楽しさではM3に劣るけど?”
早いものでA5が出てもう6年になるのですね。
このS5も当初は4.2リッターV8DOHC32バルブ(354ps/7000rpm、44.9kgm/3500rpm)を搭載していましたが、マイナーで3リッター6DOHC24バルブスーバーチャージャー付き(333ps/5500-6500rpm、44.9kgm/2900-5300rpm)に変更されました。
今回試乗したのは5ドアのスポーツバックです。
スタイル★★★☆
デザイナーは有名な日本人のワダサトシさんですね。
やはりクーペの方がバランスが良くてカッコいいと思います。
クーペは流麗なラインと端正さを併せ持つ実に美しいデザインだと思います。
このスポーツバックはホイールベースがクーペより60mm長くなります。
こちらはちょっと胴長な印象になり、少しスポーティーさを損なっています。
しかしフォルムは綺麗ですね。
クーペもですが前後のフェンダーをなだらかに繋ぐラインが他のモデルとの違いです。
サイドのラインにこうした起伏を入れるのは他のアウディではありません。
A5/S5がちょっとクラシカルでエレガントに感じるのはこの曲線的なラインによるものです。
全長×全幅×全高=4730×1855×1390mm/ホイールベース=2810mmと言うサイズも実用的です。
ちょっと残念なのはインパネやシートなど全てのデザインがオーソドックスに過ぎないかということです。
アウディ全般にそうなのですが、そろそろ飽きてきた感じです。
それでも質感が高いのでちゃんとクラシックとして成立しているのは大したものなのですが。
内装★★★☆
内装の品質感はアウディの得意とするところです。
もちろんこのS5にもそれは当てはまります。
シートは他のモデルと違ってサポートの深いものとなっているので、ちょっと乗り降りには不利です。
試乗車は左ハンドルだったので問題ありませんでしたが、右のS5はアウディの常でフロアトンネルの張り出しが大きく左足が窮屈です。
まあSトロなのでさほど問題は無いと思いますが。
リアシートはホイールベースの延長が効いてレッグスペースは十分です。
ヘッドクリアランスもミニマムではありますが問題ありません。
ちょっと残念なのはインパネやシートなど全てのデザインがオーソドックスに過ぎないかということです。
アウディ全般にそうなのですが、そろそろ飽きてきた感じです。
それでも質感が高いのでちゃんとクラシックとして成立しているのは大したものなのですが。
エンジン・ミッション★★★★
アイドリング時のエンジンはとても静かですね。
排気音の演出の方が気になります。ちょっと低い音ですね。
スーパーチャージャーの音はまったくありません。
しかし回してもM3のように突き抜ける感もありません。
音はV8のNA時代の方が良かったですね。
より高回転型で回せば乾いたスポーティーな音が鳴りましたが、このV6はちょっと演出された人工的な感じがあります。
ダイナミックモードではコーナーのアプローチで強めにブレーキングすると自動でシフトダウンしてブリッピングしてくれます。
中ブカシも綺麗に決まります。
またフルストロットルからフッっと負荷を抜いてやると「ボボボッ」っとバックファイアー気味の音がしたり、なかなか頑張ってはいます。
しかしマグロでは無いですがやはり天然ものには敵わないということで。
トルク特性も中速重視のタイプですね。
アウディ ドライブセレクトをダイナミックにしてやりスロットルを深く踏み込むと7速の Sトロニックトランスミッションが間髪入れずにキックダウンして迫力のある排気音と共にスーパーチャージャー特有のトルクフルでリニアな加速をみせます。
44.9kgmと言う強力なトルクを2900-5300rpmという広い領域で発生するのであらゆる場面で自在の加速を展開します。
ただやはりトップエンドへの高揚感がないは残念です。
ただパワートレインのマナーも完璧でスタートのスムーズさもいいですし、アイドリングストップも国産車並にスムーズです。
特にSトロの素早いシフトアップは相変わらず見事です。
ストンストンと綺麗に回転が落ちてゆく様は圧倒的な機械的洗練の素晴らしさを感じさせてくれます。
このタコメーターの動きを見ると全てのトルコンATがなんともダルに感じます。
足回り★★★★
乗り心地は乗用車的に快適です。
つまり直接的なショックは一切ありません。
路面との間にラバーを張ったと言うか、湿った系の乗り味ですね。
しかし、ここもM3のような軽快さやソリッドな感じはありません。
好みもありますがスポーツ系のクルマとしてどちらが好ましいかと言えばスッキリしたM3の乗り心地でしょう。
ステアリングフィールも同じです。
S5はギア比可変ステアリングのせいもあって、ここもシュアなM3と比べるとやや人工的なステアリングフィールです。
特に直進の出し方はアシストがはっきりと伝わるほどです。
ハンドリングは扱いやすいですね。アウディドライブセレクトを「AUTO」や「COMFORT」から「DYNAMIC」に切り換えると、ステアリングも少し重めで且つしっとりとした手応えになります。
足は俄然剛性感を増します。
限界は驚くほど高く、ミシュランのパイロットスポーツはかのステアリングからでさえ限界も良く伝えます。
ステア特性は優れた重量配分からかなりの次元までニュートラルです。
駆動力は基本F:40 R:60ですから踏み込めばリアが張り出す感じもありますし、ターンインの仕方でノーズをインに向けることも容易いです。
もちろんクーペよりもホイールベースが60mm長く車重も60kg重いことがネガになっていないと言えば嘘になりますが、それはかなり高い次元での話です。
総評★★★★
一般道でバトルをすればこのクルマに勝るクルマは多くないです。
それは相手がM3もそうです。しかしクアトロの安定感に勝るものはありません。
低中速型のエンジン特性も有利でしょう。
ただ気持ち良さという点ではM3に分があります。
M3は高回転まで吹け上がる気持ちのいいエンジンとソリッドなステアリング&シャーシがあります。
まあM3に対してはRS5を持ってこないと不公平になるでしょう。
RS5なら好みの問題の範囲になります。エンジンはNAのV8 4.2となり、より高回転型でシャープなユニットになります。
安定志向のシャーシはS5と同じですが、アベレージドライバーにとってクアトロの安定性は絶大なアドバンテージです。
そう考えるとM3よりかなり相場の安いNAのV8 4.2を積んだ中古のS5は狙い目かもしれません。
今のS5(特にスポーツバック)はスポーツカーというより、スポーティーな高速実用車ですね。正直言ってS5を返却して自分のS8に乗り換えた瞬間、やっぱりこっちの方が楽しいなと思いました。
それはアルミの相対的に軽いボディだったり、NAの軽い吹け上がりだったり自然なステアリングだったり・・と言う事です。
S5に乗る前はなかなか絶妙なサイズ感にちょっと浮気心が起こったらどうしようかと思ったものですがどうやら杞憂に終わったようです。
S5スポーツバック:全長×全幅×全高=4730×1855×1390mm/ホイールベース=2810mm/車重=1830kg/駆動方式=4WD/3リッターV6DOHC24バルブスーバーチャージャー付き333ps/5500-6500rpm、44.9kgm/2900-5300rpm)/価格=872万円
(※この記事は2013年1月に書いたものです。有料版の記事の一部を加筆訂正し約1年遅れで配信しています。)