冬こそオープンカーです。
夏の日差しはどうにもなりませんが、冬なら防寒着を着てサイドウインドウを立てヒーターをかければ大丈夫。
最新のオープンカーは風の巻き込みも少なく快適、露天風呂です。
洒落たキャップとドライビング・グローブできめれば、街はステージです。
隣に美女でもはべらせればもう完璧。
Sクラスに乗るよりよほど羨望のまなざしを集めること必至です。
今回は馴染みのディーラーからZ4を借りましたのでご報告です。
●概要
Z4のデビューは2002年のパリサロンでした。
もともと1995年デビューのZ3ロードスターの後継ですが、サイズはZ3と比べて全長で50mm、全幅で40mm、全高で5mmそれぞれ大きく、4100×1780×1285mmとなり、より上級にシフトしたモデルです。
ライバルとなるクルマは、アウディ・TTロードスターやポルシェ・ボクスター、メルセデスベンツSLKなどですが、サイズアップでそれらとも拮抗するディメンションとなりました。
2006年4月には、エンジンと内外装がマイナーチェンジされました。
エンジンの種類は2.5i(177ps)と3.0i(265ps)の2種の他、スペシャルモデルとして3.2(343ps)のMシリーズをラインナップ。
この結果、従来のベーシックグレードであった2.2i(170ps)はカタログから消え、この2.5iがシリーズのボトムを担うことになりました。
トランスミッションも5段ATから6段ATにグレードアップ。
この2.5iはソフトトップは電動が標準となって、価格も3.0iよりも151万円も安い439万円です。
スタイリング★★★★★
4100mmというその全長の割りに、伸びやかで大きく見えるデザインは、エッジを効かせた現代的なものです。
丸みを帯び、懐古的なデザインだった旧Z3とは対照的で、7シリーズに端を発したクリス・バングル率いる新生BMWそのものの印象ですね。
ディテールも実は随分と凝っています。
フロント・フェンダーのエンブレムをクロスするZ字のキャラクターラインや、凹面処理されたドア、ワイド&ローを印象付けるフロントグリルなどは、セダンラインとは違うスポーツカーならではのプレゼンスでしょう。
しかし、全体のプロポーション自体は、ロングノーズ&ショートデッキの典型で、このあたりはモダンなTTやSLKとは対照的な感じです。
長いストレート6をフロントに搭載するBMWの特徴がよく現れている部分だと思います。
この古典的なスタイルはキャンバス地のソフトトップとも良く似合っていて、とても軽快でカジュアルな印象を感じさせてくれます。
単なる走りに特化した男性的なクルマではなく、’’ちょっと買い物に’’といった使い方も様になる秀逸なデザインです。
シルバーのアクセントで横基調を強調する手法は、ここも新生BMWの文法通りのデザインです。
大きなマスを感じさせるダッシュボードは、オープン・スポーツに安心感と開放感の絶妙のバランスをもたらすポイントです。
一方、メーターには丸いフードが与えられるなど、随所に古典的なモチーフも感じられます。
外観同様、ここでもモダンと古典の巧みな対比がZ4を大人のプレミアムに仕立てているのが分かります。
シートはMモデルと異なり、比較的フラットな形状で、サポートはそれほどでもないのですが、クルマの性格からするとこの広々感の方が嬉しいですね。
このクルマの特徴とも言えるオープン時の抜群の開放感は、この視覚的にフラットなダッシュとともにこのルーズな姿勢を許容するシートも一役かっているのです。
リアに追加されたディフレクターも効果的で、サイドウィンドウを立てれば高速でも風の巻き込みは最小です。
アイドリングで実に静かなエンジンは、しかしひとたびスロットルに足をやるとずいぶん勇ましい排気音に驚かされることになります。
確かにムードを楽しむクルマですが、ちょっと演出過多の気がしないでも・・・。
回転はシルキー6の名に恥じぬスムーズなもので、一切のストレスなくフケ上がります。
動力性能の 不満はありません。ただし、その場合盛大な排気音に打ち消されて精緻なエンジンサウンドを楽しめないのはもったいない気も・・・。
6段となったATは実にスムーズで、効率のいい加速を展開します。
街中では2速発進となることもスムーズな走りに寄与している要因でしょう。
またスロットルの重さもバランスが取れていて、フィーリング上はまったくパワー不足を感じることはありません。
むしろデットスムーズな高回転を多用して楽しめば3.0よりもスポーティーな感すらあります。
ただし、その場合はステアリングパドルを持つSMGが欲しくなります。BMWのマニュアルモードは手前に引くとアップ、押してダウンというパターンで、Gの感覚と合っているのは流石ですが、やはりどうせフロアのシフトまで手を伸ばすならMTの方がリズムがつかみやすいと思ってしまいます。
せっかくシーケンシャル・シフトとするならステアリングから手を離さずに、指先でポンポンとモダンにいきたいところです。
今回のマイナーチェンジのトピックは、なんといっても一段と乗り心地がよくなった事でしょう。
いまやBMWはランフラットタイヤ(パンクしても少しの距離なら自走できるタイヤ)を完全にモノにしたようで、その特長的な硬さを感じさせない出来となっています。
乗った瞬間に感じられる、スムーズでフラットな感触はよく出来たドイツ車に接する歓びそのものです。
ボディ剛性も十分で、例えばホンダのS2000のようにガチガチに硬すぎる感じもなく、どこかバランスよく逃げがあるようにも感じます。
この絶妙なバランス、この快適な乗り心地がこのクルマを単なるスポーツカーではなく、上質で多様な楽しみを与えてくれる大人のクルマにしている所以です。
ハンドリングも理想的な重量バランスにこだわるBMWそのものの心地よさです。
例えば、普通の速度で交差点を曲がる時でさえ、そのニュートラルなステア特性に感心させられるのです。
そして、セダンとの違いはその軽快感でしょう。
低い重心によるヒラヒラ感とロールの収束の速さ。
このハンドリングはやはりスポーツカーならではの愉しみです。
例えば「重いコートを脱ぎ捨て駆け出す少年のような軽快感」があるのです。
また、リアアクスル付近に座るディメンションによって、リアタイヤの動きがお尻にダイレクトに伝わるのもセダンとの違いですね。
セダン同様、豊富なインフォメーションを伝えるパワステを凌ぐ情報をZ4はそのシートから伝えてくれるます。
コーナーの出口でステアリングを切り込み、スロットルを開けるとリアタイヤがズリズリと滑りだしますが、それが接地感を伴ってゆっくり訪れるのでまるで怖さがないのです。
セミトレ時代のBMWの様にポンポン跳ねたり、キャンバー変化によって限界時に一瞬でスッと接地が抜けてしまうなんてことはもちろんありません。
最初にこのZ4 2.5iを見た時、白のボディカラーがよく似合っていると思いました。
今回のマイナーでウインカーがクリアになったのもすっきり感を高めています。
2.5iというのも気分的にラクです。
BMWとしては異例なほど、気軽に付き合えそうなキャラがそう感じさせるのか、まるで初秋の風のように清々しく感じたものです。
結論:上質なオープン・スポーツとして、実にバランスの良さを感じる。
都会でカジュアルにサラリと乗りこなすのがこれほどサマになる
オープン・スポーツもなかなか珍しいのでは?セカンドカーにもお勧めの一台です。