もう少し待ちかも
私は昔チェロキーに乗っていた事もあり、クライスラーの少しルーズな乗り味はかなり気入っています。
先代の300Cはそのごつい外観に似合わずクライスラーらしく絶妙にいなしの効いた乗り心地で楽しませてくれたものでした。
メルセデスと決別しフィアット傘下となった新型ですが、果たしてクライスラーライドは残っているのでしょうか?
スタイル★★★★
ランチアと同様フィアット傘下になろうが、そのスタイルは初代と同じアメリカのチョイ悪というかヒップホップ系のテイストを感じさせるものとなっています。
相変わらずその大きさ(全長×全幅×全高=5070×1905×1495mm)といい存在感抜群ですね。
ただ先代との違いは水分すっきりとした事ですね。
ギラギラした感じは現代的に上品に抑えられています。
しかしスグに300Cと分かるのはそのプロポーションが独特だからです。
今やこれほどセダン然としたプロポーションを持つクルマはありません。
空力もあって流石に先代よりはAピラーが寝かされたとはいえ全体の印象は変わりません。
それは3mを超えるロングホイールベースに、分厚いロワーボディと天地の狭いアッパーを与えるというもの。
クライスラー・デザインのヘッドであるブランドン・L・フェウロテは彫刻美を求めつつも過度な抑揚は避けたというだけあって全体的にはシンプルなラインで構成されています。
彼は「強く・真摯で、自然、そしてアメリカンであること」をデザインのキーと語っていますが、その目標は達成されているといえるでしょう。
内装★★★
インテリアもダッシュボードが少し変わりました。
丸型2連の大型メーターはアメリカンなる物の象徴で今回も凝ったレタリングとブルーのイルミネーション(ちょっと派手すぎて恥ずかしいですが)で楽しませてくれます。
時計のデザインも素敵ですね。
ナビ&コントロールパネルを囲うセンターの丸いモチーフが新しいです。
ただシートも直線基調で空間も角ばっているだけにここだけ丸い感じがちょっと造形的には違和感が残ります。
またここの配されるナビの画面が小さく見にくいことと性能がいまいちなことも気になります。
シフトのセレクターはアウディのA8にそっくりなデザインでこれもちょっとレバーが短く慣れるまで操作しにくい感じですしデザインも浮いていると言わざるを得えません。
新たなZFの8ATがアウディで使われているものと同じだから?それとウインカーの音がクラシックな感じになっていますが「ジージー」と音量が大きくちょっと好みの分かれるところと感じました。
シートポジションは高めで視界もいいのは300Cの美点です。
リアシートも不評だった先代に比べればまあ普通に座れるレベルにはなりましたが、このサイズのセダンとしてはまだまだ後席が重視されているとまではいえません。
質感は先代よりもぐっとアップしました。
今回試乗したのは下のグレードでしたが、上のラグジュアリーではダッシュやドアの内張りにも本皮が奢られ(フィアットとのシナジー効果か伊ポルトローナ・フラウ社製のレザーです)ウッドパネルも天然木となります。ただラグジュアリーとなると140万も一気に値が上がるのが難です。
エンジン★★★☆
エンジンは6.2LのSRT8を別にして、3.6リッター“ペンタスター”V6エンジンとZFの8段オートマチックトランスミッションのみの組み合わせです。
V8 5.7は落とされています。
注目は8速のATですが、これは非常にスムーズで変速ショックはほぼ気にならないのでかなりシームレスな加速を楽しめます。
エンジンも3.6Lで不満はありません。
静かでスムーズで低速からトルクのある使いやすいエンジンです。
感応性も無い代わりに癖もありません。
問題は燃費でしょうか?アイドルストップが無いなど少し気になります。
また初期モデル故の問題なのかスタート時のヒステリシスが気になりました。
たとえば止まる寸前にやっぱり加速という時に少しショックが出ます。
コレは要改良です。
足回り★★★☆
初代はメルセデスとの提携期の作とあってメディアでも随分と書かれたこともあって、シャーシやプラットフォームまでW124のように思われている人も多いと思いますが、実はドライブシャフトとリアサスぐらいだったようです。
エンジン・ミッションはもちろん時期的にシャーシは独自のものだったようです。
まあ今回はもちろんメルセデスの影は無く、足はクライスラーオリジナルですね。
乗り心地は相変わらずいいです。
思ったよりも固めですが、その分すっきりしていて無駄な動きはありません。
まあ欲を言えばしなやかさが足りません。
リミテッドのタイヤは235/55R18でラグジュアリーは245/45ZR20です。
20インチは試していませんが、他のレポートによるとやはり18インチの方がいいようです。
ハンドリングもこのクルマの持ち味ですね。
見かけによらずほぼ50:50の理想的な重量配分を持ち素直なハンドリングを実現しています。
多少ハイスピードでコーナーに入っても前後どちらかに負担がかかっているような感じはありません。
ただやはり車高の高さは少し感じますがステアリングのレシオが適切なので不安な挙動はありません。
唯一気になったのはこれも初期もの故の問題か、荒れた路面を通過するとダッシュボードの中から低級音が出ていました。
これはこのクラスのクルマでは許されません。
総評★★★
ボイジャーやチェロキーを知る者としてはクライスラーの足回りのコンフォート性能はこんなものではないと思っています。
もっとしなやかで深い感動を味わえるはずです。
クライスラーライドはGMともフォードとも違ったバランスがあると思っています。
それはある程度の緩さがあるのですが、状況が悪くなれば抑えもしっかり効いているというものでなかなか侮れないものです。
先代の300Cにはそれがありました。
新型は確かにレベルも高くなっていますが、細かなリファインや味の部分ではまだまだ未完成と感じました。
先代のスマッシュヒットに続けとばかりに398万円というこのクラスとしては随分戦略的な価格で登場した300Cですが、私はもう少し待った方がいいと思います。
きっと1年ぐらいで熟成されてずっとよくなってくる可能性があります。
でも一般メディアの評価は高いですね?もしかしたら広報チューン?試乗車のコンディションはさほど悪くないというかほぼ新車でしたのでアベレージだと思います。
まあ、いずれにしても398万なら同じエンジンのグランドチェロキーの方今はがお勧めです。
【スペック】全長×全幅×全高=5070×1905×1495mm/ホイールベース=3050mm/車重=1880kg/駆動方式=FR/3.6リッターV6DOHC24バルブ(286ps/6350rpm、34.7kgm/4650rpm)/燃費=9.2km/リッター(JC08モード)/価格=398万円
(※この記事は2013年3月に書いたものです。有料版の記事の一部を加筆訂正し約1年遅れで配信しています。)