運転の楽しい小型実用車
207が出て久しいですが、206の小粒で粋なスタイルにまだまだ惹かれている人も多いのではないでしょうか?ボクもその一人です。
そこでちょっと懐かしい206SWを借りることが出来ましたのでレポートしてみます。
新車で200万円を超えていた価格も今や100万ほどでゴロゴロしています。
実用的でお洒落で愉しいクルマを探している人にはちょっと気になる存在になってきました。
●概要
SWは2002年のデビューです。
ヨーロッパの小型車は実用的なクルマが多いですが、特にフランスは古くから実用車を得意としてきましたね。
206というと、オープンのCCやスポーティーなS16 などをイメージしますが、このSWも決してそれらに負けない価値と魅力のあるモデルです。
このサイズで実用的なワゴン・ボディを持つクルマは日本でもとても使いやすいと思います。
成功作となった206のホイールベースをそのままに、リアのオーバーハングを19cm伸ばしラゲッジを拡大したモデルです。
スタイル★★★★
スタイルは大好きです。
キュートな206のスタイルのバランスを、このSWはいささかも崩していませんから。
俊敏な子猫がイタチになった程度の違いで、愛らしさは変わりません。
決してうなぎイヌにはなってはいませんよね?
それは凝ったリアのテールランプの処理や、シークレットタイプのヒンジの処理、はたまたエッセンシャルなボンネットのエアアウトレットなど、細かな演出と気使いの成果です。
内装★★★
インテリアも日本の小型車と違って、子供っぽくないのがいい感じですね。
ダッシュの豊かな丸みと抑揚が小型車にありがちなスペース重視の単調さを抑え、エモーショナルな感覚を呼び起こしてくれます。
リアにはもちろんガラスハッチも与えられています。
こうした小型ワゴンは、小さな荷物をいかに気軽に積みこめるかという事も生活を共にする上ではポイントです。
ちょっとした買い物に、重くて場所をとるハッチを開けずにすむガラスハッチはとても便利ですから。
エンジン★★★
エンジンは1,6リッター109ps。
マニュアルで楽しめる2リッター137psもあるりますが、パワーは1,6でも十分。
シーケンシャルシフトを備えるATとのマッチングもフランス車としてはいいですね。
ただしエンジン音は不快ではないですが、国産と比べると少し大きいので、その辺りを気にする方には向きません。
足回り★★★★
日本にもこうしたサイズの便利なワゴンはありますが、一番の違いはその足回りです。
とにかく安定感がまるで違います。とれびあーん!!それはボクには天と地ほどの違いに感じます。
乗り心地はいわゆるプジョーの猫足を想像すると固く感じます。
ワゴンゆえリアサスが強化されていますから、「スタイル」のようなソフトさはありません。横置きトーションバーを使ったトレーリングアームはそのままに、太いパイプのクロスビームが左右独立して追加されているのです。
これは、小さなボディゆえ、重量物を搭載した時のボトムを考え、ある程度固くせざる負えないということでしょう。
それでも実にしっかりとした芯のようなものの存在を感じる爽やかで快適な乗り心地です。
国産と比べるとロードノイズが大きいのも欠点ですが、細かな揺れは本当に少ないです。
このハンドリングと乗り心地の素晴らしさは、いまだ日本車が遠く及ぶところではありません。
また、プジョーのようにFFレイアウトのクルマはフロントの接地性が要です。ステアリングとトラクションの両方を担いますから。しかも、このワゴンのようにどうしてもリアの荷重が重くなる場合、攻め込んでいくとフロントのトラクションが抜けることが多いのですが、このクルマはステアリングが実にしっかりとしています。
とにかくハンドルだけ握ってステアしてやれば、後はしっかりとしたリアがどこまでも付いてくるという感じです。
例えばそれは交差点を一つ曲がる時でさえ、感動できます。
信号が黄色になって、結構なスピードで交差点に突っ込んでしまっても、余裕のあるストロークと、意外なほどのロール剛性によって「アレッ」と、意表をつかれるほどにすんなりと回ってしまいます。
同乗者や荷物にも負担は軽い感じの回り方です。206特有のニュートラルなステア特性はこのSWにも活きています。
軽いボディとしっかりとした足回りゆえのポテンシャルの高さでしょう。
直進性もいいので、まるでもっと大きくて重いクルマに乗っているように安心感も高いです。
総合評価★★★★
とにかく、運転が楽しいのがこの実用ワゴン206SWの特長ですね。
このステアリングの充実度は国産では決して味わえませんから。
そうそう、でもステアリングの皮の質は良くないね。
安物で滑ります。
合成かと思ったほどです。
でも、ステアリング・フィールはそんなことさえ忘れさせるほど正確で濃いものです。
ボディ剛性は今では決して高くはありませんが、それを補ってあまりあるサスペンションと取り付け剛性の高さです。
そしてステアリングの剛性感の出し方など、流石は世界最古の自動車メーカーだと思わせますね。安いクルマなりにツボを抑えている感じに老舗の力量を感じます。
結論:「このクルマには老舗の美味しい洋食屋のような楽しさと味わい深さがあります」。とれびあーん。