逆風を突き抜ける魅力はあるか?
VW問題の影響の大きさは日に日に増すばかりですが、ベンツとしては公式に自社製品の潔癖をアナウンスしています。
上野金太郎社長は、「ダイムラーも含めて世界各国の排ガス規制をクリアするように開発しており問題ない」と述べています。
今回試乗したのは2015年9月28日に発表されたばかりの「Cクラス」のセダンのクリーンディーゼルモデルの「C220d」です。
「C220d」にはワゴンもありますが、今回はセダンのレザーエクスクルーシブパッケージ(65.3万円)とAMGライン(35.7万円)、ボディカラーは
ダイヤモンドホワイト(18.9万円)のオプションが加えられ、車両価格だけで678.9万円の個体です。
ではでは、早速逝ってみましょう!^^
スタイル★★★★☆
Cクラスのスタイルはエレガントですね。
Sクラスと同じ垂れ下がったテールを持つセダンはそのサイズを感じさせません。
トランクスペースの不利は承知ですが、必要ならワゴンを選べばいいでしょう。
後ろに付いていると、その質感の見事さもあってSクラスと間違うこともあるほどです。
全体としては丸いフォルムですが、サイドを走るキャラクターラインのエッジは実にシャープで高い工作精度が要求されるものです。
Cクラスのスタイルは古典的なディティールをうまく取り入れ、しかし最新の技術を注ぎ込んでいるのが感じられます。
内装★★★★☆
高いから当たり前といえばそれまでなのですが、サイズを超えた質感はアウディを超えたとさえ感じます。
一昔前のアバンギャルドと違ってブラックカラーのウッドの質感やカラーも実に良くなりました。
ステアリングはAMGラインのオプションに含まれるスポーツステアリングで下がフラットなタイプです。
随所に配されるLEDライトや、夜は室内を好みの3色から選べるアンビニエントライトなど、高級車に相応しいムードを演出します。
シートはセダンでありながら、サポートが良く適度なサイズのボディもあってスポーツカーのような一体感が得られます。
リアシートも心地良い空間です。スペースは過不足なく安心感の高い空間です。
クッションストロークはありませんが、背もたれの角度がよく疲れにくいシートです。
トランクの開閉が足で出来るのも手に荷物を持っている際には便利です。
エンジン★★★★
ここが今回のポイントですね。
最新の2.2リッター直4ディーゼルターボエンジンは最高出力170ps、最大トルク40.8kgmを発生します。
燃料噴射システムはもちろんピエゾインジェクター&コモンレール。ピエゾの1サイクルの噴射回数は5回です。
ターボラグを解消しつつ必要なブースト圧を引き出すため、排気の流れを制御する可変フラップを備えた2ステージターボチャージャーを装備していま
す。
トランスミッションにはCクラス初となるトルコン式9段AT「9G-TRONIC」です。
燃費は、セダンで20.3km/リッター、ステーションワゴンで19.6km/リッターという燃費(ともにJC08モード)。排出ガスの後処理は、尿素水溶液
「AdBlue(アドブルー)」です。窒素酸化物(NOx)を削減する尿素SCR(選択型触媒還元)ディーゼル排出ガス処理システム「BlueTEC(ブルー
テック)」です。
と、まあどこでも得れるスペックの説明はこの辺にしてそのフィールはどうだったのか?
流石っす!
確かに同じエンジンを積むEクラスと比べると、アイドリング時の音は僅かに大きいですが、しかしそれは十分に丸くプレミアムセダンの期待を裏
切りません。
パワーはどこからでもまったく不足無く、400Nmの実力を感じます。
とにかくストレスの無い走りです。このエンジンはEやSの300hにも搭載されていますが、それぞれチューンが違います。重量の重いSが一番ハイチュー
ンですが、Cは軽い分、燃費に振ったセットですがそれでも十分な加速を見せます。
まあ、スポーティーさではボルボやBMWのディーゼルに劣りますが、深い深い実力を感じます。
このそこはかとないトルク感は何なのでしょうか?
おそらくボディやアクセルの重さなど細かなセッティングのマリアージュなのですが大型ベンツの感覚をCのボディで感じさせます。
そしてエンジン以上に素晴らしいのはこの9ATです。
これまでベンツの主力の7ATも十分にスムーズでしたが、この9ATを知ると特にキックダウン時のシフトショックやシームレスなシフトアップの感覚
に差を認められます。
懸念されるシフトビジーなど多段化の悪癖は一切感じません。
足回り★★★★
今回はエアサス付でした。
Cが出た当初よりもずっと乗り心地が良くなっていると感じました。
それは緩やかな周期でピッチングを残すのですが、それが何故か嫌でないです。
先週のアウディA4のように完璧なフラットライドではないですし、3シリーズのようにスポーティーでもありませんが、ちょっとジャガーにも似たタッチがあることに驚きました。
モードは4段階ですがスポーツにしてもハーシュが強まるだけで乗り心地にフラット感は現れません。
変わりにステアリングのしっかり感と収束の周期は早くなりますので、もちろんハイスピードドライブに向きます。
ハンドリングはFRながらBMWよりも安定方向なのは全てのメルセデスに共通するフィロソフィーです。
ロールを感じながらステアリングを操作する必要がある楽しさが鉄壁でリアのグリップ管理さえしていればいいBMWやアウディとの違いです。
欠点はブレーキですね。それは制動力ではなく、洗練性です。
輸入車にありがちなのですが、スムーズに止まれません。ギギという音も発生しがちでした。
個体差もあるかもしれませんが、ここは要改良です。
ディーゼルの強トルクと9ATのローギアードが要因かもしれませんが、日本の道路環境からするとテスターは何をしていたのかと感じます。
総評★★★★
久しぶりにCに乗ってその圧倒的な高級感に驚かされました。
ここ数年でCは素晴らしく良くなりましたね。
正直出た時は熟成された先代モデルの
方が完成度が高いと感じていました。
でもこのところのコストの賭け具
合はハンパ無いですね。
まあ高いですが、その分は確かに注ぎ込まれています。
メルセデスがVWを抜いて輸入車販売台数No.1になるのはVWがこけたからだけではなく、MBコネクションをはじめとするメルセデスのプロモーシ
ョンの素晴らしさもさるところながら、商品に対するたゆまぬ改良の賜物でしょう。
BMWの3はスポーティー、A4は完璧、Cは高級というキャラは確かに体現されていると感じました。
【スペック】全長×全幅×全高=4,690mm×1,810mm×1,435mm/ホイールベース=2,840mm/車両重量=1,650kg/駆動方式=FR/エンジン=2.2L直列
4気筒DOHCディーゼルターボ/最高出力=170ps/3,000-4,200rpm/最大トルク=400Nm/1,400-2,800rpm/トランスミッション=9速AT/サスペンション
=前:4リンク式/後:マルチリンク式/タイヤサイズ=前後225/50R17/JC08モード燃費=20.3km/L/使用燃料=軽油/車両本体価格=559万円