今回は「ちょっと古いクルマ」シリーズです。
というのも前回、新型Cクラスを斬ってしまったらオヤジの回りでも予想以上に反響が大きく、ブーイングの嵐!を浴びまして・・、
今回は補足と言うか、オヤジの知る良き時代のベンツを取り上げ説明してみたいと思います。
そうです、これでどや? のW124です。
本当は「伝家の宝刀」500Eを、とも思ったのですが、かえってこのロアグレードの方が、基本性能が出ていいかと思ったもので・・。
先に言っておきますがオヤジは決してベンツを憎んでいるわけではないですよ!
尊敬すらしています。
だからこそ、新型Cにこんなはずでは! と思ったからです。
ではこのW124、今の時代のベンツと何がどう違うのか?
2000年前後にあからさまにコストダウンされ、今はその反動もあって少し良くなっているとの評価ですが・・。
しかしこのW124、この時代のベンツは他のクルマからかる~く10年以上のアドバンスを持っていたと思います。
だってこのW124のデビューは1984年ですから24年も前の設計ですよ!
それが現在の基準で見ても、乗るといまだに他のクルマより優れているところがいっぱい感じられます。
今のCクラスに24年後に乗ったとして、こうした感じを与えてくれるとはどうしても思えないのです。
●概要
W123の後を受け、W124がデビューしたのは84年ですね。
ボディバリエーションは豊富でセダンの他、ワゴン、カブリオレ、クーペ、6ドアリムジンなどもありました。
エンジンはディーゼルターボやセルシオに対抗した400Eなんてのもありましたね。
駆動は4マチックと呼ばれた4WDもありました。
あの500Eは91年の発売ですね。
SLのV8をポルシェがチューンし、325psを発生。ボリュームたっぷりのオーバーフェンダーを持つボディもポルシェが生産と言うスペシャルモデルでした。
当時、自動車雑誌の編集の仕事をしていたオヤジは、並行で入ってきたブルーブラックの500Eの日本上陸1号車に空輸されてきた空港で少し乗る機会がありましたが、それはそれはびっくらこきました。
全てが剛性の塊! ソリッド過ぎて、スポーツカーのようにシャープな乗り味はポルシェそのものでしたから。
V8はチョント踏むとそれこそ滑走路をジェット機のごとく加速したものです。
乗り味はむしろ爽やかで、風のように飛ぶように走ったものです。 いまだにコレクターズアイテムになっているのが分かる気がします。
95年にW210にチェンジされました。
スタイル★★★★★
0.29! ベンツ史上初めてcd値0.3を切ったモデルですね。
力感漲る筋肉質の塊は、当時の日本の路上に明らかに異質でしかし完全な説得力を持っていました。ストレートグレーのカラーのそれは「お化けナマズ」のように見えたものです。
90年のマイナーでサッコプレート(イタリア系デザイナーブルーノサッコの名によるボディのアンダープレート)が与えられてからはいっそうすっきりとモダンになりましたね。
↑空調やライトなどは全てダイヤル式で、高速でも手探りで操作できるほか、力が入りすぎて誤操作するような事のない設計です。
内装★★★★
デザイン自体、ベンツの常で垢抜けないですが、その機能には文句ありません。
車高が高く、分厚いクッションを持つシートに腰掛けてなお頭上は広々しています。
シートは、この個体も13万キロを後にしていますが張りを失っていません。
独立したスプリングと天然のヤシのイ草を使ったシートは有名ですね。
幅は今となってはさほど広くありませんが、この車内の余裕というか、ゆったりとした空気感は何なんでしょう? クラシックホテルの本物のアンティークソファに背筋を伸ばして座っているような気分です。
↑13万キロを超えた個体です。スピードメーターの50-60のイエローゾーンはドイツの市街地の制限速度をあらわします。また90にⅡ150にⅢとあるのはシフトダウンの限界ポイントですね。
↑ヘッドレストは立てるのはマニュアルですが、このように視界を確保するために倒すのは運転席から出来ます。
エンジン★★★★★
これまた5つ★です。
このまろやかな4気筒は絶品です!
6気筒ももちろんスムーズでしたが、オヤジは不整脈が出やすく回転で稼ぐ感じのストレート6よりも市街地ではこの4気筒の方が好きです。
スリップ感のないATとマージンたっぷり余裕しゃくしゃくの駆動系がもたらすスムーズな走りは今でも最高です。
ボディ剛性はもちろんですが、なんですか!この駆動系の滑らかさ!
ドライブシャフトやミッション、ステアリングの取り付け剛性など、全てがコンピューターのはじき出した倍はあろうかというほどの手ごたえです!
重量感のあるシャフトがオイルの海の中を泳いでいる様が手から足からあちこちから伝わってきます。
ちなみに260E、300Eといった6気筒はまだ直列でしたから、精度の高いカムシャフトが2本回る感じが伝わってきます。
回転を上げるとそれ自身がバランスを取り出すかのようなフィールは独特で、当時高速に乗るとフロントに高速で回り続ける慣性の大きな宇宙ゴマを抱えているような感じがしたものです。
足回り★★★★★
190についでマルチリンク式のリアサスペンションが採用されたクルマですね。
ストロークが豊かで、どんなに荒れた路面を強行突破してもアゴを出しません。
最新のクルマでもこれほど安心して飛ばせるクルマはめったにあるものではありません。
例えば、市街地で大きなトラックの横をすり抜ける時などの安心感は今のCより上です。
高速の直進性もです。ステアリングは鬼のように切れますしブレーキも食い付きます。
コーナーも鈍順ではありますが、ニュートラルで限界が察知しやすくまったくコワくありません。
この時代のベンツは、ハッキリと直進と定常旋回とを分けたセッテイングになっています。
なのでスムーズなターンインというよりはグラリときますが、そこからはまた鬼のように安定しているというハンドリングです。これを良しとするかどうかは好みの分かれるところかもしれませんが、オヤジはセダンにはアリだと思います。
↑シトロエンにDSやGS以上のクルマが出ないように、ベンツもいまだにこの時代のクルマを超える名車はその後は出ていません。
総合評価★★★★★
現代の基準でも特筆すぺきポイントの多い124はやはりこうなってしまいます。
今のベンツにこうした独特の濃い乗り味というものが、なくなってしまったことはオヤジのようにこの124以前のベンツを知るものには物足りないと感じます。
ただ21世紀のベンツしか知らない人にとってはさほどたいした問題ではないのかもしれません。
確かにそれはベンツにかぎらず、均質化していますから・・。
それとも、オヤジはもしかして濃い味に慣れてしまって薄味に反応しない自動車メタボになりかかっているのか?
そういえば食生活も酒のあてとかばっかり、濃い味好きだもんなー。
やばいかも!