アメ車を取り上げるのは久しぶりです。
Vol.64のエクスプローラー以来です。
その前がクーガでこれもSUVですから、このムスタングのようなスポーティーカーやセダンは扱ったことが無かったのですね。
カマロやコルベットは常に気になっていましたしキャデラックも何度も乗りましたがなぜか後回しにしていたのですね。
ムスタングは1964年に初代がデビューした元祖スペシャルティカーです。
年配の方の中にはマッハ1などをイメージされる方も多いかと思います。
この型は2006年秋に上陸しました。エンジンはV6と、V8、ボディはクーペとコンバーチブルの2種、09年に大掛かりなマイナーを受けています。
スタイル★★★★☆
これは単純にかっこいいですね。
古典的でアメ車らしいプロポーションです。
具体的には逆スラントノーズ、C字型サイドスクープ、3連リアコンビネーションランプなど60年代のマッスカーそのもののイメージです。
06年のデビューですが、まったく古さを感じません。
旧型の丸くこじんまりとしたスタイルが嘘のように今回は大胆でおおらかなスタイルです。
直線を基調としたシンプルな構成ですが、しっかりとマスタングらしさを主張します。
コンバーチブルもAピラーの角度が良くバランスがいいです。
馬っぽい感じもあって愛着も感じられるスタイルです。
ちなみにマスタングにフォードのエンブレムはありません。
フロントグリルに取り付けられた大きな“ギャロッピングホース”のみですね。
プレミアムブランドのリンカーン同様、フォードの中では特別な車種です。
↑大き目のステアリングにサドルという茶系のカラーの革シート
内装★★★★
内装も上手いですね。
こういう昔のテイストを現代に取り入れる時のバランスはなかなか見事なものがあります。
例えば67年型を範とした3本スポークステアリングホイールや左右対称のインストゥルメントパネルなどは上手くクラシカルなムードを盛り上げてくれます。
大振りなT字型のATセレクターも初代を受け継ぐデザインでアメ車好きなら納得でしょう。
V8を内に秘めていることを誇示するかのようなボンネットの盛り上がりもマッスル感の演出です。高いダッシュやこのボンネットで心配させる視界も意外に気になりません。
内装の質感もデビュー時よりも毎年改良されようやくまともになりました。
特に09年のマイナーで良くなっています。
シートも流石に大振りでしっかりとサポートしてくれます。
リアシートはヘッドクリアランスがきついですが、足元はつま先を前シートの下に入れれば問題なしです。
トランクは狭いですが、そこをとやかく言うクルマでは無いでしょう。
幅が広くゴルフバックは真横に積めます。
一応トランクスルーも付いています。
またスペシャリティーカーらしいのはメーターパネルのバックパネルの色を125色から選べる「MyColorイルミネーション」や、照明の色を7色から選べる「アンビエント・ライティング」という機能です。
夜のドライブを楽しくしてくれるなかなか“らしい”機能だと思います。
↑5.0からタワーバーが取り付けられました。カバーが無いのもいいですね!
エンジン★★★★
10年モデルからV8の排気量を4.6リッターから5リッター、V6は4リッターから3.7リッター(こちらは減少)へ改められました。両エンジンともにDOHC化され、「Ti-VCT」と呼ばれる吸排気独立制御の可変バルブタイミング機構も装着、今回試乗したV8は従来型と比べて99psプラスの418ps、V6も96psプラスの309psと大幅なパワーアップを達成しています。
エンジンをかけるとV8ユニット特有の“ズギュオーン”という重々しいサウンドを撒き散らします。車内ではDOHC化されて少しスムーズで静かになった感じもありますが、それでも並のエンジンと比べれば遥かに表情豊かで楽しめます。
つまり低回転やパーシャルでは“トゥルルル”と静かにハミングしていますが、そこからスロットルに力をこめると、その開度に応じて音階を変え唸ります。
ところどころに隙間があってゆるやかに構成されている感じはアメ車ならではのフィールですが、高回転になると状況は一変します。
フルスロットルを与えると5000rpm,辺りから俄然粒が揃ってキメの細かな感じで一気に7000rpmを目指します。
それまで野太かったエンジン音は硬質なものに変わりアメリカンV8ユニットらしからぬ勢いとスムーズさで鋭く吹け上がります。
やはりバイクならハーレー好きの人が好みそうなエンジンですね。
コントロールする味わい、ゆっくり走っても刻々と変化する楽しみもあります。
よく自動車雑誌にV6の方がノーズが軽くてとか、これで十分なんて書いてありますが、やはりこのサウンドとパワーを知るとV6はおとなしいというか、少しモノ足りません。
このV8はV6よりも70万高いですがその価値は十分にあると思います。
星が一つ欠けるのは、加速時の6ATの一瞬のためらいです。
同じギアの範囲ならいいのですが、キックダウンは最新のATと比べるとやや失速感があります。
パドルがなく補う手段がありません。
変速自体はスムーズですが、ココは少し古さを感じます。
まあコンバーチブルでのんびり流すなら問題はありませんが。
足回り★★★★
ココも期待を裏切りません。乗り心地は非常にいいです。
少しゆるい感じもアメ車っぽくのんびり走っても楽しめます。
エクスプローラーもそうですがこのコンプライアンスの使い方はアメ車ならではというか、実に癒されます。
タイヤはV8モデルには19インチのアルミホイールに、245/45ZR19サイズのピレリタイヤが組み合わされます。
ちなみにV6は18インチで、タイヤサイズは2305/50R18。
またエンジンのパワーアップに伴い、ボディ剛性も高められています。
スタビライザー径を拡大し、「V8 GTモデル」のエンジンルームにはストラットタワーバーが装備されます。
ただハイスピードでは少し不安も感じます。このおおらかで温和な心地よさの中でコーナーを迎えると、次も曲がってくれるだろうかという不安がよぎる事もあります。
まあ、実際にはABS、EBDを装備したブレーキはしっかりと制動を行い、それらを統合制御する車両安定装置「AdvanceTrac」が全車に標準装備されますので危ないことにはならないのですが。
ステアリングは電動化されましたが、責任はそこだけでは無いです。
電動の割には自然な方です。
まあハイスピードで走りたい人はゴブラなどのスペシャルバージョンかコルベットに行けと言うことでしょう。
この癒しの乗り味と表情豊かなエンジンを味わいつつ、そこそこのペースで流すのがこのクルマの正しい乗り方という事でしょう。了解です。
総評★★★★
それにしてもやはりアメ車は楽しいですね。
ムードはあるし、単純にカッコいい。そして何よりゆっくり走って楽しいのがいいです。
確かにハーレーと同じですね。
エンジンの鼓動と対話しつつ、ゆるい乗り味に癒される。
こう考えるとよく「バスタブに浸かる心地よさ」と評されるコンバーチブルがいいかもしれませんね。
こういうファンカーを作らせるとやはりアメ車はデザインも含め上手いなあと思います。
日本車では無いタイプのクルマですね。
ハンドリングがどうとか、細かなことは忘れてサウンドと乗り心地、ムードを楽しむ大人のクルマです。
確かにフェラーリのようなサラブレッドでは無いですが、性格が良くて人懐っこい、なかなかの良馬であることは間違いないです。
【スペック】全長×全幅×全高=4785×1880×1415mm/ホイールベース=2720mm/車重=1680kg/駆動方式=FR/5リッターV8DOHC32バルブ(418ps/6500rpm、53.9kgm/4250rpm)/価格=500万円