マスタングやエスケープ、エクスプローラーのスポーツトラックに押し出され、いまやフォードジャパンのHPからも削除された存在です。
デトロイトでデビューした新型の発売までは現在の在庫を細々と売っていくということなのでしょう。
足回りに定評のあるクルマで、「素」の良さを味わえるクルマなので、最終モデルの熟成度をチェックしてみようと思います。
●概要
VWゴルフ、ルノーメガーヌ、プジョー307、シトロエンC4といったクルマををライバルとするいわゆるCセグメントです。
世界的には非常にメジャーな存在ですが、日本ではゴルフほどの知名度もなく、フランス車のようにマニアに訴える特徴もないので販売は厳しいことになっています。
スタイル★★
05年のデビューです。
リアテールに特徴を残しますが、98年にデビューした初代フォーカスのフレッシュっさにはまったくもって及びません。
フロント周りや全体になだらかなフォルムなど、今でも先代の方が新型かと思うほどです。
それでもシンプルで都会的にまとまっており若々しい感じはあります。
ハンドリングのために幅を1840mmとこのクラスとしては異例に広くとっていますが、先代よりドアミラーを小さくし、実際に走行した感じではそれほど大きい印象を与えないように配慮されていといういいわけです。
とにかく先代が「5つ★」とすればこれは平凡で「2つ★」です。そしてさらに驚くことに先ごろ発表された次期フォーカスですが、コレがさらに酷いことになっています。
チーフ・デザイナーであるロン ザバックによると「ベルトラインを引き上げて優美なプロファイルを創り出し、ソリッドで、より精悍になっている」ということですが、どうみても凡作です。
かろうじてプロポーション・バランスだけはとってありますが、面も線も特徴はなくあまりに退屈です。
その退屈さを補おうとしたのか、妙に凝ったライトとフロントフェンダーにはエアアウトレットが与えられていますが、これまた子供っぽくもはや「ヒュンダイクーペ」と選ぶところがありません。
1つ★です。
だんだんデザインが退化していくなんて・・・。昨今のフォードの経営の苦しさの現れでしょうか?
ご覧のように実にそっけないデザインです。
それでも基本はしっかりしているのが救いです。
シートはしっかりとした芯のようなものを感じさせ長距離でも疲れません。
このシートが乗り心地と操安性に随分と貢献しています。
スペースは流石に幅には余裕がありますが、ライバルと比べ特別広い感じはありません。
ただしラゲッジスペースは広大です。
ステアリングの皮の質はもう少ししっとりと馴染むものにして欲しいですね。
最初はプラスチックかと思いました(STは別)。
低速から十分なトルクがあり、パワー不足は感じません。
ただし特に官能的な演出もありません。音質音量ともこのクラスの4気筒として平均的で、日本車に慣れた人には少しノイジーといったレベルです。
このあたりがゴルフなどと肩を並べられない原因かもしれません。
コンチネンタル・スポーツコンタクトのロードノイズが大きめに侵入してくるのも気になります。
それと細かい事ですがバックギアに入れた時のワーニングが大きすぎます。
ゆっくり落ち着いてバックできなくてかえって危険です。
一方、少し乗った5気筒のSTはターボラグの少ないレスポンスの良さとスムーズさ、そして上質さを持っています。
官能的なフィールの演出は控えめです。
サスペンション★★★★
このクルマの最大の特徴がこの足回りの良さです。
乗り心地はしっかりとした安定感のあるもので大きなギャップをハイスピードで超えても、弱音を吐きません。
硬めなので細かな振動は伝えますが、ボディがしっかりとしていてブッシュセットも上手く、嫌なハーシュネスはありません。
高速でも完全にフラットというわけにはいきませんが、クラスを超えた安定感を感受できます。
そしてハンドリングは正に思うがままで全く怖さがありません。
レベルが高いから少々ハイスピードでコーナーに突っ込んでも何も起こりません。
ロールは少なく、ステアリングはその情報をミリ単位で伝えてくれます。
最初から最後までニュートラルでステアリングを切ったままにクルマが動く感じです。
ブレーキング時の安定性とコントロール性がいいのもこのクルマの特徴です。
ヨーロッパの専門誌で常にクラスベストに輝く実力は伊達ではないです。
この足回りの突出こそがこのクルマの最大の価値です。
STは富士スピードウェイでレーサーの竹内浩典さんがドライブする横に乗らせてもらいましたが、雨にもかかわらずその接地感とコントロール性は素晴らしく正に自由自在でした(竹内さんだからか?)。
フルブレーキング時の安定性、ESPをオフにしての走行でのアンダー・オーバーの移行のスムーズさなどが印象的でした。
またそうした状況での乗り心地も快適でした。
竹内さんもSTのコントロール性の良さに驚いていました。
総合評価★★★
このクルマは素のヨーロッパ車の良さを感じることが出来ます。
ただし日本では分かりにくいクルマですね。ゴルフをダサいと思う若者にナチュラル&クールでブレイクするのが唯一の望みでしたが、今の若者に、それほどクルマに対する情熱とセンスを求めるのも無理だったようです。
次のフォーカスもとても心配です。