これは大人のリアルスポーツ!
Eタイプ(1961年登場)以来の本格的なスポーツカーですね。
XKはラクジュアリークーペですからジャガーはそういえば約40年もスポーツカーを作っていなかったのですね。
そりゃー気合が入るわけです。その気合はマフラーの爆音に現われていますね。
試乗車はポルシェの「スポーツエグゾースト」のようなオプション「アクティブエグゾーストシステム」が付いていたのでなおさら楽しかったです・・。
スタイル★★★★☆
「2013年ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」を受賞しましたね。
ちなみに2位がアストンマーチン・ヴァンキッシュ、3位はマツダ・アテンザですね。
デザイン・ディレクターはもちろんEタイプのマルコム・セイヤーではなく、ご存知イアン・カラム氏率いるデザインチームのアリスター・ウェラン氏。
彼は元アウディにいた若手ですね。Fタイプはコンセプトカー「C-X16」の市販モデルにあたりますが、元がクーペだったのに対し、量産型はオープンカーとしてデビューしました。
全長×全幅×全高=4470×1932×1307mm/ホイールベース:2622mmは堂々たる体躯です。
ちなみに同じオープンのボクスターが全長×全幅×全高=4374×1801×1282mm/ホイールベース=2475mmですからクラスが違いますね。
ボリュームのあるフロントは古典的なオープンFRの法則通りでロングノーズ・ショートデッキスタイルです。
大きく口を開けたグリルはXKとも類似性を感じますが、全体的にはずっと引き締まって筋肉質な印象です。
ボンネットフードはEタイプに習ってフロントフェンダーと一体式。ライトは流行の縦長でちょっとフェラーリF12ベルリネッタかカルフォルニアのようにも見えます。
フロントと対照的にリアは薄いテールで近代的にまとめられています。
これはもちろんEタイプをモチーフにしています。
Eと同様に尻下がりなので、トランクリッドの後端には100km/h以上でリフトする可動式のスポイラーを備えています(揚力を最大120kg低減する)。
ちなみにドアハンドルはテスラなどと同様に普段はフルコンシールドでロックを外すと飛び出すタイプです。
ちなみにこのV6モデルとV8モデルの外観上の差はリアのテールパイプがV6はセンター2本出しに対しV8は左右2本ずつになる事が最大の見分けポイントです。
内装★★★★☆
内装も新しいです。
ジャガーのアイコンともいえるウッドは意識的に排除され、シフトもダイヤル式ではなくバイワイアーですがスタンダードなフロア式となっています。
このあたりは伝統に囚われることなくモダンなスポーツカーを目指した現われでしょう。
センターコンソールもドライバーオリエンテッドにオフセットされています。
現代のクルマらしく中央のカラーモニターで多くをコントロールしますが、ダンパーやマフラーなど走行マネジメントの切り替えについてはダイレクトにシフトレバー脇のスイッチで行えるなど、スポーツカーらしい
機能性は確保しているのは流石です。
キャンバス製ルーフは12秒で開閉する。時速50km/hまでなら走行中でも操作できます。
全長を絞ったリアルスポーツ&オープンゆえトランクルームの容量は200.5リッターと最小です。
シート背後に荷物を置くだけのスペースは残っていません。
このあたりはミッドシップのボクスターに敵いません。
ただフロントシートは十分に広くポジションの自由度は高いです。
残念なのはステアリングパドルのタッチですね。
ゴールドアルマイト塗装のパドルが添えられますがこのタッチが多少節度に欠けるのです。
一方いいのは高級車メーカーらしくシートのカラーバリエーションなどオプションが豊富な事です。
望めばダッシュに本皮を張るなど豪華な仕様にも出来ます。
エンジン・ミッション★★★★☆
ここのチューニングは驚きましたね。
ノーマルでこれほど派手な排気音の演出はポルシェ以上です。
フェラーリやランボ、アストンに匹敵します。
試乗したのは340psの3リッターV6スーパーチャージャーですが、基本「XJ」や「XF」のセダンと同じエンジンとは思えないほど過激なフィールとなっています。
つまりエンジンに火を入れると、瞬間に「バァーン」と吼えてみせます。
急加速時には弾けるようなレスポンスと共にバイパスバルブが開き後方からは歯切れのいいブリティシュスポーツ特有の少し低音で図太く迫力ある爆音が炸裂します。
また勢いよくスロットルを閉じた時もバラバラパンパンという、昔のハイチューンエンジンのアフターファイアのような演出まで施されています。
これは試乗したFタイプのマフラーにはサウンドコントロール用のオプションが(V6で36万円)がオンになっていたためですが、試しにこれをオフにしても嬉しい事に基本的な性格は変わりませんでした。
ボリュームが少し抑えられるのと擬似バックファイアーが消えるぐらいです。
この程よく官能的なフィールはジャガーではFタイプだけのものです。
もちろん音だけではなく実際の動力性能も十分です。
ちなみにこのV6で最高速は260km/h、0-100km/h加速が5.3秒とアナウンスされています。
この上には495psのV8スーパーチャージャー(1250万)もあります。
雑誌によるとその演出はさらに過激だそうです。
ミッションは定評のあるZFの8速ATですね。
これもトルコンとしては驚くべきタイト感とシフトスピードで不満を感じません。
あとはATモードでのブリッピングがあれば完璧なのです。
とにかくこのエンジンはリアルスポーツそのものですね。
低回転から高回転まであらゆる回転で表情を変えます。
内燃機関を操る喜びがここにあります。
もちろん現代のクルマですからアイドルストップも付きますしCO2排出量は前者で209g/kmと優秀です。
足回り★★★★☆
乗り心地はジャガーとしてはかなり固めですが、荒さはまるで無く快適です。
それは第4世代という全く新しいアルミモノコック・シャシーによるところも大きいでしょう。
オープンボディーながらその剛性はボクスターにも遜色ないと感じました。
ハンドリングもシャープですね。
重量配分も50:50と理想的でステア特性はニュートラルですが、ハイパワーFRですから踏むとテールハッピーになります。
足をスポーツモードにして固めると乗り心地はいっそう引き締まり(荒くはなりません)テールスライドを許します。
このあたりの性格は腕のあるドライバーには楽しめるのではないでしょうか?
またステアリングも少し重めのセット(特にV8)でスポーツカーらしく正確でダイレクトなインフォメーションを持ちます。飛ばすほどにボディーが小さく感じられるのは素性の良さに他なりません。
総評★★★★☆
オープン2シーターのリアルスポーツというカテゴリーでのライバルはポルシェ「ボクスター」、BMW 「Z4 sDrive35is」、メルセデス・ベンツ「SLK55 AMG」、シボレー「コルベット・スティングレイ」などもライバ
ルで、さらに高価ですがアストンマーチン「V8 ヴァンテージ」やアウディ「R8スパイダー」なども入るかもしれません。
これらの中でジャガーFタイプはそのブランドゆえ流石に大人っぽい印象をもっています。
価格もボクスターには負けますが911より少し安いあたりを狙っていますね。
楽しさで言えばZ4やAMGより上だと思います。
ハンドリングではミッドシップのボクスターに分がありますが、演出の楽しさと趣味性ではFタイプが上でしょう。なかなか魅力的なスポーツカーの登場を歓迎したいです。
【スペック】全長×全幅×全高=4470×1932×1307mm/ホイールベース:2622mm/車重:1730kg/駆動方式:FR/エンジン:3リッターV6 DOHC 32バルブターボ/トランスミッション:8段AT/最高出力:340ps/6500rpm/最大トルク: kgm/3500rpm/タイヤ:(前)245/45ZR18(後)275/40ZR18(ピレリPゼロ)/価格950万円