魅力的な新しいジャンルの登場
今回も「他のメディアに先駆けてご報告を」と言う事で、まだ発売前(1月24日発売)のアウトランダーPHEVの先行試乗会に行ってきました。
兵庫県のセントラルサーキットで行われた模様のご報告を!
アウトランダーのガソリンモデルはこのメルマガのVol.85でも取り上げましたが、今回のPHEVは4駆SUVとして世界初のPHVということで非常に意義のあるモデルだと思ったので再び取り上げる事にしました。
当日は三菱のエンジニアの方々以外にも、ジャーナリストから石井昌道、岡本幸一郎、小沢コージ、桂伸一、川端由美、五味康隆、佐藤久実、瀬在仁志、竹岡圭、萩原秀輝、松田秀士(50音順、敬称略)といった方々も参加されていて色々お話を聞く事も出来ました。
皆さんかなり注目のモデルという事で熱心にチェックされていました。
スタイル★★★★
外観はエンブレム程度しか変わりがありません。
細かいところでもフロントグリルのスリットが水平になっているぐらいですね(ガソリン版はスリーダイヤのエンブレム付近でキュッと上に上がっています)。
全長4655mm、全幅1800mm、全高1680mmというボディーサイズも同じ。2670mmのホイールベースも同寸です。
フロントはさらにすっきりとした醤油顔です。ここは無用に大きく見せたいデザインの多いミニバンやSUVにあっていい感じです。
大型のヘッドランプで前後左右への広がりを強調しないデザインですが、威圧感がなく知的な感じすら受けます。
三菱のイメージせいかちょっと銀縁眼鏡のサラリーマン的?というか角ばった感じが妙に須藤元気に見えてしまうのではありますが。。
リアは薄いハの字型のリアコンビネーションライトが、サイドのキャラクターラインにつながって、いることで一体感を表現しています。
下向きにすることで台形を形作り安定感を出す手法ですね。これも上手いと思います。
全体的にシンプルで明快な造形です。何よりごちゃごちゃとしていないのがいいです。Cd値もSUVとしてはかなり優秀で0.33となっています。
星が☆増えたのはやはりPHEVのイメージでしょうか^^
内装★★☆
内装もほぼ変わりません。
シフトレバーがBMWのようにシルバーで短めのタイプとなってるのが変更点です。
操作はリーフと同じようにNから手前(ドライバー側)に引き寄せ下にするとDに入ります。
ココは前回も酷評した部分ですね。
つまり内装色がまたもや黒一色なのです!夢を売るSUVがこれでは全く興味が湧きません。
デザインも誰が書いてもというか、子供が書いてもコレになるのではというぐらい当たり前のど真ん中です。
頑張っているのはダッシュボードだけです。
先代のプラスチックお化けからは脱しています。
上面には本革の風合いが表現されたソフトパッドが用いられていますし、シルバーのアクセントトリムもそれなりの効果を発揮しています。
回生ブレーキ用のパドルの質感もしっかりとしています。
シートは前回のモデルでは調整が出来ず、前部が少し下がり気味でブレーキング時に腿で支えるのに苦労します、と書きましたが今回のモデルはプレミアムパッケージだったので電動パワーシートとなり、前だけをリフト出来るようになっていました。☆増えたのはそのためです。
広さでは前回同様です。
セカンドシートは十分。サードシートはやはり頭がつかえます。PHEV化によるネガではありませんが、あと3センチほどのクリアランス、どうにかならなかったのでしょうか?
エンジン・ミッション★★★★★
ココはガソリンモデルは3つ★ですから大躍進です。
ベースエンジンは2リッター直4SOHC16バルブ(118ps/4500rpm、19.0kgm/4500rpm)これに前後2つのモーターを組み合わせて世界初の4WD、SUVタイプのPHEVとしています。
ちなみにバッテリーはリチウムイオンで300V、12kWhの総電力量となっています。
エンジンはノーマルのガソリンが150os/6000rpm、19.4kgm/4200rpmですからハイブリッド化にあたり最高出力と最大トルクの回転数を合わせてきているのが特徴です。
つまりモーターがある分4500rpm以下の効率を重視し燃費を稼いでいるわけですね。パワーは十分です。サーキットでも不足を感じないほどです。
またこのエンジンの特徴は静かでスムーズな事です。
遮音材の限られたプリウスPHVとの違いはここですね。
いつ始動したのかわからないほどスムーズですし、回しても風の様なシューンという音質が遠くで聞こえる程度です。
またそのシームレスな制御も見事です。
ここは経験の長いプリウスもですが、こちらはさらに自然で運転がしやすいです。
回生ブレーキのタッチもまったく違和感がありません。
走行パターンは、モーターだけで走る「EV走行モード」、電池がなくなってきたらエンジンで発電した電力を使ってモーターだけで走る「シリーズ走行モード」、そして高速・高付加時などエンジンで走ってモーターがアシストする「パラレル走行モード」の3モードを自動で切り替えて走ります。
EVモードの走行距離もプリウスの23.4kmに対しこちらは60.2km。航続可能距離はJC08モードで897km。急速充電なら80%まで僅か30分(リーフは1時間)というのも見事です。
プリウスPHVから3年間で随分進歩したものです。
足回り★★★☆
ガソリンでオプションのS-AWC(8万4000円)は標準です。
これは「Super AllWheel Control」の略で、旋回性や直進の安定性を上げるシステムのこと。AFD(アクティブフロントデフ)を介してフロント左右輪のトルク分配を加減、ヨー(回ろうとする力)をコントロールします。
また電子制御パワーステアリングやブレーキとの協調制御によって安定したコーナリングを発揮するという、高度なアクティブ4WDシステムです。コーナリング中に内側のブレーキをちょっとつまんで旋回を手助けしたりなんて離れ業もやってくれます。
またガソリン車同様、上級モデルには「e-Assist」と呼ばれる複合安全装置が標準装備されています。
これは「レーダークルーズコントロールシステム(ACC)」「衝突被害軽減ブレーキシステム(FCM)」「車線逸脱警報システム(LDW)」の3機能で構成されます。アイサイトもそうですがこの手の装置はあるに越した事はありません。人間は誰だってミスをするし疲れますから。
乗り心地はソフトですがノーマルほどではありません。
300kgという決して少なくない重量増をカバーするために少し固められています。
同乗したジャーナリストの石井さんもこの点を指摘されていました。
もちろん相対的なもので絶対値としては十分に快適な乗り心地です。
またハンドリングは重心が低くなっているので安定感はありますが、やはり軽快感は損なわれています。
安定性もタイヤがプアなこともあって100km/hを超えると緩くなります。
ロールスピードが速くまたステアリングフィールが希薄なところもあって欧州の同クラスと比べると流石に高速走行は苦手です。
その辺りが星が欠ける所です。
総評★★★★☆
個々の項目よりも総評の評価が高いというのは初めてのパターンかも?つまり、まずはこのクルマをいち早く市場に送り出した三菱の意欲にプラス★です。
4駆でSUVという夢のあるジャンルにPHVを持ち込み新たなクルマの使い方を提案した事などに対する評価です。
またベースがいい事もありますが、クルマの出来はかなりいいです。
プリウスPHVよりも明らかに乗り味がいい。特に乗り心地は違いが大きく、これなら長距離でも疲れは無さそうです。
いざとなれば7人乗れると言うのも心強いです。
もちろん普通に充電なしで乗ってもいいですが、充電時間も短くバッテリー容量も大きいので、もし自宅に充電設備を用意できればほぼガソリン台無しのカーライフなんて事も可能です。
価格も同じグレードで約80万以上高くなっていますが、これについては、経済産業省の「クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金(上限43万円)」が適用されることを前提に試算した場合、実質的な負担額が「E」で 300 万円以下、「G」で約 320 万円からとなるなど40-50万ほどの差となります。
これなら3年乗れば燃費とリセールバリューで取り返せるのではないでしょうか?
またガソリン代がかからないと言う意味ではもちろんリーフなどもそうですが、前書きに書いたとおりリーフはまだまだ実用と言うには少し航続距離が足りません。
だいたい距離を走らないと元が取れないのですからリーフはその辺りに矛盾を抱えます。
となると使い倒せるEVという意味ではプリウスPHVとこれですが、クルマ好きの選択肢としてはつまりこちらしかないですよね。
全長×全幅×全高=4655×1800×1680mm/ホイールベース=2670mm/車重=1820kg/駆動方式=4WD/2リッター直4SOHC16バルブ(118ps/4500rpm、19.0kgm/4500rpm)/燃費(プラグインハイブリッド:67km/リッター、ハイブリッド=18.6km/リッター(JC08モード)/価格=429.7万円
(※この記事は2013年1月に書いたものです。有料版の記事の一部を加筆訂正し約1年遅れで配信しています。)