これは大人のメルセデス!”
ボディ&ホイールベースをシェイプされたEのクーペやカブリオレって、よく「シャーシはCクラスベースでなんで・・」なんて揶揄されるじゃないですか!
はっきり言ってこれは乗った事が無いか、乗っても何も分からずにメディアの受け売りをしているタコの言うセリフですね。
私はこの最新のカブリオレに乗ってこれがベストEクラスとさえ感じました!
5月にセダン/ワゴンを2000か所以上(そういえばCのビッグマイナーも2000箇所とか言っていましたね!)も変更したEクラスですが、続いてクーペ/カブリオレも同じようにビッグマイナーを受けたので乗ってみました。
スタイル★★★★☆
先に登場したセダン&ワゴンではあまりにスポーティなそのグリルの変貌ぶりにちょっと違和感を抱いたものですが、やはりこのクーペ&カブリオレだとマッチしますね。
以前のごちゃごちゃとしたグリル&ライトよりも遥かにすっきりとして、若々しく明快な印象になりました。
サイズはCベースとあってセダンに比べホイールベースが2874mmに対し2760mm、全長もセダンの4892mmに対して4745mm、全幅1855mmに1785mmと、それぞれコンパクトになっているおかげでかなり引き締まって見えます。
それにしても2+2の4座を持つ高級なカブリオレっていいですね!クラシカルにソフトトップを与えているのも高級感をかもし出すポイントです。
内装★★★★
内装も今回のマイナーですっかり良くなりました。
試乗車はAMGスポーツパッケージでしたからシートやステアリングもちょっとスポーティな仕立てです。
メーターやスイッチなども細かなシルバーのアクセントが与えられCには無い四角い時計も付いています。
サイズはCに近いですが仕立てはしっかりとEクラスになっています。
オプションが豊富なのもカブリオレの楽しみを増やしますね。
カブリオレは内装のこだわりを見せるボディですから!
赤のツートンなど色々なバリエーションを選べるのはこのクラスの高級車ならではでしょう。
望めばダッシュやドアの内張りにレザーを張ることもできます。
ちなみにソフトトップは、停車中もしくは走行中でも40km/h以下ならば、約20秒で開閉が可能です。
試乗車はフロントウインドウフレーム上部の可動式ウインドディフレクターと、リア左右ヘッドレスト間の可動ドラフトストップにより車体上部の気流を持ち上げ、 前後席への風の巻き込みを低減させる「エアキャップ」や、SLなどにも採用される乗員の首元へ温風を吹き出し、寒冷時のオープンドライブを快適にする「エアスカーフ」も装着されていました。
こうした装備はオープンにする機会を増やしてくれます。
試しにリアシートにも座ってみましたが、トップを閉じた状態でもどこも触れるところはありませんでした。
エンジン・ミッション★★★★☆
「Eクラスはエンジンの総合商社やー」ではないですが、種類が多いですね。
超簡単に整理しますと、セダンでは下から新しい2リッター直4ターボエンジンを積むこの「E250」、チューニングの異なる2種類の3.5リッターV6エンジンの「E300」と「E350」。
その上が4.7リッターV8エンジンを積む「E550」(4.7なのにターボ付きなので550となります)ややこしいですね。
それに3リッターV6ターボディーゼルエンジンを積む「E350ブルーテック」。
また、セダンに限って、E350のエンジンに電気モーターとリチウムイオンバッテリーを組み合わせた「E400ハイブリッド」もあります。
あとはAMG(V8、5.5リッターDOHC32バルブターボ(585ps/5500rpm、1.6kgm/1750-5000rpm「S」)もありますね。
この中でカブリオレに積まれるのは2リッター直4ターボエンジン「E250カブリオレ」とチューンの高い方の306psの3.5リッターV6エンジンの「E350カブリオレ」の2種です。
もちろん注目はこのE250です。
これは従来の1.8リッターに代えて2リッターのターボを採用し、最適な燃焼制御を行う成層燃焼リーンバーンとターボチャージャー、EGR(排ガス再循環装置)などを組み合わせ、最高出力211ps、最大トルク35.7kgmを発生します。
燃費も約23%向上させています(JC08モード15.5km/リッター)。
このエンジンは市販ユニットとしては世界で初めて直噴+リーンバーン+高圧EGRの組み合わせに成功し、熱効率に関してはディーゼルのそれに遜色ないほどのものとなっています。
複雑な制御を必要とするこの組み合わせの狙いは燃費とCO2排出量の低減です。
実際このエンジンは135g/kmという驚異的な数値を実現しています。
このエンジンを可能とした技術的な背景は200気圧のガソリンコモンレールとスプレーガイデッドピエゾインジェクターです。これらはディーゼルから派生した技術ですね。
リーンバーンを上手く燃やす為にコモンレールで高圧の直噴とし1サイクルあたり3回の噴射をする超絶制御のピエゾインジェクターが最小の燃料を吹き込みます。
また成層燃焼とは簡単に言えばピストン下死点付近ではガソリンの無い領域を作り、上死点の濃い混合気の所へ点火する方式ですが、これもこれまでは難しかったのですね。
このエンジンをAクラスなど軽く空気抵抗のいいボディに積めば高速燃費ではプリウスを上回るはずです。
この新しい2リッター4気筒はフィールもいいです。
パワーは出ているしマウントがいいのか振動も少ないです。
7速のGトロは相変わらずスムーズで意思に忠実です。
キックダウンなどもストレス無いですね。
惜しむらくは直噴特有のちょっと高周波な音が残っていることです。
回せば気になりませんが、特にオープン時のアイドリングや駐車場など屋内で僅かに気になります。
まあそれも外に出てスピードを上げるとまったく気にならなくなります。
そしてこのユニットのいい面ばかりが姿を現します。
つまり軽快なフィールとリニアなレスポンスです。
ターボラグは以前の1.8リッターよりも少なくアクセルのつきがいいです。
この優雅なカブリオレボディを“らしい”雰囲気で走らせるに十分な能力を備えています。
足回り★★★★★
ここはちょっと驚きました。
このカブリオレはEクラスの中で最も乗り心地がいいと感じました。
私はこれまでセダンやワゴンなど色々なEクラスを試しましたが、特にボディコントロールにおいてあまり満足した記憶がありませんでした。
例えばA6などに比べるとピッチングが残っていますし乗り心地の洗練も劣ると感じていました。
それがどうしたことか、よくCクラスのシャーシでしょなんて揶揄されるこのカブリオレはしかしそれゆえベンツはセダン以上にコストをかけたとしか思えません。
この優雅なボディにふさわしい乗り心地となっているではありませんか!
とにかくその路面を舐めるようなスムーズな乗り味は数あるメルセデスの中でも最上に近いものです。
ここははっきりとCクラスを超えます。
標準装備のセレクティブダンピングシステムを搭載したアジリティコントロールサスペンションはスポーツモードにしてもまったく荒さを見せません。
ダンピングが強まるのでゆったりとした動きではなくなりますが、その分“ビシッ”と締まった乗り味になり飛ばして安心感のあるものになります。
ステリングホイールはナッパレザーを巻いたAMGデザインの3本スポーク。
電動パワーステアリングとステアリングギア比を舵角に応じて変化させる「ダイレクトステアリング」も装備していてフィールは電動の癖を極力排除しています。
ここは僅かに路面のフィードバックに於いて昔のメルセデスに及ばない部分もありますが、そのしっとりとしたフィールは流石にEクラスのクオリティと感じさせます。
ボディ剛性もエンジニアが入念にレーザー溶接したと言う通りの出来です。
最新のメルセデスの乗り味をこのカブリオレでも感じさせてくれます。
総評★★★★☆
メタルトップ全盛の時代、ソフトトップを持つ4座の高級オープンはこのクラスではライバルとしてはA5カブリオレぐらいでしょうか?
高級感ではやはり新しいこともあってこのメルセデスの方が演出が上手いですね。
乗り味のしっとり感も高く上質です。
実はこのクルマに試乗する前に先週ご紹介した同じオープンのジャガーFタイプに乗って、「オープンスポーツって最高に楽しい!オープンに音のいいスポーツエンジンって最強やん!」なんて思っていたわけですが、これに乗ると今度はその上質な乗り心地にもすっかりとやられてしまいました。
「ゆったりとバスタブみたいに快適なボディに浸かってのんびり綺麗な景色を味わうのが大人のオープンドライブよのうー」なんてなるわけです。
まあ、いずれにしても贅沢なクルマです。
実用的で面白みが無いと言われて久しいEクラスに華を添えるカブリオレとその見事な足さばきは久しぶりに「流石にメルセデス!」と唸らされました。
個人的にはベストEクラスです。
【スペック】ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4745×1785×1395mm/ホイールベース:2760mm/車重:1810kg/駆動方式:FR/エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ/トランスミッション:7段AT/最高出力:211ps(155kW)/5500rpm/最大トルク:35.7kgm(350Nm)/1200-4000rpm/タイヤ:(前)235/40R18 97Y/(後)255/35R18 97Y /価格:719万円