中身はいいのに内外装に魅力が・・
フィットのセダンというかシビックが2010年12月に消えて以来、5ナンバーサイズのセダンを持っていなかったホンダが、4年ぶりに投入する新型セダンです。
カローラのライバルというポジション、あわよくばプリウスの層も食ってしまおうというクルマですね。
海外では「シティ」として中国、インド、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナムなどアジアを中心に55カ国で販売されているグローバルモデルですが、国内ではハイブリッド専用車として色々とモディファイされています。
本来なら、2014年の春ごろに発売する予定だったモデルですが、「フィット ハイブリッド」の度重なるリコールで、発売前の新型車の品質再確認に慎重になり、2014年12月のヴェゼル以来、約1年ぶり、満を持しの投入ですね。
ではでは、その熟成の成果やいかに!
乗ってみよう!逝ってみよう^^
スタイル★★★
久々の5ナンバーサイズのセダンです。
ボディーサイズは全長4440×全幅1695×全高1475mmでホイールベースは「フィット」より70mm長い2600mmです。
このサイズでよくあの室内空間を得たなという印象はあります。
流石は昔からMM(メカミニマム・マンマキシマム)を提唱してきたホンダのパッケージングだけの事はあります。
ただスタイルには何の感動もありません。
よくあるホンダというか日本車特有のディテールはちょっとどのクルマか見分けが付きません。
ただフォルムには少し見るべきところがあります。
FCXクラリティを少し彷彿させるというかキャビンの大きさを意識させるフォルムはセダンとしては正しいと思います。
まあFCXほどハイデッキではありませんが、この全長で寸詰まりにならずによくセダンとしてまとめていると思います。
ただ若者には訴えないデザインですね。新鮮味や遊びはありませんから。
内装★★
ここはちょっと、酷いですね。
相変わらずの黒一辺倒で、特にレザー調素材(プライムスムース)とう革に似せた素材はビニールにしか見えません。
これなら上質なファブリックやモケットの方が滑りも冷たさも無く遥かにうれしいです。
第一、革に似せるというコンセプトそのものがおかしいというかいらないと思いますね。
ダッシュボードやドアの内貼りならまだしも本革のオプションがあるのだから標準ではもっと他にいい素材があるだろうにという印象です。
それにデザインがこれまた酷いというか無い。
シートのデザインなどはどこにデザイナーが必要なのか分かりません?
いいのは後席ですね。
プラットフォームはフィットと共通ですが、ホイールベースを70mm延長することで、後席の足元スペースは、2クラス上のアコード ハイブリッドに迫るといいます。確かに足元は広いですね。
ただ頭上はギリギリです。
トランク容量は430リッター(VDA方式)で後席背もたれには60:40の可倒機構が備わわり、これは使いやすいです。
エンジン★★★☆
パワーユニットは1年前に発売されたコンパクトSUVの「ヴェゼル」と同様で、排気量1.5リッターのアトキンソンサイクルエンジンに、モーターを内蔵した7段のDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を組み合わせです。
ホンダの新世代ハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-DCD」で、フィット ハイブリッドとも共通です。
ヴェゼルもふっと・ハイブリッドも試乗済みでこのメルマガでも取り上げていますが今回は少し印象が良かったです。
回すとエンジンの音がスポーティーで良くなっているのです。
これは意外でしたね。
想定するユーザー層からするとこちらの方が高そうですから。
フィットに比べるとこのグレイスは、フロントウィンドウへの遮音ガラスの採用、フロントドアのサイドウィンドウの板厚アップ、遮音材の効果的な配置などで、静粛性を高めています。
重量も70kg程度重たくなっていることもあってか、フィットと比べると全体的にスムーズで高級な印象があります。
フィットで酷評したせっかくのデュアルクラッチらしさが欠けているという点ですが、このくらいスムーズだと、またセダンというキャラクターもあってか気にならなくなります。
CVTと比べはるかに自然に加速するだけで満足しなければいけないかもしれません。
残念なのはモーターブレーキによる回生が入ったり切れたりする感触が一定でなく、減速時に違和感がある点です。これはフィットでも感じられましたが、あまり改善されていません。
燃費は基本的に重いフィットよりも良くなっています。
グレイスの「HYBRID DX」および「HYBRID LX」グレード(FF)のJC08モード燃費は34.4km/リッターで、フィット ハイブリッドの量販グレード(HYBRID・FパッケージおよびLパッケージのFF)の33.6km/リッターです。
転がり抵抗の少ないタイヤと空力特性がフィット ハイブリッドよりも優れているためといいます。
グレイスのグレードの違いは、DXとLXが装着する15インチタイヤは、ヨコハマ・ブルーアースE50で、転がり抵抗の低減タイプでJC08モード燃費は34.4km/Lです。
今回試乗したEXの16インチはダンロップSPスポーツ2030で、乗り心地や走行安定性も含めてトータルバランスを重視したため、車両重量が20~30kg増えることもありますが、JC08モード燃費は31.4km/Lになっています。
足回り★★★
サスペンションもフィットと共通で前輪がストラット式、後輪がトーションビーム式。違いはリアサスのブッシュに液体封入タイプのブッシュを採用し乗り心地を向上させたとの事です。
しかし低速では「コツコツ」とした感触があり、その効果ははっきりと感じられませんでした。
それでも総じて乗り心地の印象が良かったのはさきほどの遮音対策が利いているのと、穏やかな特性のパワートレインの相乗効果でしょうか?
ハンドリングもステアフィールも自然で、少しきびきび感を演出したフィットや背の高いヴェゼルと比べると流石に安心感があります。
特に高速になると安定感ではセダンの優位を感じます。
総評★★★
グレイスの開発の狙いは「上級セダン並みの価値をコンパクトサイズで実現しながら、優れた燃費と取り回し性能も達成すること」。室内の質感、乗り心地、走行性能などでも上級セダン並みを目指したといいます。
確かにかなりの点で目標は達成されたと思います。
小さなサイズで広い室内、優れた燃費と走行性能は認めます。
問題はそんな実力車なのに買いたいという魅力に欠ける事です。
これは何もグレイスだけではなく日本車全体の問題でもあるのですが、そのスタイルや内装にあまりに魅力が無さすぎます。
この価格と性能でフランスやイタリアの小型車のような魅力的な内外装があったら、若者も飛びつくと思います。昨今のホンダのデザイナーの不毛は深刻だと思います。
円安で儲けた資金を全部デザイナーに投入して欲しいぐらいです。
【スペック】HYBRID EXボディーサイズ:全長×全幅×全高=4440×1695×1475mm/ホイールベース:2600mm/車重:1200kg/駆動方式:FF/エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ/モーター:交流同期電動機/トランスミッション:7段AT/エンジン最高出力:110ps(81kW)/6000rpm/エンジン最大トルク:13.7kgm(134Nm)/5000rpm/モーター最高出力:29.5ps(22kW)/1313-2000rpm/モーター最大トルク:16.3kgm(160Nm)/0-1313rpm/タイヤ:(前)185/55R16 83V/(後)185/55R16 83V(ダンロップSP SPORT 2030)/燃費:31.4km/リッター(JC08モード)/価格:221万円