絶妙な乗り味です
ビアンテの走りにミニバンを見直したオヤジは、
国産最高と思っているデリカD:5を久しぶりに試してみたくなりました。
5月にマイナーを受けました。2列目をキャプテンシートにした仕様を追加したり、フロントにパワーシートを採用するなど、小規模なものですが、
その素晴らしい走りに変化は無かったのでしょうか?
●概要
この5代目は2007年1月のデビューでした。
13年ぶりのフルチェンジで、ベースもパジェロからアウトランダーになっています。
i(アイ)と共に好評で、新生三菱の屋台骨を支えたモデルですね。
スタイル★★★★
先代の白ながすクジラのような「スペースギア」から一転、直線基調のスタイルになりました。
先代より100mmも低くされた車高は、しかしフロアを下げることで、室内高は逆に100mm高くなっているという設計です。
この明快なスタイルは2005年の東京モーターショーで出たコンセプトカーのイメージを上手く残していると思います。
「スターワゴン」のオマージュともいえるクリーンなボディは、
オヤジ世代の三菱ファンのハートを鷲掴みです。
適度にアウトドアな雰囲気もあり、実に個性的です。他のミニバンに乗っているより、
ちょっと訳知りな雰囲気はこのクルマならではでしょう。いいキャラだと思います。
5つ★でないのはハマーみたいなフロントグリルのメッキと、「ローデスト」というわけの分からないエアロ仕様がラインナップされるからです。
ローデストは子供っぽいエアロ満載の仕様で、せっかくの知的なキャラと、4WDの地上高が台無しのおばかなモデルです。
まあ売れるのかもしれませんが、こんなモデルを出してはメーカーの矜持に関わるというものです。 オプションで良かったのではないでしょうか?
↑「スペースギア」、乗るにはメリーゴーランドの馬にまたがるぐらいの気合が必要でした。
↑パジェロとこのスターワゴンは90年代の三菱を象徴するモデルでした。
内装★★★★
内装も外観同様、直線基調で統一が図られています。
プラスチックの質感やシートの色使いなどは相変わらずイマイチですが、
デザイン自体はいいと思います。下手なアレンジも無く、外観と上手くマッチしています。
ただ2列目がセパレートも選べるようになった今、ウォークスルーを妨げる、フロントのセンターコンソールはどうにかならないでしょうか? 他車の様に跳ね上げ式にすれば簡単に解決するのですが。
エンジン★★★
可変バルブタイミング、アルミシリンダーブロックを特徴とするエンジンは、アウトランダーにも使われている2.4リッター170psです。
ミッションはCVTで、ステアリングにはパドルシフトが付き、6速のスポーツモードが選べます。
CVTのスリップ感は抑えられ、加速も十分ですが、
加速時の音はガーガーと少しうるさく感じます。
パーシャル時はとても静かで快適なので、この点は少し残念です。
後述するゆったりとしたリズムの乗り味には、
もう少しトルクの大きなエンジンか、できればディーゼルで乗りたいものです。
足回り★★★★★
スポーティーなビアンテに対し、乗り心地でははっきりとソフトで快適です。
路面の継ぎ目もビアンテならば「タンタン」と硬質な音を残して乗り越えますが、デリカはハイトが高く、エアの容量も大きなタイヤもあって小さく「ツンツン」と感じる程度です。
そのくせ直進性も良く、安定感もあります。
特に4WDにすると雨の日やコーナーリング時の安定性も高まります。燃費も1%程度しか変わらないということなので、常に4WDを選んでおけばいいと思います。
通常はFFのオンデマンドですが、アクティブ方式の電子制御カップリングなので、リアにも駆動力がかかっています。まあ、いっそフルタイムにしてくれたらもっと安定性は高まると思うのですが。
カーブで無駄にふらつくこともありません。
決してスポーティーではありませんが、特性がリニアで安心感は非常に高いものがあります。
ステアリングは最小回転半径が5.4mと非常に良く切れます。トレールが大きいのか、セルフアライニングトルクが強めで、直進に戻る力が強いですが、それでも情報は良く伝え、
ベースのアウトランダーよりも遥かに自然な仕上がりになっています。
そして、このクルマの気持ちいいところは、クルージング時のゆったりとしたリズムです。
大きなギャップもストロークのたっぷりしたサスペンションが、ふわりと吸収してくれます。
大きなフォード系の、そうエクスプローラーのような乗り味というか、癒しがあります。
このサイズのクルマでこうした高級で楽しい乗り味を持つクルマは実に稀です。
ビアンテのように固くて快適というものや、アルファードのようにソフトだけど何の楽しみも無いというものはありますが、このデリカのように快適で、しかもドライブを楽しめる乗り味のミニバンはなかなかありません。偶然の産物なのでしょうか? 日本車としては奇跡的です。
総合評価★★★★☆
国産のミニバンとしてはエリシオンに並ぶぐらい好きな乗り味です。
マイナー後も変に固められたりせず、その気持ちいい乗り味に変化はありませんでした。
街中の段差もガンガンいける24度というアプローチアングルもこのクルマを気軽に安心して楽しめるものにしています。
リアサスはスペースギアと違って、マルチリンクですがデフロックがあるので、本格的なオフロードも行けます。
まあ、実際にそうした場面に出合うことは少ないでしょうが、そのポテンシャルを持っている、それだけでオヤジは夢を抱くことが出来ます。
クルマ好きがミニバンに乗るにはそうしたサムシングも重要です。