今回はアルピナです。
大阪からはるばる南青山のニコルまで駆けつけました。
乗ったのはディーゼルの「D5 Turbo」というなかなかレアなモデルです。
これは限定300台でしかも日本専用モデルなのですね。
ドイツ本国では「D5 Bi Turbo」(ツインターボ)仕様となります。
つまりビターボはユーロ5にしか対応しておらず、日本の現行規制(ポスト新長期規制)をパスするのは無理なのでシングルターボにしているわけです。
それでも走りは強力でしたね。
前回絶賛したスカイラインが一瞬で色褪せてしまうほどでした。
今のところ今年乗ったクルマのダントツNo.1です!
スタイル★★★★
F10の5シリーズのスタイルは先代に比べどこかぼってりしていてイマイチおやじ臭いなと思っていたのですが、それがこのアルピナの端正な大径20インチのホイールといつものボディストライプを与えられると、なかなか上品でスポーティーな印象になるから不思議なものです。
肉厚のフロントスポイラーもノーマルとの違いですね。
これだけでもかなり引き締まって見えます。
リアは4本出しのマフラーとトランクのリップスポイラーが特徴です。
これもさりなくとても上品な感じに抑えてあります。
まあ、アルピナ・ストライプって正直古いクルマだと微妙なイメージですが、流石に最新モデルに添えてあるとノーマルより圧倒的に華がありますね。
内装★★★★
内装は昨今、ノーマルもかなり質感が上がっています(特にMスポーツ)。
それでもやはりこの濃密な感じは手の入ったチューニングモデルならではの世界ですね。
とにかくドアを開閉めた瞬間に空気の流れが止まるほど精緻な作りになっています。
革の質なども違いますが、職人の手が入っている為かどこかオーラを感じます。
こうした雰囲気はやはり量産モデルにはありません。
メーターもアルピナの伝統に沿った、ブルーの意匠になっています。
とにかくどこにもBMWのエンブレムは無いあたりもアルピナのこだわりを感じます。
またステアリングパドルが小さなボタンになっているのもアルピナのお約束ですね。
アルピナはレーシングタイプの大げさなパドルを嫌います。
特にトルクの太いディーゼルではこれで十分です。
とにかくアルピナのインテリアはこうしたこだわりの塊です。
ノーマルの5シリーズのインテリアは正直退屈ですが、アルピナの贅沢感はやはり楽しめます。
エンジン★★★★★
ここは白眉です!驚きました!世界最高といわれるBMWのストレートシックスをさらにアルピナが仕上げるのですからある程度は期待していましたが、まさかこれほどの仕上がりとは!
とにかくこれまで乗ったすべてのディーゼルはやはりディーゼルでした?BMWの523dはもちろん、ベンツのディーゼルもスカイアクティブDもこのアルピナに比べればトラックです。
とにかくディーゼル特有のカラカラ音が全く無いのです。
普通どんなに良く出来たディーゼルでも始動時や窓を開けた時などそれと分かりますが、これは全く音も振動も良く出来たガソリン車そのものです。
昨今の直噴のガソリンの方がカリカリいうぐらいです。
とにかくディーゼルのネガを全く感じないばかりか音やフィールさえ並のガソリンエンジンを遥かに凌駕しています。
上質なピストンがオイルの海を泳ぐ感じが伝わります。
スペックは直6 (280ps/4000rpm 61.2kgm/1500-3000rpm)JC08モードで18.8km/Lです。ちなみに523dは2リッター直4DOHC16バルブ ディーゼルターボ(184ps/4000rpm、38.7kgm/1750-2750rpm)/燃費=16.6km/リッター(JC08モード)ですから燃費さえよくなっています。
523dも乗りましたが、パフォーマンスの差は圧倒的ですね。
ノーマルはガソリンと比べると少しトルクがあるなーというレベルですが、こちらはM5(693.kgm)並のトルクを持つわけですからディーゼルとはいえチューニングカーとして恥じないレベルの分厚い加速性能を持ちます。ちなみに0-100km/h加速は5.9秒です。
しかもそれが低回転で行われます。
さらにハイギアードなファイナルもあって少し踏むだけでグンと息の長い加速する感じです。ストレスが全くありません。
そして回せばクォーンという快音さえ発します。
ディーゼルでこれほどファンなエンジンは初めての経験です。
とにかく523d比では4気筒と6気筒という事もあって音振の差は圧倒的です。
ミッションはBMW8速ATをベースにしたスイッチトロニックでZF70という大容量タイプです(ちなみに523はZF40ですねトルクに合わせてあります)。
このミッションもいいです。
キャパに余裕のある感じが伝わってきます。
もちろんアイドルストップも装備されていますので、クルマを止めるとエンジンはストンと止まります。
再始動もすばやいですね。
エンジンもボディもお金がかかっているためか再始動のマナーもノーマルよりも良く感じます。
足回り★★★★★
ここもエンジン同様にちょっとこれまでに経験のない感じです。
ここもノーマルの523dとはレベルが違います。
いや523dに限らず全てのクルマと違った次元の乗り味です。
上手く説明できないのですが、正にマジックなのです。
乗り心地はノーマルよりも明らかにピッチングが少なく上質です。
ノーマルの5シリーズのピッチングについてはこれまで何度かご報告してきましたが、このアルピナはそれを見事に解決しています。
乗り味は上質の極みでぬめる感じです。
タイヤはフロント255/35、リヤ285/30、前後ともに20インチというファットなものですがそれを全く感じさせません。
この感じはちょっとベンツのSクラスでも味わえません。似た感じを探すとベントレークラスになります。
ハンドリングもこれまた上質です。
安定性もずば抜けているので乗っていて楽しいしまったく疲れません。
高速の繋ぎ目は殆ど振動を感じさせずに乗り越えて行くかと思えば、コーナーではロールを完璧に抑え、地面に吸い付いて走り
ます。
スポーツモードにすれば固くなりますが、決して不快では無く、クルマが一回り小さくなったような一体感が得られます。
またロードインフォメーションがより鮮明に伝わって来る感じになります。
とにかくこれ程のしなやかさとしたたかさを両立した足回りはちょっと記憶にありません。
総評★★★★☆
アルピナの年間生産台数は約1400台であり、そのうちおよそ20%が日本において販売されているそうです。
日本はアルピナの価値をかなり理解するエンスージァストがいるという事ですね。
そしてD5の価格はなんと995万です!これはB5より100万以上安い!しかも今回300台限定。こう考えるとこのD5ですが、おそらく5年後に下取りに出しても、車両本体価格の40%前後は付くと思います。
523dとの価格差の約300万円はかなりリーズナブルと感じます。
何より523dの代わりはありますが、このD5のような乗り味を提供するクルマは他にありません。
前回のスカイラインも言いましたが、これもぜひ試乗してみて下さい。
こういうクルマを体験するだけでもクルマの見方が変わります。
交通費のモトも十分に取れるというものです。
【スペック】全長×全幅×全高=4910×1860×1470mm/ホイールベース=2970mm/車重=1920kg/駆動方式=FR/直6 (280ps/4000rpm 61.2kgm/1500-3000rpm)/価格=995万円