アウディRS4アバント 試乗
レーシングユニットの息吹を感じる
M3やC63AMGは乗ったのにそう言えば「アウディのRS4だけ乗っていないなあー」なんて今更ですが思い出したので新型も出たことだしとさっそく乗りに行ってきました。
S4は、約1年半前にA4とともに国内デビューしていましたが、このRS4は約1年遅れで今年の4月にデビューしました。
スタイル★★★
ボディはワゴンのアバントのみです。ライバルがセダンやクーペを持ち派手な変更も与えられていることを思うと少し寂しいですね。
丸く元々あまりカッコいいとはいえないA4アバントがベースですから一見クルマを知らない人が見たらとても1200万のクルマには見えません。
まあそれでも迫力のあるグリルや2センチローダウンされた車高、それに大きく張り出したフェンダーなどに好き者が見れば唸らせるだけのものは持っています。
RSといえどもアウディのブランドイメージを踏まえあえて控えめで上品に仕上げてあるのでしょうか。
まあ実用的なボディ形状も含め気兼ねなく使えるのは長所でもありますね。
内装★★★★
こちらもオプションを選べば別ですが、かなり控えめです。
シート表皮は「ファインナッパ」と呼ばれる高級レザーで非常に触り心地が滑らかです。
ステアリングも小ぶりで下がフラットなタイプとなっており赤のRSバッジもかなりスポーティーな印象です。
ちなみにハンドル位置は、左右いずれも選択可能となっています。
ダッシュもカーボンのパネルなどで特別感が演出されています。
サイズからしてタイトなこともあって濃密感が半端無いです。
この濃密感と高級感はアウディの中でもハイグレードモデルだけの特権ですね。
エンジン・ミッション★★★★★
Sの3リッターV6スーパーチャージャー333psに対し、このRS4の縦置き4.2リッターV8は、先代モデルよりも30ps増しの450psを発生します。
Sでも十分に速かったですが、こちらはレーシングユニットそのものの切れ味が特徴です。
鍛造のピストンやクランクシャフトやコンロッドを組み込んだV8エンジンは8250回転で最高出力を発するという超高回転ユニットです。
しかし43.8kgmの最大トルクは先代同様ですが発生ポイント4000rpmへと下げられています。
つまり低速でも速く扱いやすくなっています。
セルを回すと迫力あるサウンドで立ち上がり只者でないことを知らせます。
S4と違ってアイドリングストップ機構は付いていません。
綺麗に乾いた音を残しながらスタートするとその圧倒的なパワーからボディは羽のように軽く感じられます。
そしてさらに踏み込みと途中低音を増し最後には澄んだ咆哮を聞かせてくれます。
このあたりの音は低音で迫力一辺倒のAMGよりもアコーステックで好みですね。
Sトロのつながりも実にスムーズですしダウンシフトの切れ味も抜群です。
またドライブセレクトで「ダイナミック」を選ぶと、デュアルエキゾーストシステムのステンレス製テールパイプに内蔵されたフラップが開き、コクピットに届く排気音は一段と迫力を増します。
これは楽しいですね。
すっかりおもちゃを与えられた子供のような気分でドライブに夢中になれます。
ステアリングは重さを増し、Sトロの変速スピードも一段と速くなります。
もう全てのレスポンスがダイレクトで思うがままです。
NA特有のトルク曲線の穏やかさもあって変速の繋ぎもとてもスムーズです。
綺麗に速い走りが可能です。
ちなみに0-100km/h加速の所要時間は、4.7秒。ローンチコントロール機能も備わります。
足回り★★★★★
実は試乗当日は雨だったのですが、以前試乗したM6グランクーペと比べるとやはり安心してアクセルを踏めました。
短いストレートでもきっちりとレブまで引っ張りそのパフォーマンスを堪能できました。
もちろんクアトロの恩恵ですね。
通常時の前後トルク配分は前40:後ろ60です。
セルフロッキングセンターデフを備える最新のクワトロシステムは、前輪が滑るとリアに最大85%、後輪が滑るとフロントに最大70%の駆動力を送るスポーツディファレンシャルが付いているので今回のような天候でもトラクションの抜けが無くコーナーの脱出スピードは異様に速いです。
またその際に、後輪よりのトラクションが効いて僅かにオーバーステアの姿勢をとるのもスポーツドライブの楽しみを知る人には嬉しいでしょう。
ホイールはは本国だとオプションの20インチホイールが標準装備でタイヤは265/30ZR20のミシュラン・パイロットスポーツを履いていました。
また乗り心地も非常に快適です。確か以前にCGでカバタさんがこのRS4を評して「乗り心地がS4ほどよくない」と書かれていましたが、後に改良が進んだのか私はまったく快適でした。
この前に前回のオデッセイに乗ったのですが遥かにこちらの方が快適でした。
上下動が圧倒的に少ないのです。
あたりも上質でとにかくこれほどの乗り味はなかなかお目にかかれるものではありません。
軽快感ではM3に譲りますが乗り心地はC63AMG以上と感じました。
総評★★★★☆
NAのV8はおそらく今回のRS4とRS5で終わりではないでしょうか?「M3」や「C63AMG」ですが、今後これ以上のモデルはハイパフォーマンスモデルといえどダンサイジングターボ化されています。
既にM5やS8などのV10はV8ターボに変わっています。
C63AMGの時も言いましたが、大排気量のNAを楽しめるのは今のうちかもしれません。
M3やC63AMGに比べ、このRS4のアドバンテージは4駆であることの安心感とその実用性でしょうか。
かなり高価なクルマですがエンジンや足回りの芸術点の高さと実用性を思うと今後20年ぐらい第一線で楽しめると思います。
意外とお買い得かもしれません。
【スペック】ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4720×1850×1435mm/ホイールベース:2810mm/車重:1880kg/駆動方式:4WD/エンジン:4.2リッターV8 DOHC 32バルブ/トランスミッション:7段AT/最高出力:450ps(331kW)/8250rpm/最大トルク:43.8kgm(430Nm)/4000-6000rpm/タイヤ:(前)265/30ZR20/(後)265/30ZR20(ミシュラン・パイロットスポーツ)/燃費:8.0km/リッター(JC08モード)/価格:1195万円