空飛ぶレンガ
ようやく暖かくなってきたので、山に行ってきました!
山といっても「スポーツカーでワインディングを攻めに」ではなく、今回はちょっと古いSUVでキャンプです。
たまには、のんびり景色でも眺めながら「ゆるゆる」と走るのも楽しいものです。
そして今や2世代前のこのチェロキーに意外な楽しさも発見しました。
●概要
初代は74年デビュー、このXJ型は83年のデビューです。
97年にはボディ剛性のアップ、ステアリングの改良など大幅なマイナーが行われました。
2001年に新型にバトンタッチされるまで18年も作られ、日本でも人気を博したモデルです。
今でもチェロキーと言えば丸目の新型よりもこの四角いボディを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?
スタイル★★★★★
83年のデビューということを考えると5つ★しかないでしょう?
サイズは4255×1765×1650mmと今やカローラよりも短く、アイポイントの高さ、四角いボディの見切りの良さともあいまってとても運転がしやすいのが特徴です。
昔のクルマらしくAピラー、サイドウインドウともに立っているので、このサイズのクルマとしては車内はとてもゆったりとしていて開放感に溢れています。
これほど実用性の高いボディとともに、商業的にもブランディングに成功したグッドデザインと言えるでしょう。
内装★★★★
この「リミテッド」は革張りですが、「スポーツ」のファブリックもとてもシンプルでセンスのいいものでした。
アメ車にありがちなデコラティブなギミックはどこにもなく、しかし豊かな暖かさも感じるものです。
シートは実にソフトでクッションストロークが深く、それだけでゆったりした気分にさせてくれます。
↓リアシートもフラットで快適です。ヘッドレストは外されていましたがもちろん標準です。
↓マイナーで外に背負っていたスペアタイヤはラゲッジに縦置きされました。確かにスペース的には不利ですが、洗車がラク、タイヤが紫外線にやられない、リアゲートの開閉がラクなどのメリットがあります。
エンジン★★★
直6、3リッターで190馬力です。超低速タイプで3000回転も回せば「ゴー」っと唸り、不満を訴えますが、ボディが軽いためその頃には十分スピードに乗っています。
とにかく低速での迫力はアメリカンSUVの期待にたがわぬものです。
ちなみに新型はV6、3.7リッターにサイズダウンされ、車重も300キロほど重くなっていますので、特に低速での豪快な加速はこのXJ型の持ち味といえるでしょう。
足回り★★★★
悪路走破性を重視した設計の前後リジットの足回りは独特の動きをします。
普通のインディペンデントと違い、オンではギャップで「ウニウニ」とした関連懸架特有の揺れがありますが、これはこれで楽しいものです。
コーナーでも1650mmというSUVとしては低い車高(新型は1820mm)は、意外なほどのスピードと安定感を与えてくれます。限界が低いこともあってどんな場面でもコントローラブルで、安心していられます。
攻めていくと最終的には外側に「ダー」っと膨らみますがそれが唐突でなく、しかも平行移動的に流れるので怖くありませんしアクセルを緩めればすぐに止まります。
さらに楽しいのが、街中の直線をクルーズする時です。信号GPのスタートダッシュは得意です。
ソフトで長いストロークを利して、多少のギャップは無視して突っ込んでも車体はフラットです。
大きなギャップでバウンジングするその時でさえ車内は平和で、ゆったりとしたそのリズムは楽しくさえあります。
このスピードと走破能力はボルボではありませんが、フライング・ブロック「空飛ぶレンガ」です。
聞けばこのクルマはジープがクライスラーになる前のAMC(アメリカン・モーターズ・コーポレーション)時代の設計で、当時のAMCはルノーと関係が深かったことから実際に指揮にあたったのはルノーのスポーツ部門(ルノー・スポール)のフランソワ・カスタンという人物だったそうです。
F-1の指揮も取っていたという人物だけあって、こんなSUVにもスポーツ心の注入を忘れなかったようです。
↓この個体はご覧のように走行12万キロを超えていましたが、ボディはミシリともいいませんでした。多少の乗降性を犠牲にしてもサイドシルを高く取った設計が利いています。
総合評価★★★★
たまにこういう古くて楽しいクルマに乗るとクルマの進化って何なのか?と思うことがあります。
チェロキーは新型にももちろん乗ったことがありますが、このXJほどの魅力は無いように思います。
それはよく出来た国産のSUVにも似た乗り味でした。良くなりすぎているのかもしれません?
エンジンは静かになり「シューン」と上まで回りますが、線が細くなった感じは否めません。
オンを重視して独立式になったサスペンションも揺れは少なくなりましたが、低速でも楽しめる大袈裟なアトラクション感はなくなりました。
そしてスタイリングもいまだに馴染めません。
このチェロキーのようにちょっと古いクルマをコツコツ直し、いたわりながら乗るのも楽しいクルマとの付き合い方だと思います。