いきなり完成度が高!
これまでのC30・S40・V50シリーズを統合して1つにまとめたのが新しいV40シリーズですね。
競合ひしめくCセグのニューカマーですがハッチバックではなくVの名が示すとおりワゴンボディという位置付けです。
メルセデスの「Aクラス」やBMW「1シリーズ」が軒並みスポーティー路線に走る中、ボルボは従来の生活に根付いたたおやかな走りを踏襲しているのか?
ボルボの乗り心地がかなりツボな試乗オヤジとしてはとても気になるところなのであります。
スタイル★★★★
一見ハッチバックですが、横から見るとやはり長いルーフでそれと分かる新型「V40」のフォルムは、随分とスポーティーでワゴンとハッチの間の新種のような雰囲気さえあります。
アウディのA3スポーツバックのようなポジションですね。
そのスポーティーな印象のポイントは、後方に向けてなだらかに上昇していくショルダーラインと、それに反するようになだらかに下降してくるルーフラインです。
このラインはリアエンドできれいに交わり、サイズを超えたエレガントな装いを湛えています。
後端も左右に強く絞り込まれ、フェンダーのボリュームも大胆に強調されています。
もはや“四角くい”ボルボ“と完全に決別した感じですが、それでも紛れもなくボルボと感じさせるのは、やはりその特徴的なコンビネーションランプの形状、特にリアまわりの造形によるところも大きいと感じます。
エクステリアデザイナーはサイモン・ラマー。
彼は同じくリアがキャラクタリステッィクなボルボC30のスタイリングも手掛けていると聞けばなるほどと思う部分もあると思います。
とにかくボルボらしいアイデンティティとプレミアムカーらしい抑揚に富んだクオリティを感じさせるデザインはなかなか上手いと感じます。
細かなところでは、日本仕様はドアミラーステーとドアハンドルが専用となり、全幅が1785mmに抑えられています(キーレスエントリー装着車についてはグローバル仕様のままなので1800mm)。
また安全上のトピックはオプションで用意される世界初の歩行者用のエアバッグが挙げられます。
コレは万一の際にアルミ製のボンネットが跳ね上がるとともにエアバッグが現われ歩行者を衝撃から守るというものですが、コレも安全にこだわるボルボらしい装備だなと感じます。
内装★★★★
内装はフローティングタイプのセンターコンソールなど従来のスカンジナビアンデザインを踏襲しています。
面白いのはメーターのデザインですね。
センターに大きな丸型のメーターを1つ置いていますがこれがエレガンスとエコとパフォーマンスという3種のモードに切り替える事ができます。
エレガンスはブラウン、エコはブルーグリーン、パフォーマンスはレッドと色が変わり、表示もパフォーマンスではタコメーターに切り替わります。
またLEDが輝くクリア素材のセレクターレバーも楽しい演出です。
内装の照明も7色から選べるなどなかなかロマンティックなクルマです。
もちろんデザインはホンダのように子供っぽくないので大人が十分楽しめるセンスになっています。
残念なのはボルボとしてはトランク容量が335リッターとクラスの水準より小さめとなっていることです。
荷室がほぼフラットになるなどその使い勝手は流石ですが、スタイルを優先したのでしょう。
ここはボルボのワゴンという期待で選んではいけない部分です。
エンジン★★★★
エンジンはお馴染みの1.6リッター4気筒ターボに6段のデュアルクラッチトランスミッションを組み合わせです。
駆動方式はもちろんFF。
このエンジンは既にS60やV60で体験済みですが、パワーもスムーズさもほぼ文句なしです。
スペックは180ps/5700rpm、24.5kgm/1600-5000rpmですから他社の1.6ターボと比べても最もハイスペックです。
しかし低速トルクも十分と感じるのはやはりV60と比べ100kg以上軽いボディのお陰でしょう。
とにかく全域で力強いトルク感を感じさせてくれるので安心してドライブできます。
ターボはマナーも自然で急なトルク変動もありません。ボルボらしく実に運転しやすいユニットになっています。
アイドリングストップシステムも洗練され再始動時の振動は日本車並みかそれ以上に気にならなくなっています。
このクラスでこれほどスムーズなアイドルストップは初めての経験です。
足回り★★★★
ここは少し気になる部分があります。
乗り心地がボルボとすれば少し硬いです。
これは試乗したSEグレードは17インチホイールが標準になることも原因でしょう。
ノーマルの16インチを試していないのでなんともいえませんが、SEは荒れた路面で少し早い周期の振動に見舞われます。
もちろん直接的なショックは一切なく、そこは流石と感じます。
ステアリングも切れ味はS60ほどは鋭くなく安心して走れます。
低めのドライビングポジションもあってか安定感は非常に高くスポーティーさも感じます。
ちなみにSEではパワーステアリングの操舵力を3段階に調節が可能です。
それにしてもこのロールを無理に抑え込まない、しかしセンターの出た安心感の高いハンドリングはボルボの味をしっかりと持っています。
この普段使いの心地良さはボルボの最も好きな部分です。
S60では少し浅いと感じたこの部分を、しかしV40では最初から確かに感じさせてくれました。
このしなやかな身のこなしは、固められたS60/V60よりも私にはナチュラルで心地良く感じます。
その上で路面に吸い付くようなコーナリングも楽しめるのですから、先の乗り心地を差し引いてもなかなかのものと思います。
特に速度が上がってくるとサスペンションが路面によく動き姿勢もフラットになってきますから相対的に乗り心地も良く感じます。
総評★★★★☆
それにしても輸入車のCセグは超ハイレベルですね!
先日ご紹介したベンツ「Aクラス」しかりBMWの「1シリーズ」しかりアルファ・ロメオの「ジュリエッタ」レクサスの「CT」今後出てくるVW「ゴルフ7」も既にその出来の良さは保証済みです。
そんな超強豪の中にあってもこのV40はなかなか健闘していると思います。
つまり価格がゴルフ並みに安いです。このSEは309万ですがノーマルは269万です。
乗り味も十分にプレミアムレベルにあります。
そして少し薄れたとはいえ内外装のムードはまだまだ北欧調の落ち着いたムードを持っています。
お馴染みシティセーフティは、作動速度域が30km/h以下から50km/以下にまで引き上げられています。
更にヒューマンセーフティを含むオプションのセーフティパッケージでは、車両左右後方の死角を監視するBLISも従来のカメラ式からレーダー式となりました。
また、車線から逸脱しそうになるとステアリングを振動させて警告するLKA、アクティブハイビーム等々も装備されます。
しかもこのオプションのセーフィティーパッケージ(20万円)は3/31日までWebの先行予約で無料になります。
とにかくこのV40は従来のボルボにあった初期モデルゆえの完成度不足を感じる部分は全くありませんでした。
いきなりライバルと肩を並べる実力を発揮してきただけでなく、そこにボルボならではの生活の中での心地良さを感じさせてくれる部分もしっかりと持っていました。
最近Aクラスをべた褒めしたばかりで恐縮なのですが、このV40の出来は大いに悩ませるものがあります。
内装のデザインやムードでは断然V40が好みですね。
ドイツ車の存在の重さに抵抗のある人はいい選択肢です。
おって追加される予定のXC40も楽しみです。
コレも売れると思います。
【スペック】全長×全幅×全高=4370×1785×1440mm/ホイールベース=2645mm/車重=1430kg/駆動方式=FF/1.6リッター直4DOHC16バルブターボ(180ps/5700rpm、24.5kgm/1600-5000rpm)/燃費=16.2km/リッター(JC08モード)/価格=309万円
(※この記事は2013年2月に書いたものです。有料版の記事の一部を加筆訂正し約1年遅れで配信しています。)