ミニバンの無印良品
代車でC-MAXを借りる機会があったので報告します。
ベースのフォーカスは以前に乗ったことがあって随分しっかりした走りで驚いた記憶があるので楽しみです。
このクルマのデビューは2006年5月です。
前年にデビューした2代目となるフォードのベストセラー「フォーカス」の車高を95mm高くしたミニバンです。
「C-MAX」という名前の由来はComfort(快適性)、Confidence(信頼性)、Control(操作性)といった要素を最高レベル=Maximumにまとめました、という意味だそうです。
ただ、個人的には3つの要素で「MAX」(最高)と言うにはちょっと、いやあかなり無理があると思います。
このクラスの中で‘’トータルバランスの最適化を目指しました‘’ぐらいの感覚で捉えてもらった方がいいかもです。
まあ、そのぐらいの期待値で見れば確かにこのクルマは目的を達していると思いました。
スタイリング★★
シンプルを絵に書いたようなワンモーションフォルムです。ベースのフォーカスもそうですが、初代のフォーカスが持っていたフレッシュさやエモーショナルな感覚はもはや感じられません。
サイズは全長4330×全幅1825×全高1580mm、ホイールベース2640mmで、全福が広いことが特徴です。
これは2005年にデビューしたフォーカスの時にも議論になりましたが、やはり日本ではもう少し幅が狭い方が使いやすいと思います(それでもフォーカスよりは15mm詰められていますが)。
メーカーは‘’ドアミラーの張り出しを工夫して実質的には旧型とさほど変わらない使いやすさ‘’と言うことですが、やはり同クラスのライバルよりは10cm近く広い感じです。
ちなみに、緑の芝とコーディネートしたボディカラーは「サプライム」というカラーです。アメ車だからといってサブプライムではありません。
内装はグレーで何の洒落っ気もありません。
この辺りは国産車やゴルフのスタンダードモデルのような感じで、「MUJI」や「ユニクロ」のフリースと思えば納得もいくかも。
しかし、インテリアの素材はすべて「アレルギーフリー」のものが使用されています。
厳しいことで知られるドイツの認証機関「TUV(テュフ)」の認定を受けているのです。
また、高性能な花粉フィルターを装備するなど、車内の環境にはとても気を使っているので、赤ちゃんやアレルギーに敏感な方には高ポイントですね。
リアシートのアレンジも特徴的です。中央席の座面を跳ね上げ、左右の席をそれぞれ中央側に60mm寄せ、さらに後方に100mm下げることで、本来3人分の空間を2人でゆったり使うことができる設計になっています。
このあたりは3列シートにして、いっぱい人を詰め込もうという国産車と違い、ゆったりとしたスペースを更に贅沢に使おうという発想です。
まあ、その割には贅沢な演出が皆無なんですけどね。
エンジンは2リッター、145馬力で特筆する部分のない実用エンジンです。
フォーカスに比べ、100kgほど重くなっているボディを、それでも太い低速トルクで不満なく走らせてくれます。
一方、ミッションは4速ATですから5速6速が当たり前になった現代では、少し物足りない感じですね。
引いてアップ、押してダウンという操作性のいいシーケンシャル・シフトも付いていますが、4段ではなかなか出番がないのが辛いところです。
サスペンション★★★
このクルマの特長がココでしょう。
乗り心地とハンドリングの良さはベースとなるフォーカスでも定評のあるところですが、95mm車高の高いC-MAXにもそれは当てはまります。
がっちりとした感触のボディと、大入力にも強い懐の深い乗り心地は、日本車ではなかなか得られない特性ですね。
発進やブレーキング時にも姿勢変化が少なく、気持ちよくドライブできます。
ステアリングも非常に正確で、不安要素となる遊びや、逆にシャープすぎて怖いといった嫌な唐突さは一切ありません。
目の詰まった上質感のある自然なハンドリングです。
つまり、このクルマの使い倒したくなるキャラは、飾り気のないスタイリングや実用的な特性のエンジンと共に、このしっかりとしたサスペンションとステアリングからくる骨太の乗り味から感じられるものなのでしょう。
もちろん、厳密に比べれば、フォーカスよりもブレーキング時の安心感やコントロール性、ハンドリングの愉しさといった部分は譲りますが、その分はスペースでカバーですね。
輸入車なのに目立たないプレーンなスタイリングと、輸入車ならではのしっかりとした走りを持つC-MAX。
なかなかユーザーの顔が見えてこない匿名キャラですが、それだけにエコライフを実践している人や、華美なスタイルを好まない人にはいいのでは?
耐久性を含め、基本は非常にしっかりしているので、無印良品的にガンガン使える真の実用車です。
高価なクルマと違い、どこへでも気軽に乗っていけそうです。多少汚れたり、凹んでも気にならない感じも好感が持てますね。
こんな健康的な実用車でアンダーステイトメントの美学を気取ってみるというのもいいかも?