XVのネガが消えた!
ノーマルのXVはこのメルマガでもVol.80で取り上げました。
その時の印象はもう“滑るCVT”という以外ありません。
リニアトロニックって“どこがリニアやねん!”って、普段はあまり使わない関西弁が飛び出すほどに残念な印象でした。
なぜ残念かと言うと、私はこのクルマのサイズやディメンションがけっこう好きなのですね。
だって日本で使うには調度いい大きさだし、しかもクロスオーバーなので地上高も高くて多少ギャップがあっても気を使いません。
視界もいいし、その上4駆でスバル!コレはもしや最高のセカンドカーというか万能車!なんて思っていたわけです。
なので、今回のチェック項目はただ1つ。
そうです、モーターでアシストされたパワートレインのリニアリティに期待です!
スタイル★★★★
ここのノーマルとの違いは、ハイブリッドらしくブルーのアクセントを取り入れた前後ランプや、ドアハンドルのメッキ程度です。
ベースは5ドアハッチバック車の「インプレッサスポーツ」です。確かにコレがインプレッサかといわれると?なところもありますが、この種のクロスオーバーとしてはボルボのV40クロスカントリーと並んでよく出来ていると思います。
XVはアルミのルーフレールやリアのアンダーカウル、黒のフェンダーアーチなど、たっぷりのクロスオーバー・スパイスのおかげでノーマルのインプレッサには無い若々しさを持っています。
残念なのは普通になったAピラーの角度ですね。先代は立っていたのでサーブ900風でレトロちっくな面白さがあったのですが・・。
まあこれは空力用件と諦めましょう。
ボディーカラーは全9色で、試乗車の「プラズマグリーン・パール」は、ハイブリッドのみの専用色ですね。まあこういうのは新車で話題性のある時はいいですが、少し古くなるとちょっと恥ずかしくなる事もあるので注意が必要ですね。
ホイールのデザインは、少しおとなしいものになってしまいました。
ノーマルはとてもカッコいいデザインだったのですが、これもこちらの方が空気抵抗が少ないそうです。
内装★★★
ここのハイブリッドの特徴はブルーを用いた専用デザインのメーターとツートンカラーの内装色です。
おかげで殺風景だったノーマルから比べると少し華があります。
ダッシュや内張りの質感もやっと普通になりました。
もちろんそれでもVWやプジョー、ボルボなどの輸入車と比べると勝負になりませんが。
スペースはリアも含めて余裕があります。
荷室も広いですね。
バッテリーはニッケル水素式で、荷室の床下に搭載されています。
ラゲッジはこのバッテリーの搭載で、床面は若干上がりましたが、そのおかげでシートを倒した際の荷室はほぼフラットになっています。
スペアタイヤは搭載せず、スペアタイヤもフロントシート下のパンク修理キットで対応することで廃し、ノーマル比さほど遜色のないスペースを得ています。
エンジン・ミッション★★★★
2リッター水平対向エンジンは、圧縮比の変更(10.5→10.8:1)や吸気レイアウトの見直し、大型EGRの採用など、細かなリファインが加えられています。
重量はモーターとバッテリーでノーマル仕様より約120kg重くなっていますが、13.6psを生むモーターを追加する事でノーマル以上の動力性能を実現しています。
まずエンジンが非常に静かになっています。これは吸音材が追加された事も大きいです。
そして注目の走りですが、結論から言って素晴らしく良くなっています。
これはハイブリッドだからどうと言う域を超えて自然な走りです。
後から加速が付いてくるようなレガシィのターボ仕様などよりも遥かにドライバーの意思に忠実です。
HVのハイブリッドはアコードのようなストロングタイプではありませんが、CVTのスリップ感を補うにはこれで十分です。
とにかくアシストが自然なので、まるで静かで排気量の大きなエンジンを良く出来たトルコンで走らせているような高級感があります。
ちなみにこのスバルのハイブリッドシステムはトヨタの「THS」と違い新開発のものです。
日産やインサイトにも似たトランスミッションに1つのモーターを組み込むタイプです。
ただスバルの場合、モーターはCVTのプライマリープーリーの後方に搭載することでパワートレインが前後方向に伸びないように工夫されています。
これは水平対向エンジンを縦置きする4WDという独自のレイアウト上、他社のようにエンジンとギアボックスの間にモーターを入れると、パワーユニット全体の全長が長くなってしまうのを嫌った為です。
長くなると重量配分がフロント先端部分に片寄りハンドリングに影響を及ぼしますし、スバルのウリである高い衝突安全性能にも影響が出ますのでコストアップをいとわず独自開発したのでしょう。
足回り★★★★
この独自開発してまで拘ったコンパクトなパワートレインのお陰でHVハイブリッドのハンドリングはなかなか素直なものになっています。
リアに詰まれたバッテリーのお陰で重量配分もよく、ターンインもスムーズです。
ノーマルに見られたファイナルアンダーからのやや唐突な復帰(フロントがグリップを取り戻すと今度はオーバーステア気味に切れ込む)もなくなりましたし、重心もいっそう低く感じられます。
またステアリングのギア比もノーマルの16:1から14:1へとクイックに変更されていて交差点なども少ない舵角で回ることが出来ます。
特に高速でトリッキーな印象もありません。
そして乗り心地も、ノーマル仕様より遥かに落ち着きがあっていいです。
タイヤは225/55R17の「ヨコハマ・ブルーアースE70」でコレが少しトレッドが硬い印象もありますが、それでもココは輸入車とも争えるレベルにあります。
またハイブリットの鬼門とも言えるブレーキのフィーリングについても実に自然です。
これはアコードにも感じましたが、いまや回生ブレーキの制御に違和感はありません。
もちろんもっと燃費と充電効率を重視したセットにすれば気になるのでしょうが、流石にスバルはドライバビリティを犠牲にするようなことはしなかったようです。
総評★★★★
聞けばスバルはHVをシリーズで最高のグレードに位置づけたいそうです。
つまりこのXVハイブリッドは「インプレッサシリーズで最も高級な乗り味を持つクルマに仕上げた」と。
事実その言葉に嘘はないと感じさせるだけの乗り味をこのXVハイブリッドは持っていました。
まあ、現行のインプレッサに年内にも登場と噂されているWRX STiが出ればパフォーマンスでは敵いませんが、高級感では十分にいいものを持っています。
つまりこのXVハイブリッドは単なる省燃費モデルではなく、ラインナップの中で最高のパフォーマンスを発揮し且つ燃費も悪くないという思想のモデルです。
コレは輸入車の方向性ですね。
アウディやBMWのハイブリッドモデルのような高級ハイブリッド・ポジションです。
とにかくハイブリッド化によってお気に入りのXVの最大のネガがすっかり解消されていたことを喜ぶべきでしょう。
スバルらしい乗り味のいいハイブリッドだと感じました。
2週間で5000台以上のセールスを記録している事も頷ける内容だと思います。
【スペック】ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4450×1780×1550mm/ホイールベース:2635mm/車重:1590kg/駆動方式:4WD/エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ/トランスミッション:CVT/エンジン最高出力:150ps(110kW)/6000rpm/エンジン最大トルク:20.0kgm(196Nm)/4200rpm/モーター最高出力:13.6ps(10kW)モーター最大トルク:6.6kgm(65Nm)/タイヤ:(前)225/55R17 97V/(後)225/55R17
97V(ヨコハマ・ブルーアースE70)/燃費:20.0km/リッター(JC08モード)/価格:278万円
(※この記事は2013年7月に書いたものです。有料版の記事の一部を加筆訂正し約1年遅れで配信しています。)