普段使い出来るスーパースポーツ!
↑フロントから見る限りフェンダーの張り出し以外はノーマルとさほど変わりません。この控えめなところも魅力ですね。
C63AMGのクーペは2011年8月のデビューです。
AMGの中でも最後の大排気量自然吸気ユニットとして天然記念物的にもてはやされている6.2L、M156型ユニットを搭載したクルマですね。
燃費の問題から他のAMGが軒並みダウンサイジング?ターボ化している中、最後まで生き残っている1台です。
またAMGが1から設計した初のエンジンとしても貴重ですね。
今買っておけばプレミアが付いて値下がりしないかも的なコレクターズアイテム物件です。
スタイル★★★★
Cのクーペってなかなか端正でバランスのいいスタイルですね。
ノーマル比ではかなりワイドな前後のフェンダー(特にフロント)やリアの4本出しマフラーなどが特徴です。
試乗した黒はチョイ悪な感じがあまり好みではありませんが、プロポーション自体はサイズの割りに綺麗にまとまっていると思います。
腰高な感じのセダンよりもやっぱりクーペの方が純粋にかっこいいと思います。
また流石のAMGだけあって高級感・存在感もたっぷりです。
ノーマルのCとは明らかに違う重厚感や圧力があります。
オプションのパフォーマンスパッケージ装着車はホイールが19インチになりリアにカーボンのリップスポイラーが付く事でも見分けられます。
内装★★★★
ここもAMG専用のメーターが与えられるなど、その濃密な時間の演出には事欠きません。
ステアリングも小径の専用品でシートはナッパレザーのスポーツシートです。
しかしそこはメルセデスですからアウディのRSやBMWのM3ほどタイトではなく、街乗りでもさほど不便は感じません。
いいのは、まあこれはノーマル同様ですが、建付けが圧倒的にしっかりとしていて荒れた路面をハイスピードで突破してもミシリとも言わないところです。
このあたりは体感的にはボディ剛性と課それ以上の効果を発揮しますから、他のメーカーももっとこだわって欲しい部分です。
この内装のしっかり感だけで随分高級な印象になります。
↑一方リアは4本出しのマフラーとエンブレムですぐにAMGであることが分かります。
エンジン・ミッション★★★★☆
このボディにV8、6.2Lのキャパは過剰以外の何者でもありません。
しかし、このクルマが支持されているのは全開にさえしなければ初心者でも街乗りで普通に乗れてしまう扱いやすさです。
スタートはC(コンフォート)では2速発信となるため予想以上に穏やかです。
そしてそれはモードを切り替えても基本的には同じです。
7段ATをS(スポーツモード)にすると確かにレスポンスはダイレクトになり、音も凄みを増しますが、決して最後の一線を越えることはありません。
つまりガツンとくるシフトショックやスタート時のドライバーの意に反した予期せぬ過激なGなどは間違ってもやってきません。
ドライバーが常識的なアクセル開度を保つ限り高級車然としたマナーを保ちます。
このあたりは私のアウディS8よりも遥かに扱いやすいといえます。
S8はノーマルモードでも1速のギアリングが低くスタート時にはアクセル開度に気をつけなくてはいけません。
特にパッセンジャーがいる時には並みのクルマの半分ほどの速度でアクセルを空けてゆかねばならず気を遣います。
普通に空けるとパッセンジャーの首はガクガクになります。
その点このC63AMGのスタートは基本2速発進となるなど遥かにマナーがいいです。
このあたりはメルセデス・ベンツの伝統をよく守っているといえます。
ただ、アクセルを全開にした場合はもちろん6.3のパワーが炸裂するわけですから初心者が冷静でいられるはずはありません。
それまでが穏やかであっただけに逆にその反動は大きく、地鳴りのように轟くサウンド供に訪れる強引なまでの加速はアクセルを踏み続けることを躊躇させずにいられません。
ちなみに音はM3ほどレーシーでもダイレクトでもありませんが、低速では大排気量特有のゴロゴロとした重低音を響かせます。
さらに高負荷になると地鳴りのような豪快なものになります。
AMGスピードシフトMCT 7スピード・スポーツ・トランスミッションのシフトダウンは完璧で綺麗な中ブカシを入れますからスムーズで気持ちのいいドライブとなります。
従来のC63AMGはトルコンでツインクラッチのライバルに対して明らかに劣っていましたが、今回から湿式多段クラッチを採用しよりダイレクトになりツインクラッチのスポーツ性とトルコンのスムーズさのちょうどいいとこ取りのようなミッションになりました。
これもこのクルマのキャラにあっていると思います。
試乗時は雨が降っていたこともあって直線でもホイールスピンを誘発し、何度もESPの介入を知らせるランプが点滅しました。
しかし一定以上のドライバーにとって扱いやすいのはターボと違ったNAならではのフラットなトルク特性です。
ターボの場合は予期せぬ急激なトルクの立ち上がりがコントロールを難しくします。特にコーナリング中の場合は命取りになりかねませんから、横方向のグリップを保ちつつの推進力を得るのは至難の業です。
ところがこのC63AMGは細かなコントロールが容易です。
例えばあと50ps欲しい時はその開度をピタリとそして気持ちよく引き出して走ることが出来ます。
こうした走りの自由度こそが大排気量NAの醍醐味でしょう。AMG最後のNAがもてはやされる訳です。
足回り★★★★
まずもって見事なのは一切の直接的なショックを伝えないことです。
これはノーマルのCクラスよりも明らかに上で高級なものです。
強化された強靭なボディはどんな悪路をハイスピードで通過しても音をあげません。
このあたりは高価な部品を手間暇かけて組み上げられたスペシャルモデルだけに許された領域です。
ただしハンドリングはM3にあるコツコツとした硬さはさない代わりにフラット感やハンドリングのダイレクト感は物足りないかもしれません。
まあそこらはオプションのパフォーマンスパッケージを選べば解決するのですが。
総評★★★★
M3ほどのシャープな切れ味も無く(限定のブラックシリーズ、パフォーマンスパッケージのオプション搭載車を除く)RSほどのスタビリティもありませんが、C63AMGには古典的で豪快なサウンドと扱いやすさがあります。もちろんアクセルを全開にすれば世界第一級のスピードを得ることも可能です。
この古典的でロマンティックな走りこそC63AMGの特徴でしょう。
ずばりこのC63AMGとM3、RS4、IS-Fならばどれを選ぶか?この問いにはスポーツ派ならM3、理論派ならRS4、実用的でロマンティック&オールマイティならC63AMGが答えです。
私ならRS4は新型待ちとして、今選ぶならM3(こちらも新型も出ますが現行で十分)ですが、1台しか持てないならパフォーマンスパッケージプラス(125万アップ)のオプションを前提にC63AMGを選びます。IS-Fは価格が半額ならアリかなという程度。
とにかく久々に乗ったC63AMGはやはり乗りやすいスーパースポーツでした。
確かにスポーツカーとしてのシャープな切れ味や楽しさダイレクトなフィールという点ではM3に及びませんが、日常の使い勝手やなにやら豪快な凄みのようなものはAMGが上です。
このあたりは好みの分かれるところでしょう。AMGが世界的に販売が好調な理由は超弩級のスーパースポーツでありながら、このほぼ完璧な日常性を持っているからです。
スポーツドライブの好きな人はこれ1台でかなり満足できると思います。
スペック: 全長×全幅×全高=4710×1795×1390mm/ホイールベース=2765mm/車重=1800kg/駆動方式=FR/6.2リッターV8DOHC32バルブ(487ps/6800rpm、61.2kgm/5000rpm)/価格=1085万円
(※この記事は2012年7月に書いたものです。有料版の記事の一部を加筆訂正し約1年遅れで配信しています。)