この快感は世界中のいくつかの宗教団体で禁止レベルです
さてさて先週告知した通り久々のフェラーリです。Vol.100号記念のF12ベルリネッタ以来ですから1年3か月ぶりのフェラーリですね。
そして、今回はフェラーリの今やメインともいえる458のスパイダーです。
少し遅れて出たこともあってかこのスパイダーの方がよく売れているそうです。
しかも、試乗車の色は白で内装は赤!そうあのネット長者だった与沢翼氏の元愛車であり、その話題をもとにした闇金ウシジマくんにも登場するカラーですね。
まあ、もちろん当のフェラーリの方はそんなことは全く気にしていないし関係もありません。
ロールスなど世の高級車は古今東西さまざまな有名人、またはノーブレスオブリージュ(好ましからざる人々)に愛用されてきました。つまりこのクラスは人々の憧れや富の象徴でもあるわけです。
しかーし!このクルマはやはりクルマ好きにこそ乗って欲しい!です。
つまりその走りには価格以上の価値が十分にあると感じました。
試乗当日はあいにくの雨でした。それでも最高に楽しかったのです!
スタイル★★★★★
458のスタイルは通常のクーペ版のイタリアで完成されたものです。
458は従来のようにサイドのエアインテーク(308-430まで採用)やリアウイングなどの付加物を持つことなく、完全なエアロダイナミクス(ダウンフォースは最高速度時で360kgにもなる)を得ています。
さらにプレーンにさえ感じられる引き締まったボディは、実にモダンで上品な印象も与えていると思います。
スパイダーはさらにちょっとノスタルジックな印象も加味します。
それは主に垂直に切られたリアピラーの衣装やノーマルと違ってカバーされたリアスタイルによります。
このリアのコンビネーションランプはちょっとエンツォにも似ていますね。
しかし、金属製のルーフはモダンです。
わずか14秒で開閉可能で従来のソフトトップよりも25kg軽く仕上がっているといいます。
これはスポーツカーのオープンはその重量からソフトトップ以外に考えられないとしたポルシェへの痛烈なアンチテーゼでしょう。
内装★★★★★
内装も458から文句が無くなりました。
つまりF430に欠けていた高級感や手仕上げ感が演出されています。
それはステッチや高級なレザーを張られたインパネの有機的なディテールなどです。
試乗車にはオプションのカーボンステアリング(68万円)が装備され、その上部にはF-1のように赤いLEDのレブカウンターが走ります。
さらにステアリングは、始動ボタンや走行モードの選択スイッチ「マネッティーノ・スイッチ」をはじめ、少々慣れの必要なウインカーやワイパーなども備わります。
演出の要素もありますが、F-1同様にグルグル回すことを想定していないステアリング内で手を放すことなく多くの操作をさせようとデザインしています。
センターコンソールの奥に見える3つのボタンは、左から「ローンチコントロール」「リバース」そして「オート」というモード切替えなどのスイッチが備わります。
視覚的に大きくしかも専用のスイッチが用意されるのはもちろん走りの機能に関するものだけです。
特徴的なデザインのエアコン噴き出し口も、過去のF1マシンの排気口を意識したものです。
シートのフィッティングも完璧でタイトなのに快適という不思議なシートです。
レザーの香りは少し甘めのイタリア車伝統のタイプです。この目をつぶってもフェラーリと分かるポジションと高級感は458にも受け継がれています。
エンジン・ミッション★★★★☆
エンジンはF430に比べ71psアップの570ps/9000rpmと55.1kgm/6000rpm。
しかしフ
ェラーリは同時に燃費も15%改善されたことを声高にアナウンスします。
まあこれも時代でしょう。
9000rpmという驚異的なレブも低速の燃費さえ意識しなければもっと高くしたかったとか!
ミッションもいまやMTは無く、ゲトラグ社との共同開発による7速の「F1システム」デュアルクラッチトランスミッションのみです。
パフォーマンスは0-97km/hは3秒台、トップスピードは320km/hオーバー、0-400mは12秒を切りますからもちろん第一級のものです。
しかしフェラーリが高価なのはこのスペックではなくそのフィールが美しく官能的だからです。スパイダー用にチューニングされたというサウンドはクーペのイタリアに比べ僅かにレーシーに感じます。
低速で流している時は「フォンフォン」と軽やかに吹けるエグゾーストも高回転で負荷を掛けると排気音よりもレーシーなメカニカルノイズが勝るようになります。
試乗時は雨が降っていたのでメタルトップを閉めていましたが、嬉しいことに垂直のリアウインドウは開閉式になっていて雨でもフェラーリサウンドを存分に楽しめる工夫がしてあります。
ここから漏れくるサウンドは高回転ではF12よりも僅かに荒々しく(4気筒分?)しかしアクセルを緩めたくなるほどの雑味は無くむしろその先を確かめたくなる魅力に満ちたものです。
加速感はNAならではのリニアなもので圧倒的であるのにさほどの恐怖感はありません。
それは過給ユニットのようにアクセル開度に反した加速が残ることが無いからです。
正に瞬時に意のままのスピードを手に入れる事が出来ます。
F-1で鍛えられたミッションも完璧な仕事をします。スムーズで全くショックやラグがありません。
これほどのミッションはやはり並ではありません。
これまで多くのツインクラッチを試乗しましたがやはりこれほどのレベルは他に経験がありません。
ふんだんにコストをかけてこその領域です。
エンジンは低回転から濃密なトルクと表情があります。
当日は雨だったのでフルスロットルは控えましたが、8500回転までは回しました。
どの回転にもまた開度によっても音が変わるのはフェラーリユニットが楽器と称される所以です。
なので、刻々と変わる道路状況に応じる何気ないドライブも楽しいです。
優れたシンガーや楽器が広い音域をカバーするように、この高性能なV8ユニットは9000回転という広いレンジを持ちます。
その過程にあるのは全てに最高にエキサイティングなサウンドです。
足回り★★★★★
今回の最大の驚きがこの部分です。
トップを閉めて走ったこともありますが、F430比15%アップというボディ剛性はスパイダーでも圧倒的で乗り心地は素晴らしく快適です。
ガヤルドとの差はこの部分でしょう。
モードをどの部分にしていても直接的なショックは一切なく、下手な乗用車よりも快適です。
バランスがいいのか1年前に乗ったF12ベルリネッタよりもフラットで快適だと感じました。
とにかくこれまで乗ったスーパースポーツでこれほどソフト?で快適な乗り心地は経験したことがありません。
さらに驚きはハンドリングも同時に素晴らしいことです。
流している時はソフトに感じる足も加減速ではフラットでコーナーでも驚くほどの安定性をみせます。
ミッドシップなので多少の事をしても怖くないのは分かりますが、その領域がずば抜けて高く、かなり攻めたつもりでも全くリラックスしていられます。
しかも試乗時は雨が降っていました。
もちろん4駆ではないのでアクセル開度には注意を払いましたが、早いレシオを持つステアリング操作に関しては何の注意も必要ないほどでした。
タイヤは20インチで前:235/35、後ろ:295/35サイズです。ブレーキはブレンボ製のカーボンセラミックブレーキが標準です。
このブレーキがまた素晴らしい。
タッチも特にセラミックを意識することはありません。
ソリッドで素晴らしいタッチだと思って調べたら458ではドライバーがスロットルを戻すとブレーキに予圧がかけられる機能が備わっているのですね。
レスポンスがいいわけです。
しかもその時の姿勢が驚くほどフラットです。
458のシャーシの不思議は一見ソフトな足が実は何をしてもどの方向にも傾かない事でしょう。
このことが他のクルマとの完全な差別化です。
どんなに高級なセダンにも無し得ない、最高の走りを実現します。このことが458の最大の価値だと思います。
総評★★★★★
フェラーリはよりソフトなドライビングを指向する顧客をターゲットにしたラインであるカリフォルニアを持つことによってこの従来のミドルレンジをより本格派に振ることを許されました。
つまり458の走りはラ・フェラーリなどの特殊な例を除いて、今やフェラーリ随一のスポーツ性を持つといってもいいと思います。
458に比べるとF12はノスタルジックで高級なラインです。
ガヤルドやアストンの反逆性も魅力ですが、やはりこの458はミッドシップスポーツのそしてフェラーリのスタンダード的な魅力があります。
フェラーリの走りのど真ん中です。
この後に911に乗るとやはりRR(リアエンジン・リアドライブ)を意識します。
これ以上安心して飛ばせるクルマはクアトロを持つアウディのR8ぐらいでしょうか?でもR8に458ほどのセクシーさはありません。
となるとやはり未だにこの458を超えるミドルスポーツはなかなか無いというのが現実です。ましてやこのスパイダーともなると本当に魅力的です。リセールも考えるとそれほど悪い投資ではないかと思ってしまいます。
【スペック】全長×全幅×全高=4527×1937×1211mm/ホイールベース=2650mm/車重=1430kg(乾燥重量)/駆動方式=MR/4.5リッターV型8気筒DOHC32バルブ(570ps/9000rpm、55.1kgm/6000rpm)/価格=3060万円