなど大変便利なものです。
また助手席のヘッドレストを外し、背を畳んで前に押し出せば、ダッシュボード下に一部をもぐり込ませることができ、テーブルや物置き場所となる便利な機能も踏襲されています。
小物入れやフックも多くこのあたりは買い物車に徹底しています。
しかしシフトはコラムから貴重なセンタースペースを占領するタイプに変更されています。
ここは先代のコラムを改良できなかったのでしょうか?シフトを重視するドライバーズカーでは全くないのでそうしたものはなるべく小さく追いやって欲しいのです。
また足踏み式サイドブレーキもバツです。
安全面でも2度踏みリリース方式は、主ブレーキ失陥時など緊急用としては、反復使用しにくいですし、せっかくの足元スペースも大きくとって少しでもウォークスルーをしやすくするのがこの手のクルマの常道です。
ここらはボタンで片付けて欲しいのです。
またドラポジがどうにもしっくりときません。
長時間座っていると疲れそうです。
リアシートは足が組めるほどの広さですが、いまや広さだけなら軽のN-BOXやタントなどでも十分ですから、せっかく普通車を買うならシートに懲って欲しいです。
ポルテのシートはサイズが小振りでデザインも平凡です。
せっかく特徴的なドアを持つならいっそカフェのように、ゆったりとしたふかふかのシートにするとか、上手く遊べばいいのにと思います。
今のように中途半端では先代同様、単に実用的なトヨタ車として埋没する可能性があります。
センターメーターも丸と角の2段構えというゴチャゴチャしたものになっています。
極めつけはオレンジのアクセントラインです。
エンジン・ミッション★★
エンジンは1.3と1.5。
今回試乗したのは1.5「1NZ-FE」109ps。
これは先代と同じです。車重が軽いのはいいのですが、全体にノイズレベルは高めです。まあ嫌味のない音質なのでさほど気にはなりませんが長距離では疲れます。
パワーは1.5でも必要最低限です。
CVTはいつものトヨタの仕事しかしません。
Sモードにしても回転が少し高まるだけでフラットトルクのせいかさほど速くなりません。
ならば高いギアでアクセルを踏み込んで我慢している方が音が静かな分、諦めもつくというものです。
またシフトにはエンジンブレーキを使えるBというポジションもありましたが、これも音が高まるだけでさほどエンブレの効果はありません。
大体このクルマに乗るような人が積極的に使うとも思えません。
ちなみに1.3は従来の「2NZ-FE」87psから「1NR-FE」95psにパワーアップされていますのでこちらの方がいいかもしれません。
足回り★★
前マクファーソンストラット/コイル、後トーションビーム。ここは書く事がなくて困ります。
つまりいつものようにステアリングフィールはなく、乗り心地はソフトですがフラット感は期待できないというものです。
しかも少し背が高い為、固めてあるのかトヨタに期待するあたりの柔らかさはありません。
細かい継ぎ目でコツコツときます。防音材が少ないのかトレッドの硬さを音と共に伝えてきます。
街乗りのトヨタ車としてここは要改良ですね。安定性も高速や長距離は遠慮したいレベルです。
総評★★☆
色々書いちゃいましたが、こういう割り切ったコンセプトのクルマ嫌いじゃないです。
だから惜しいのです。子供っぽい内外装と安っぽい走りが・・。
実用的なママちゃりみたいなクルマってあれば本当に便利なんですけどね。
かごが大きくてスタンドがしっかりしていてただただ使いやすい、みたいな。カングーやC3ピカソみたいなクルマって意外に日本で無いんですね。
どうでもいいクルマはこれほど多いのに・・。
ポルテはそのディメンションや内装の小技(小物入れやフック、カップホルダーなど)は欧州車以上に実用車ですが、肝心の走りが実用に耐えません。
本物の実用車は1日中乗っていても疲れないぐらいの安定性と乗り心地が伴ってこそと思います。
それに洒落っ気やセンスが感じられれば言うことなしですね。
その点ポルテは可能性は感じますが、先代から退歩しているのが気になります。
走りの進歩はほとんどなくデザインやセンスが退歩している・・。残念です。
【スペック】全長×全幅×全高3995×1695×1690mm/ホイールベース=2600mm/車重=1150kg/駆動方式=FF/1.5リッター直4DOHC(109ps/6000rpm、13.9kgm/4800rpm)/価格=174万円
(※この記事は2012年7月に書いたものです。有料版の記事の一部を加筆訂正し約1年遅れで配信しています。)
↑リアのコンビネーションランプも初代は小さく上方に配されるなど洒落っ気のあるものでしたが、今回はフロント同様、ただ配置したという位置にあります。残念!