フィット3 ハイブリッド ホンダ
愛せないかも?
3代目となる新型「ホンダ・フィット」は、2013年9月5日のデビューです。
販売は好調で発表から10日間で4万台を超えたといいます。
受注の7割以上はハイブリッドということです。
スタイル★★★★
ココは最近のホンダにしては頑張ったと思いますね。
まあ2代目が初代のキープコンセプトで代わり映えしませんでしたから、この3代目で変革が必要だったのでしょう。
歴代シビックもそうでしたがホンダは売れると次のモデルはキープでいく悪い癖がありまして成功作の2代目は確実にコケるという失敗を繰り返してきました。
サイズは先代モデル比で、全長は55mm、ホイールベースは30mm、それぞれ延長されています。
見た目それほど大きくなった印象がないのは先代がミニバン的に間延びしていたのに対し、新型はそれなりに凝縮感があるからでしょう。
「Solid Wing Face」と名付けられた新しい顔やルーフ近くまで伸びたリアのコンビランプ、彫刻的にえぐられたキャラクターラインなどはそれなりに強い個性を主張します。
またパッケージング的に上手いなあと思うのは屋根が絞られているのに後席の頭上スペースには余裕があることですね。
内装★★★
ココはちょっと残念な部分です。確かに質感はあがっています。
ただデザインが相変わらずゴチャゴチャしすぎていて消化不良なのは最近のホンダのインテリアに共通する欠点ですね。
フィットもそこを脱し切れていません。
フィットをデザインした本田技術研究所・四輪R&Dセンター・デザイン室・グローバル・クリエイティブ・ダイレクターの南 俊叙さんはwebCGのインタビューの中で「最近のホンダ車は特にインテリアがひどくて、乗る気がしない」と率直に語っておられましたが、もうひと頑張りして欲しいところです。
カラーも黒&グレーのダーク系なのでもっと小型車らしく明るくポップなものにもチャレンジして欲しいです。
エアコンの温度・風量調節スイッチは、新型ではタッチパネル式になっていますが、これも慣れないと使い辛いですね。
微妙なタッチが要求されるので走行中は凝視しないと押す場所がずれてしまうのです。これはフィットに限らずこの種のシステムの欠点ですが。
昔の人間としてはダイヤル式が一番使いやすいですね。
またハイブリッドモデルのシフトノブはホンダの量産車として初のシフト・バイ・ワイヤ方式が採用されています。
まあデザイン的に面白いのはいいですがスペースを重視するならこんな物はダッシュに追いやってもいいのではないかと思います。
センターコンソールを占領していたのではせっかくのせっかくのバイ・ワイアのメリットが活かしきれているとは思いません。
エンジン・ミッション★★★★
ココのトピックはなんと言っても、最高36.4km/リッターのJC08モード値で「トヨタ・アクア」(35.4km/リッター)を抜いた「ハイブリッド」であるということですね。
構成はアトキンソンサイクルの1.5リッター4気筒DOHCにモーター内蔵の7段DCT(デュアルクラッチ式変速機)を組み合わせたものです。
モーターは10kW(14ps)の旧型から22kW(29.5ps)に倍増しています。
搭載位置は変速機の末端にマウントされ、ミッションオイルで冷却されています。
モーターと変速機は自社製でデュアルクラッチはドイツのルーク社のものです。
バッテリーはニッケル水素からリチウムイオンにバージョンアップし、蓄電容量は従来の1.5倍に拡大されています。
これは本田技研とGSユアサによる合弁会社のブルーエナジー製です。
新型はモーターより上流に置いたデュアルクラッチで、エンジンとモーターを完全に切り離すことができるようになり、EV走行を可能にしています。ここが燃費向上の肝ですね。
従来型のIMAはエンジンとトランスミッション(CVT)の間にモーターが挟まれるレイアウトで、エンジンとモーターがダイレクトにつながっていたため、EV走行時や回生ブレーキが作動している時など(エンジンが仕事をしていない状態)でもエンジンの抵抗をひきずっていました。
コンパクトで安価なシステムですが、燃費ではトヨタのシリーズ・パラレル・ハイブリッドシステムに敵わなかったわけです。
それが今回のi-DCDでは、2つのクラッチが、不要時のエンジンを切り離すことが出来ます。
つまり発進時や中低速(30~60km/h程度)での巡航、減速時などです。
システム出力は137ps。非常にスムーズで速いです。全く不満はありません。
デュアルクラッチも全くショックを感じません。半クラッチで実現しているクリープの制御もスムーズです。
ただ逆にダイレクト感もありません。VWのDSGなどでイメージするスポーティーな感じはありません。
もちろんスポーティーなグレードではありませんから、それは言わない事にしましょう。
ただRSのミッションが6MTとCVTなのはちょっと残念ですね。
足回り★★★
ココは少し物足りない部分です。サスペンション形式はフロントがマクファーソン・ストラット、リアがトーションビームと先代と同じです。
初代から問題視されていた乗り心地は確かに良くなっています。
スムーズで細かな微振動も綺麗にシャットアウトされました。
ところが何故か響かない。原因はステアリングフィールですね。もちろん電動のそれは路面の状況をあまりに遮断して運転している実感に乏しいのです。これが妙な不安や充実感の不足に繋がります。
ハンドリングは基本的に悪くありません。
従来型と同じく燃料タンクを車体中央に配置するセンタータンクレイアウトを採用し重心位置も車高の割りに抑えられています。
ただあまりセンター感のない直進性も含め全般にドライブフィールがぬるくて何処にでもあるクルマの1台に成り下がっています。
あれだけ酷かった初代の乗り心地が懐かしくなるのはしかしシュアな乗り味を持っていたからだと思います。
総評★★★
ファミリーカーは難しいなあと思うのは中庸な意見を採用せざる終えないところですね。
そういうのはやはりホンダは得意ではないようですね。
持ち味が生かせない?でも昔のホンダはそこらへんを上手くやったものなのですがね。
ワンダーシビックとか同時期のアコードとか最高のファミリーカーでありながら新鮮なスタイルと乗り味を持っていました。
フェイスブックで評論家の吉田匠さんがフィットの第一印象を「FIT3のドライビング感覚、正直なところ、僕には響いてきませんでした。
個々の要素は決して悪くないのだけれど、それらの集合体としてのクルマとそのドライビング感覚に、魅力が感じられなかったんですね、残念ながら」と書いておられます。
激しく同意です。これではVWゴルフはもちろん、フォーカスやAクラス、V40、208、ルーテシアといった個性溢れる競合に立ち打ち出来ないのではないでしょうか?オデッセイやアコードもそうですが最近のホンダは「力あって意足りず」の感がします。優秀なデザイナーとプロダクトマネージャーが居れば一気に開花すると思うのですが・・。
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3955×1695×1525mm/ホイールベース:2530mm車重:1130kg/駆動方式:FF/エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ/トランスミッション:7段AT/最高出力:110ps(81kW)/6000rpm/最大トルク:13.7kgm(134Nm)/5000rpmモーター最高出力:29.5ps(22kW)/1313-2000rpm/モーター最大トルク:16.3kgm(160Nm)/0-1313rpm/システム最高出力:137ps(101kW)/システム最大トルク:17.3kgm(170Nm)タイヤ:(前)185/60R15(後)185/60R15(ブリヂストン・エコピア)/燃費:33.6km/リッター/価格:183万円