ハーリー・アールの夢見た1953年の初代から数える事7代目のC7です。
このC7は2013年1月のデトロイトショーで発表され、日本では12月から発売されています。
クーペ(トップを外すことも出来るが)とコンバーチブルという2つのボディーバリエーションがあり、それぞれ7MTと6AT、標準仕様と「Z51」というハイパフォーマンスモデルがあります。
今回試乗したのはクーペのZ51の6ATです。
スタイル★★★★☆
エクステリアデザインは韓国人デザイナーと言われれば、そんな気もしますね。
鉄では不可能な深いエッジやアクセントが特徴です。
サイズは実際にはC6よりも僅かに拡大されていますが、そう見えないのはエッジの効いた引き締まったデザインによるものでしょう。
36年ぶりというスティングレイ(アカエイ)の名の復活からも分かるようにデザイナーはC3を意識したそうです。
ディティールも賑やかですね。
リアウィンドウのそばに開けられたエアインテークはトランスミッションやLSDを冷却するためのものです。
リアビューに迫力を与える4本出しのセンターマフラーや、丸4灯のデザインではなくなったテールランプも新型「コルベット」の特徴ですね。
ちょっと未来的アニメチックな雰囲気もあります。
ボンネットやルーフにはカーボンを使用し45kgほど軽量化されています。
内装★★★★
内装も随分豪華になりました。内装色は「アドレナリンレッド」「ジェットブラック」「カラハリ」「ブラウンストーン」の4色から選べます。
特にシートが良かったですね。
大型でレカロを開発目標にしたというそれはマグネシウムのフレームを持つしっかりとしたもので、サイズも大きくホールドも高いものです。
しかしそれでいてのんびり走る時には決して窮屈すぎないのは流石です。
このシートの出来はかなり素晴らしいと思います。
残念なのは相変わらず建付けがいまいちなのか、僅かに音を立てる事です。
試乗車は特に大きなリアゲート付近からコトコトと音を立てていました。
実際のボディ剛性はねじりで57%も高くなったといいますが、剛性感という意味ではこうした部分で損をしているのが残念です。
エンジン・ミッション★★★☆
「LT1」というエンジン型式の6.2リッターV8 OHVです。
形式こそ伝統のOHVですが、オールアルミニウムの直噴エンジンです。
さらに可変バルブタイミング機構や、クルージング中はV8からV4となる「アクティブ・フューエルマネジメント」まで与えられています。
また車両特性の切り替えデバイスもついています。
「ドライバーモードセレクター」と呼ばれるそれは、1:ウェザー、2:エコ、3:ツアー、4:スポーツ、5:トラックの5つです。
スポーツやトラックにするとステアリングはぐっと重みを増し、サウンドもシャープになります。
出力はノーマルの460psに対し「Z51」で466psとさほど差はありませんが、吸排気系のチューニングの他、ギア比も7段MTではロー&クロス側に、6段ATでもファイナルがロー側に変更されているので加速フ
ィールは一段とスポーティーです。
コルベット特有の低回転から重低音の響くサウンドはフル加速時にはOHVとは思えないほどのシャープな吹け上がりに変貌します。
フルスロットルを与えると、とてつもない質量の活火山が一気に噴火するかのように加速します。低回転の地鳴りから解き放たれる(バルブの切り替わる回転による音の変化)様は正にアドレナリンが吹き上がります。
このサウンドと間違いなくドラマのある出力特性は古典的とはいえスポーツカーユニットとして不満はありません。
6ATはパドルによる変速も可能でそのレスポンスも十分満足のゆくものです。
ちなみに15年モデルでは8ATにアップグレードされるようです。
確かに官能性で言えばかつてC6のZ06が搭載していた7リッター自然吸気の「LS7」に適わないかもしれませんが、トラックモードのそれは現行のアメ車の中ではクライスラーのSRT8 のHEMIエンジンよりも一
段と刺激的だと思います。
ちなみに流す時(エコモード)ではミッションが低回転域を積極的に多用するのに加え、気筒休止システムがV4とV8を切り替えます。
もちろんその作動は非常になめらかで、メーターで確認しない限り気付くことはありません。
足回り★★★
エンジン同様、横置きリーフスプリングという伝統の形式が踏襲されました。
しかし乗り心地に関しては直接的なあたりはマイルドに抑えられています。
これはミシュランと共同開発したという同車専用の「パイロットスーパースポーツ」とマグネティックライド・サスペンションによるものです。
一方、物足りないのはフラット感ですね。
ツアー以下のモードでも細かな揺れはシャットアウトしきれていません。
乗り味は随分軽快になり重さを感じなくなりました。
S時の切り返しなどでも、さほど荷重変化を気にする事なく強引にステアできます。これは先代モデルでは「Z06」「ZR1」だけに使われていたアルミフレームを、「C7」では標準モデルでも採用したことや、
ドライサンプ化(Z51)による低重心化のメリットでしょう。
ステアリングはクイックでトラックモードではサスも引き締まっているので舵(だ)の利きもシャープです。
またコルベットはC5以来、トランスアクスルを採用していることもあって前後重量配分もほぼ50対50。結果最大で、1.3Gもの横Gを発生させるといいます。
この1.3Gのポテンシャルは普段は横方向よりも縦方向の、つまりその強力なパワーの吸収に役立っています。
FRとしては異例に高い次元までアクセルを踏み続けられるのはこのサスペンションの優れたトラクション能力、横剛性の高さの副産物でしょうか。
総評★★★☆
ゆっくり走っても楽しいというコルベットの伝統的な味が残っているのはファンには朗報です。
やはり極度にモダナイズされているとはいえ、OHVのV8エンジン&フルフレーム構造のシャシーに横置きリーフスプリングという基本構成ゆえの事でしょう。
価格もこの性能を考えると安いですね。
ノーマルなら車両価格は929万で日産GT-Rよりも今や安いです。
性能的には911やR8、458並のスピードを持っています。
確かに洗練度で言えば価格差なりに劣ります。
しかしそれは味やキャラクターの違いにもなっています。
コルベットならのんびり流しても楽しいです。
気軽に乗れるスーパーカーなんてR8かコルベットぐらいのものだと思うのですが、価格はR8の半分以下ですからね。
気分もアゲアゲになるというものです!
【スペック】ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4510×1880×1230mm/ホイールベース:2710mm/車重:1580kg/駆動方式:FR/エンジン:6.2リッターV8 OHV 16バルブ、トランスミッション:6段AT/最高出力:466ps(343kW)/6000rpm/最大トルク:64.2kgm(630Nm)/4600rpm/タイヤ:(前)245/35ZR19 89Y/(後)285/30ZR20 95Y(ミシュラン・パイロットスーパースポーツ)/燃費:シティー=6.8km/リッター、ハイウェイ=11.9km/リッター、総合=8.5km/リッター(標準グレード、米国EPA値)/価格:1099万円