震災後、初のアップです。
暗いムードを吹き飛ばすような元気いっぱいなクルマに出会えたからです。
オヤジはこの1週間で国産・輸入車20台に乗りましたが、その中で1番印象に残ったのがこのクルマです。
●概要
2008年7月本国デビュー、2009年5月日本に6MTのみで入りました。
2010年には待望のAlfa TCT(Twin Clutch Technology)と呼ばれる乾式デュアルクラッチ内蔵ATと吸気バルブを電子制御する新型マルチエア・エンジンを搭載しています。
価格はベーシックな「スプリント」が278万、今回試乗した「コンペティツィオーネ」が298万と300万を切る価格で登場しました。
さらに170ps&6MTと唯一電子制御ダンパー付きのダイナミックサスペンションを持つ「クアドリフォリオヴェルテ」328万が追加されました。
ボディサイズは全長4070mm×全幅1720mm×全高1475mm×ホイールベース2510mm。
プラットフォームを共有するグランデプントと近いです。
スタイル★★★★★
丸く可愛いヘッドライトは旧型マーチみたいなんて言うと、熱烈なアルフィスタからヘビを投げつけられるのでちゃんと書きましょう。
そう、8Cコンペティツィオーネがモチーフですね。
Cピラーやウィンドウグラフィック、リアの丸いテールまで8Cのオマージュです。
それでも単なるレトロに終わっていないのは流石です。
レトロモダンの按配が絶妙なのです。
そしてどうでしょうこの凝縮感!
筋肉質のアスリートと言うよりは、むっちり魅力的な若い女性と言うか、出るとこ出ててヒップはきゅっと締まっている。
LEDでキラキラのテールランプも華やかさを添えます。
内装★★★★★
ダッシュとドアの内張りはカーボン調です。
ステアリングとシフトノブは本皮、このあたりは小さな高級車ですね。
とにかく赤いキーやらアルミのペダルやらメーターのレタリングやら凝りに凝っています。
シートはサイズもたっぷりで賭け心地、ホールドとも文句ありません。
試乗車はファブリックでしたがシートヒーターが標準で付くのもありがたいです。
そして20万円高の革シートですがこれがタンやら赤やら魅力的なカラーが選べます。
白のボディーならタン、グレーなら赤など大人っぽいコーディネートが出来るのもイタリア車の楽しみでしょう。
そして意外な喜びはこの内装の質が大いに高く、どんなに荒れた路面でもミシリとも言わないことです。
とにかくこのインテリアを見ると、同クラスの国産はなんなんだと思います。
ポロやゴルフでさえ市役所の事務所に見えてしまいます。
エンジン★★★★
1.4リッター直4SOHC16バルブターボ(135ps/5000rpm、19.4kgm/4500rpm)です。
マルチエアですが、スロットルバルブを廃し、吸気バルブの開閉を細かく油圧でコントロールすることでロスを低減、ハイパワーを狙うものです。
SOHCと書きましたが、カムは排気用という意味です。排気を直打します。
吸気側は油圧でカム以上に細かくコントロールしますから、実質はツインカム以上の実力があります。
その吸気側の制御ですが、これが素晴らしく、なんと低速では1吸気あたり2回も開け閉め(完全ではないですが)するというドイツ車もびっくりの超絶制御です。
結果、直噴と合わせ素晴らしくつきのいいハイトルク型のエンジンとなっています。
およそ1.4リッターのエンジンとは思えないほどのパワーでグイグイとスピードを乗せてゆきます。
特にセレクターの横にあるDNAシステムと呼ばれるスイッチをD(ダイナミック)にすると、ステアリングはグッと重みを増し、戦闘体制に入ると同時にアクセルのツキが良くなります。
さらに2割り増しぐらいの力強さで猛然と加速を始めます。
そしてこのエンジンにも増して素晴らしいのが、TCTと呼ばれる6速デュアルクラッチ・ミッションです。
スタートから素晴らしくスムーズに一切のラグ無くシフトアップしてゆくかと思うと、パドルを使ってダウンシフトを試みると完璧なフリッピングと共にこれまた一切のショックなく、しかも瞬時にシフトダウンを完了します。
F-1ドライバーもかくやというこの名人芸を前に、マニュアル信者のオヤジも降参です。
完璧にDSGと同等以上の性能です。
もちろんマニュアルベースですからまったくロスがありません。
このミッションのおかげてエンジンのレスポンスも非常にダイレクトに感じられるわけです。
とにかくいかなる場合もダイレクトそのもの、これを知るとズルズルの国産CVTなんてゴムの緩んだパンツみたいで乗っていられません!
★が一つ少ないのはアルファにしてはもう一つエンジンが唄わなかったからです。
踏めば直噴らしく「ギューン」と豪快なサウンドはあるのですが、痛快ではありません。
中速のホルンのような溜め、高回転の抜け、いずれもアルファとしては期待値に届きません。
アイドリングストップも気にならないレベルに頑張ってはいますが、やはり国産のiSTOPなどと比べるとクランキングはやや長めです。
足回り★★★★
このサイズにして素晴らしい安定感はその高いボディ剛性とヒステリシスの小さい引き締まったサスペンションに拠ります。
内装のところでも言いましたが、どんなに大きな入力を与えてもきしみ音が一切無いのも乗り心地の印象を良くしています。
実に高品質な感じがします。
ステアリングは電動で重さを少し人工的に変えたり、ストレートでの制御が感じられたりと、ナチュラル派には少し気になりますが、その制御が安心感に寄与しているともいえます。
サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがC型断面構造のトーションビームです。
ダンパーはリバウンドスプリング内蔵型、ブレーキはフロントにブレンボの対向4ポッドが付きます。
とにかく小型車らしくキビキビと曲がりブレーキも良く効きます。
しかも安定性も良くサイズを超えた重量感すらあります。
VDCの力を借りずともリアのブレークの心配もありません。
★が一つ足りないのは2名乗車ではリアサスが僅かに硬く、少々細かい縦揺れが多いこと。
これはタイヤが細くなるスプリントか、逆にダイナミックダンパーの付くクアドリフォリオヴェルテならましな筈です。
総合評価★★★★☆
ミトはほぼ完璧な高級小型スポーティーカーです。
辛口が売りの試乗オヤジが随分甘いなあと思われるかもしれませんが、お許し下さい。冒頭で言ったようになんと言ってもここ20台のベストです。
日本車にはこのジャンルは存在しません。
スイフト・スポーツなど、走りでは惜しいですが、所有する喜びや色気ではやはり足元にも及ばないでしょう。
また確かに値段が違いますが、国産がコストをかけたとしてもこのセンスのクルマは作れないでしょう。
そういう意味ではこのクルマはもはや伝統芸能です。
心なしか顔がお面のように見えてきました。
このクルマにはアルファの楽しさが凝縮されています。
そして最新のテクノロジーと信頼性までも。
それが300万以下で手に入るのです。
震災で沈んだ気分もこのクルマに乗れば元気になります。
アルファを買うというのは人生を変えるパワーがあります。
このデザインと楽しさは、ほおっておけません。
このクルマと暮らすということは、美しい女性と付き合うようなものです。
そうした意味でもこのクルマは、小さな宝石です。