日本に入るグレードは3種、A180ブルーエフィシェンシー、同Sports、A250SPORTの3グレードです。
今回試乗したのはもっともベーシックなA180ブルーエフィシェンシーです。
ちなみに唯一2リッターとなる250 SPORTはAMGがシャーシを担当したそうでかなり気合の入ったモデルのようです。
ライバルの1シリーズがかなりスポーティーで出来が良かったせいかメルセデスとしても本気を出してきた感じですね。
まあ、今回はそんなAクラスの素のポテンシャルを探るべく最もベーシックなモデルから試乗してみました。
スタイル★★★★
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4292×1780×1433mm。
先代に比べ、全長で400mm以上長くなり、全高は160mmも低くなっています。
この前長の拡大でAクラスは先代まではBセグメントでしたが、新型はゴルフと同じCセグサイズになりました。
ちなみにゴルフのサイズは4210×1790×1485mm。より近いのはやはりスポーティーなBMW1シリーズの4340×1765×1430mmの方でしょう。
Aクラスの過去2代のモデルは、「サンドイッチコンセプト」と称する二層構造のフロアのため高い車高を特徴とするプロポーションでした。
プラットフォームを共有する現行のBクラスは、背高スタイルを踏襲していますが、このAクラスでは一転ライバルと同様に低い車高によるスポーティーなスタイルを採用してきました。
Cd値は0.27と優秀なものです。
第一印象は随分質感が高く力強いなーと思いました。
特にフロントの線の太さは、ちょっとエレガントでファミリーよりのBクラスとの違いですね。
一方サイドのキャラクターラインはBクラスと共通する処理です。
ベルトラインからリアフェンダーにかけて跳ね上がるラインは面積の大きなBクラスでは意味のないものに思えましたが、このスポーティーなAクラスではさほど違和感はありません。
必要悪と言ってはなんですが、退屈なサイドに個性とアクを出すための処理としては許容範囲かと思います。
リアの印象も随分変わりました。
丸いテールランプはちょっとメガーヌ風で、如何にもベンツなフロントとテイストを異にしますが、ぐっと張ったリアフェンダーと大きなホイールアーチの力強さがそれをカバーします。
結果、塊感の強さや品質感といったドイツ車、ベンツに期待する資質はBクラス以上で、これは売れるデザインだなと思います。
実際ショールームでBクラスと並んでいるとこのAクラスのほうが高いクルマに見えてしまうほどです。
内装★★★★
内装も密度が高いですね。
「SLS AMG」のデザインを受け継ぐ丸型3連のエアコンの吹き出し口やシルバーのリンクのメーターなどもBクラスと同じ手法ですが、こちらの方がタイトな分、質感が高い感じがします。
テイストは「アーバン」「スタイル」「AMGスポーツ」の3つのラインが用意されており、さらにオプションで「ナイト」「エクスクルーシブ」「AMGエクスクルーシブ」といったデザインパッケージを選ぶことも可能です。
どれもデザインはいいですね。
品質感も流石でこのあたりはプレミアムブランドの面目躍如といったところです。
インフォメーションツールについては、さまざまなオーディオソースに対応する「COMANDシステム」が標準装着されます。
しかしこの一見iPadのようなモニターはナビを内蔵しているわけでも取り外せるわけでもなくHDDナビを利用するにはディーラーオプションの「COMANDシステムナビゲーション」176400円を追加する必要があります。
これならいっそMINIのiPhoneパッケージのようにホルダーと端子だけにして、端末は外部に依存した方がいい気もします。
最近はテザリングできる携帯も多いのでWiFiのタブレットを利用し、最新のナビを利用、オリジナル・アプリでオーディオのコントロールも出来ると思います。
難点は前席に座るとフロントウインドウの転地が狭いなー、と感じることです。
スポーティーというよりちょっと窮屈ですね。
この感覚はMINIでもそうですが、MINIの場合はスペースに余裕があるのでマシです。
ここはオプションのパノラミックスライディングルーフが欲しくなります。
エンジン★★★★
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試乗したA180ブルーエフィシェンシーは直4、1595ccターボ、最高出力122ps、最大トルク20.4kgm、ミッションは7G-DCTです。もっともパワフルな「A250ブルーエフィシェンシー」は、1991ccターボで210psと35.7kgmです。
パワー感はBMWの1やゴルフのロワーグレードと比べてもちょっとまろやかで緩い感じはありますが、フィールは軽快で排気音も乾いた感じの爽やかなものです。
よりパワフルで濃い走りを望むならもちろんA250を選べばいいです。
しかし、Bクラスと同じはずのこのエンジンでも回せばかなり楽しい性格を見せます。
高回転までスムーズで回転に応じてリニアにパワーが増してゆくのが心地いいです。
回しても遮音は良く不快な感じはありません。
アイドルストップのマナーもいいです。
再始動時の振動が少ないのはマウント技術と圧倒的に高いボディ剛性によるところも大きいと思います。
またミッションのマナーがBクラスより洗練されたのも嬉しいです。
Bクラスではツインクラッチ特有のドライなフィールが僅かですが残っていましたが、Aクラスのそれは完全にスムーズでプレミアムブランドとして文句なしの出来です。
安全装備としては全車にレーダー型衝突警告システムが標準装備されています。
障害物や前走車と衝突の可能性があればドライバーに警告し、その後ドライバーのブレーキ操作では十分な制動力が得られない場合は、事故回避に必要な制動力を自動的に補うシステムです。
またドライバーの疲労や眠気を検知して注意を促すアテンションアシストも標準で装備されます。
足回り★★★★★
ココが、このクルマのハイライトですね。
Bクラスでは硬かった乗り心地が実にしなやかで懐の深い古き良きメルセデスのそれに戻っているではありませんか!
路面の荒れたところでサスがスムーズに動いている様子が伝わるような乗り心地です。
ブッシュのしなやかさを感じる優しい乗り心地はBクラスには無いものです。
それは単に車高が低いので柔らかなレートの設定が可能になったからというレベルの違いではなく、もっと根本的な違いに感じます。
ポテンシャルが明らかに違うのです。
リアサスペンションは新設計の4リンク式を採用しています。
”重心位置が24mm、着座位置が174mmも低くなったことで、乗り心地を犠牲にすることなく、走行安定性および操縦性は大幅に改善され、スポーティーなハンドリングを実現した”とアナウンスされています。
ハンドリングも気持ちイイですね。ステアリングは昔のメルセデスからすると慣れるまでは頼りないほど軽く感じるかもしれませんが、異例に高いボディ剛性によって正確さは完璧で過度特性などのリニアリティもまったく自然なのでどんな路面でも安心してステアリングを握っていられます。
ハンドルを切ったときの手応え、その時のクルマの反応、路面状況の伝え方、優しい乗り心地、シートの感触・・、色々な要素が複合的に噛み合ってはじめて、この感覚、メルセデスライドになるのでしょう。
久しく味わえなかったメルセデスが帰ってきた感じ、1990年代以前のメルセデスを知る人には、“そうそうこれがメルセデスなんだよ”と唸る出来だと思います。
この味はBMWにもアウディにも真似のできないものです。
理論やスペックを超えた安心感に包まれます。