確かに熟成されましたが・・
現行LS(F40)は2006年のデビューですね。
テールランプの変更等を伴った2009年、つまり大きいところでは今回が2度めのマイナーチェンジです。
今回は約6000点の主要構成部品のうち、半分にあたる3000点の部品変更を伴う大掛かりなものです。
LSのラインは、まずホイールべースがノーマルかロングか、駆動がRWDかAWDか、エンジンはガソリンエンジンかハイブリッドかと分かれます。
さらに今回新たに従来のSZをスープアップしたFスポーツという選択肢も用意されました。
今回試乗したのはマイナー前に何度か乗ったことがあったので比較がしやすいと思いLS600h バージョンLを選びました。
スタイル★★★★
なんといってもGSやCHやRXに続き、逆台形と台形を組み合わせた大きな「スピンドルグリル」が与えられたのがトピックですね。
実は私は最初写真で見た時、控えめや繊細さを売りというか特徴にしていたLSの日本らしさというかアイデンティティを捨て、アウディなど欧州の権力嗜好に迎合してしまった!とその宗旨変えを批判しましたが、実物はなかなか質感が高く、確かに従来型の線が細かったデザインよりは安心感があります。
何より既にデビュー後6年を経ていますが、さほど古く感じないのはプロポーション自体しっかりとしているからでしょう。
無駄なラインやアクセントはなく、そう言う意味でも日本風だったわけですが、今回塗装にも厚みが出たせいか質感に力強さがでてスピンドルグリルともマッチする結果になったようです。
また、もともと600hがデビューした2007年に世界初採用だったLEDヘッドランプも今や多くのフォロワーを生んでいますが、新型ではますます進化し美しいアイラインを実現しています。
内装★★★★
インテリアデザインも一新されました。
従来没個性だった感のある大型のあるセンターコンソールは廃され、流行りの水平基調のインストゥルメントパネルが与えられました。
モニターは大型12.3インチに変更され、随分と情報量が増えました。
マウスのような操作を可能とするナビやAV機器の操作デバイス「リモートタッチ」も採用され、多くの操作を最小の視線移動で可能としています。
中央のアナログ時計は、時刻補正をGPSからの電波を受信して行うタイプで、デザインよりも実を取る方針が見えます。アルミパネルを土台に立体的な表現がなされた手の込んだ物で、左右どちらの席からみても正確に時間が把握できるものです。
革はバージョンLでは滑らかなセミアニリン仕上げのプレミアムレザーとなり、かなり柔らかな感触で高級感があります。
オプションで選べるバンブー(竹)素材のステアリングやパネルもなかなか素敵な風合いで、テカテカのお決まりウォールナットよりも100倍ナチュラルですね。
各座席で異なる色のLEDイルミネーションなども、オーナの満足度を高めてくれるでしょう。
内装もようやく世界基準になったと言えます。
また最高級車らしいのは内装カスタマイズプログラム「L-Select」というオプションが用意されることです。
これはほぼフルオーダーの仕様を可能としたもので、購入時に幅広いコーディネートが楽しめるようになっています。
100万以上の高価なオプションですが、自分だけのコーディネートを楽しめるのはこのクラスならではの特権でしょう。
エンジン★★★★
エンジンはNA直噴5.0リッターV型8気筒エンジン(2UR-FSE)は、最高出力394ps、最大トルク53.2kgm+ニッケル水素電池を使用した2つの電気モーター(221hp、30.6kgm)のアシストにより、システムの最大出力は444ps!
トランスミッションは、2段変速式リダクション機構を持つCVT(無段変速機)で、3つのドライブモード(ノーマル、パワー、スノー)が選べます。
さらにEVドライブモードがあり、低速ならばモーターのみでの走行が可能にです。
ちなみに600hでは駆動は全てAWDになります。
走り出しての感想はとにかく静かでスムーズでパワフル。
ほぼ無音のままかなりの勢いで加速しモーターのブーストがかかったような感触はなかなかほかでは得られない体験です。
BMWのアクティブ・ハイブリッドなど一部にはこうしたパワー系のハイブリッドがありますが、あちらはここまで無音ではありません。
ミッションは基本CVTですが、ハイブリッドのためイメージのそれとは違いとにかくシームレスに必要な時に必要なだけの推進力を発揮してくれます。
ノイズもスリップ感も皆無で既存のトランスミッションの概念を超えます。
ただスポーティーに走りたい人にはFスポーツの方が音は楽しめます。
まあそれでもおとなしめなので、エンジン音に関しては「GS350 F SPORT」の方が上ですが。
LSはスポーティーといっても高級な味を損なわないことが第一ですからそれでいいと思います。
とにかく静粛性・洗練性は再び世界一に返り咲いたといえます。
信号待ちで自動的にブレーキをかけてくれるブレーキホールドもレクサスらしい便利な機能です。
とにかく街乗りでこれほど快適なクルマも少ないと思います。
足回り★★★
乗り心地はいいです。
従来モデルよりも重厚感が増し無粋な微振動もなくなりました。
18インチタイヤ装着車が履く新開発のノイズリダクションホイールも効果的なようでタイヤのノイズもほとんど気になりません。
ただフラット感ではFスポーツの方が上でしょう。
ちなみにFスポはメルセデスの「AMGパッケージ」と同じ位置づけ。BMWの「Mパフォーマンス」やアウディの「Sモデル」に相当するモデルです。
バイワイヤー式ブレーキの踏力感も今回からガソリン車のLS460と変わらないリニアなフィールになりました。
ボディもレーザースクリュー溶接や接着剤の採用など、あらたな生産技術の導入を進めたほか、スポット溶接箇所の拡大、各部の接合強化等々によって、かなり向上しまし、従来モデルよりもステアリングに伝わる情報も増えました。
これはコラム剛性を20パーセント引き上げたことが効いているようです。
ただ、BMWなどと比べるとまだまだと感じるのもこの部分です。
ここの正確性だけで走りの一体感が変わります。
600hではまだまだ左右に緩い感じが残り、どこかクルマ任せな感じになります。
ここまで褒めちぎってきましたが、ここはちょっとというのがこの相変わらずのステアリングフィールですね。
ここは欧州車にかなわないようです。
近々Fスポーツを試してご報告したいと思います。
また安全装備ではアイサイトに当たるアドバンスドプリクラッシュセーフティシステム(APCS)も採用されました。
これは100万を超える高価なオプションですが、その分機能は充実しています。
昼間だけでなく夜間にも、車両前方の歩行者や車両の存在を検知し、自動ブレーキによって相対速度が40km/h以下の場合には衝突回避を可能にしたり、ライトはロー/ハイビームを切り換える他、ヘッドランプ内のシャッターによる遮光をおこなうことで、照射範囲を極力狭めることなく対向車の眩惑を防ぐという新アダプティブハイビームシステムなども備わります。
さらには改良版のレーンキープアシストやブラインドスポットモニター(BSM)運転時における死角を検出し、また車をバックさせるときに後方確認をアシストする(後者の機能はリアクロストラフィックアラートもしくはRCTAと呼ばれる)も設定されるなど、最新の安全装備は全て網羅されています。
総評★★★☆
LSはこの6年で相対的にライバルに対して商品力を落とし、販売にも影響を与えていました。
渡辺秀樹チーフエンジニア今回のマイナーでは当初予定の1.5倍近くの予算をのんでもらったといいます。
結果、確かに静粛性やスムーズネスは再び世界一へと返り咲きました。
また先進デバイスの新規採用やアップデートにより安全性も世界最高水準に高められました。
しかしパワートレインがほとんど進化していません。
460ではアイドルストップもありません。
世界はダウンサイジング指向で小型ハイブリッドやディーゼルなども含めて、ライバル達は次のステージへ進化しています。
環境志向のプレミアムカーという意味では、ハイブリッドでLSは先駆者の筈です。
いずれこのセグメントでもCO2排出量130g/kmが求められます。こうなると今のLSのエンジンラインナップでは無理です。
当然次のフルモデルチェンジでは何らかの施策が打たれるでしょうが今回のマイナーでそのあたりが見えなかったのも不満といえば不満です。
【スペック】】LS600h:全長×全幅×全高=5090×1875×1480mm/ホイールベース=3090mm/駆動方式=4WD/5リッターV8DOHC32バルブ(389hp/6400rpm、53.1kgm/4000rpm)+交流同期電動機(221hp、30.6kgm)
(※この記事は2012年10月に書いたものです。有料版の記事の一部を加筆訂正し約1年遅れで配信しています。)