初代は1979年、G・ジウジアーロのシンプルで機能的なデザインによって愛すべき国民車の地位を築きました。
2代目のパンダもデビュー年(2003
年)の欧州カー・オブ・ザ・イヤーを獲得しました。
結論から言って今回も出来はいいですね。そして楽しい!
スタイル★★★★☆
パンダの伝統に沿って直線基調なのですが、角が丸められています。
今回のモチーフはシルエットからグリル・ステアリングといったディテールまで、“丸みを帯びた四角”、フィアットではこれを「スクワークル」(「スクエア」+「サークル」の造語で、丸みを帯びた四角という意味)で表現しています。
これによってちょっとボリュームがあって大きく見えますね。
でも実際にはそれほど大きくなっていません。全長×全幅×全高=3655×1645×1550mm/ホイールベース:2300mmというサイズは旧型の全長×全幅×全高=3580×1605×1520mm/ホイールベース=2300mmと比べそれほど大きくなったというわけではありません。
でもこのボリュームは安心感があっていいと思います。視点が高い事もあって小型車につき物の不安感はありません。
またパンダといえばリアクオーターウィンドウが特徴ですが、今回も小さな窓はしっかりと残されています。
スクエアなシルエットながら、Cd値も0.32とまあまあ優秀な数値を持っています。
とにかく小型車に不可欠な可愛らしさをしっかりと持っている上に、500と違って男性が乗ってもさほど気になりません。
カラーも魅力的な色が揃っています。
内装★★★★★
ココも文句なしに楽しいですね。
外観同様に「スクワークル」コンセプトで統一され、ステアリングまでも一見四角く見えるという凝った作りです。
シートのカラーもいいですね。
ダークグレー×サンドベージュのツートンカラーですが、背もたれにはお洒落なドット模様が付けられていたり、インパネやドアトリムには小さく「PANDA」のロゴが隠しキャラのようにちりばめられていたり、とにかく遊び心が感じられます。
そしてそれがことごとくセンスがいいので子供っぽくも安っぽくもなっていないのが流石です。
前席は広くなりましたね。30mm高くなった車高も利いているのが、見晴らしも良くとてもこのサイズの小型車に乗っている感じではありません。
リアもどうにか座れます。広くはありませんがヘッドクリアランスも含めどこも当たらないのは流石に実用車です。
エンジン・ミッション★★★★
ツインエアはいつ乗っても楽しく、そしてパワフルです。
もう趣味的な小型車にはこれ以上無いといっていいほど魅力的なユニットですね。
最高出力85ps/5500rpm、最大トルク14.8kgm/1900rpm(エコモード時は77ps、10.2kgm)というパワーですが額面以上にパワフルに感じます。
車両重量が1070kgと軽いのもいいですね。
ミッションはシングルクラッチの5段ロボタイズドMT、つまりデュアロジックですからシフトアップ時(特に1-2)のタイムラグの収束にはコツが必要ですが、それもこのエンジンとの組み合わせなら楽しみに変わるほどです。
エンジンは2気筒としては驚くほど静かでスムーズです。
そう感じます。
つまりメリハリがあるのです。
トコトコと(楽しい)振動を感じる領域があるかと思えば、アイドリングやパーシャルでは意外にスムーズだったり、またパワーも回せばバリバリと非常に元気が良かったりでそのギャップが楽しく、そして操っている感覚が得られます。
もちろんアイドルストップも付きますし、燃費もいいです。マネージメントも高度でその実、スペックはかなりのハイテクです。
例えば排気バルブは通常通りカムシャフトで開閉しますが、吸気バルブはカムシャフトではなく、油圧で開閉をコントロールする「マルチエア」というシステムです(その油圧は排気バルブ用カムシャフトの別のカム山によって発生させる)。
アルファのMiToなどにも使われている最先端の制御です。
最近のこのクラスの小型車はロスを減らす為にマーチやミラージュ、プジョーなど4気筒から3気筒へシフトしていますが、他社は2気筒の振動を恐れているようですね。
フィアットのように振動を楽しさと捕らえて魅力的な商品へ昇華する手腕はやはり大したものだと思います。
足回り★★★★
ココもいいですね!かっちりとした500よりもふんわりと柔らかくリズムがゆったりとしています。当たりはやさしく乗り心地はとてもいいです。
確かに揺れと言う意味では細かなピッチングなども取れていませんが、それも楽しく感じます。
型式はフロントがストラット、リアがトーションビーム式とオーソドックスですが、1550mmという車高の割には重心が低く感じられて安心できます。
ステアリングの手応えも自然なものなので飛ばしても安心感があります。
限界が高くないので多少流れてもすぐに収束します。またその時のグリップの戻りもスムーズなので、よほど変なアングルが付いていない限り“とっちらかる”事もありません。
つまり良きイタリア車の伝統通りのハンドリングと乗り心地です。
総評★★★★☆
それにしてもこのスタイルと乗り味はイタリア車ならではの楽しさです。
フランス車はもう少し重いと言うか深いと言うか考えさせられるところもありますが、パンダの乗り味は軽快でもっとあっけらかんとしています。
こんな楽しい国民車が日本から消えて久しいですね!昔は初代シビックやスバル360などデザインもユニークで機能的にも革新的な大衆車が日本にもあったものですが。
こういうクルマを見ると本当に羨ましくなります。
逆に日本の自動車文化は衰退しているのではないかと感じます。
どんどんシロモノ家電に近づく日本車と個性を色々な形で楽しみ競い合う輸入車ではもう趣味的な部分では勝負になりません。
日本車が勝てるのは燃費や静粛性など数字で表せる部分だけで、その他デザインや手に触れる部分の感触や乗り心地などほとんど部分で負けているのではないでしょうか?
こうしたパンダの価値に意外と早く気付くのはもしかしたら女性やユニセックス化した若者かもしれません。
208万という価格は国産車とも勝負できます。
今度こそスマッシュヒットの予感がするのですがいかがでしょうか?
【スペック】ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3655×1645×1550mm/ホイールベース:2300mm/車重:1070kg/駆動方式:FF/エンジン:0.9リッター直2 SOHC 8バルブターボ/トランスミッション:5段AT/最高出力:85ps(63kW)/5500rpm/最大トルク:14.8kgm(145Nm)/1900rpm/タイヤ:(前)185/55R15/(後)185/55R15(グッドイヤー・エフィシエントグリップ)/燃費:18.4km/リッター(JC08モード)/価格:208万円
(※この記事は2013年7月に書いたものです。有料版の記事の一部を加筆訂正し約1年遅れで配信しています。)